痛み
いたみ
pain
感覚としての痛覚と感情としての苦痛の二様の意味で用いられる。感覚としての痛覚は皮膚の痛点や筋肉,関節,内臓など身体各部に分布する痛覚受容器に対する刺激によって生じる。痛覚受容器は特殊な細胞ではなく,神経の自由終末である。痛みを引起す刺激は特定のものではなく,強い刺激なら種類を問わず痛みを感じる。これを侵害刺激という。そのほかヒスタミンやセロトニンのような発痛物質が刺激になる。痛みは生理学的に体性痛と内臓痛に分けられるが,内臓の痛覚線維は血管や漿膜に多く分布し,器官自体には少いので,器官を切っても痛みを感じず,その器官の異常で発痛物質を生じたとき感じることが多い。体性の痛覚はちくちくする刺す痛みと持続的な鈍い痛みに区別される。前者はAδ線維により,後者はそれより細いC線維によって脳に伝えられる。モルヒネは脳幹で鈍い痛みの経路に作用して,これを抑制する。かゆみも痛覚の一変型と考えられる。
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いた‐み【痛み】
(形容詞「いたし」の
語幹に接尾語「み」の付いたもの) 上に助詞「を」を伴って「…を痛み」の形で用いられることが多い。
① 痛いので。苦しくて。
※
万葉(8C後)一四・三五四二「さざれ石に駒を馳させて心伊多美
(イタミ)吾が思ふ妹が家のあたりかも」
② 激しいので。ひどくて。
※万葉(8C後)一八・四〇九三「英遠(あを)の浦に寄する白波いや増しに立ちしき寄せ来東風(あゆ)を伊多美(イタミ)かも」
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デジタル大辞泉
「痛み」の意味・読み・例文・類語
いたみ【痛み/傷み】
1 病気や傷などによる肉体的な苦しみ。「腰に―が走る」「傷の―」
2 精神的な苦しみ。悩み。悲しみ。「胸の―をいやす」
3 (傷み)器物などの損傷。破損。「家の―がひどい」
4 (傷み)食物、特に果実などの腐敗。「―が早い果物」
[類語]痛痒・激痛・疼痛・鈍痛
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いたみ【痛み pain】
体に危害が加わったときに生ずる不快な感覚。神経系に異常があって,危害が加わらないのに起こることもある。痛覚pain sensationともいう。
[痛みの意義]
痛みは通常,外からの危害を避けるための無意識的な反射活動を伴う。やけどを負う前に痛みを感じて,熱いストーブから手を引っ込めるのはそのためである。また痛みを避けたいという基本的要求によって,同様な危害からの回避を学ぶこともできる。虫垂炎などでは,それによる痛みが警告信号となるばかりでなく,診断の重要な手掛りを提供してくれる。
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世界大百科事典内の痛みの言及
【痒み】より
…瘙痒感(そうようかん)ともいう。
[かゆみと痛みの関係]
かゆみのあるとき,刺激がどこに加わったのかはっきりしないことが多い。また刺激が去った後にも,かゆみは長く残る。…
【凝り】より
…肩がこる,筋肉がこる,などという場合の〈こる〉という言葉は,筋肉が異常に緊張したり,または痙縮を起こしたときに感じる自覚症状を意味する。筋肉の緊張が亢進すると,ついには痛みを感じるようになる。こりと痛みとは表裏一体の現象で,つまり,こりとは有痛性痙縮ということができる。…
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