四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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かぐや様三期発表はよ


女の子達は話したい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お泊まり会。

 それは仲の良い友人達が集って一つの家で寝泊まりする会合。それが行われるハードルはかなり高く、同性だとしてもかなり親密でなければ行われない。それが異性となれば、まず不可能とすらいえるだろう。

 

 しかし、そんな異性の友人達とのお泊まり会が今、四宮別邸で行われようとしていた。

 

「…」

 

 すでに夕食は済ませた。高級食材をふんだんに使った高級料理に圭の目が輝いていたのが思い出される。

 今、女子組はかぐやと一緒にお風呂に入っている。早坂も三人とは別の、使用人用のバスルームでではあるが、入浴している筈だ。

 

 そして、総司もまた女子達が入浴しに行くのと同じタイミングで入浴し、女子達より先にあがって部屋に戻ってきていた。総司は長風呂しないタイプである。

 

「…遅い」

 

 女子の入浴は長いという話は総司も聞いた事はあった。しかしそれにしても長過ぎやしないだろうか。すでに女子達が入浴しに行ってから一時間が経過している。

 総司は知らないのだ。女子の入浴時間が長いのは勿論なのだが、上がってからも長いのが女子だという事を。

 

 そうして、女子達が戻ってたのは更に三十分経ってからだった。かぐや達とは別の場所で入浴していた筈の早坂も一緒に戻ってくる。

 

 女子達は一様に頬を僅かに紅潮させ、風呂上がりの匂いが総司の鼻をくすぐる。

 

「かぐやはどうした?」

 

 煩悩を振り払って千花に問いを投げる。

 千花、圭と一緒にいた筈のかぐやは今ここにいない。まあ、ここにいないのならば自分の部屋にいるのだろうが、一応聞いてみる。

 

「かぐやさんは自分の部屋に行っちゃいました。一緒に勉強しませんかって誘ったんですけど…」

 

「…まあ、最近集中して勉強できてなかったみたいだからな。一人で集中したいんだろ」

 

 しょんぼりと落ち込んだ様子の千花。圭もガッカリした様子でいる。かぐやと一緒に勉強したかったのだろう。

 総司の思った通りかぐやは自室に戻ったようだ。最近、正確にはスマホを買った頃からあまり集中して勉強が出来ていなかったようだし、一人になりたかったのだろう。

 

 正直、この空間に男一人というのはかなりキツいものがある。かぐやが居てくれたら相当心強かったのだが、早坂も総司にとって心強い存在としていてくれるので良しとする。

 

「え、何で睨んだの」

 

「いえ。何かまた失礼な事を考えていた様な気がして」

 

 何故か早坂に睨まれた。何故だ。

 

 雑談もそこそこに、勉強を再開する。別段特別な事件があった訳でもなく、夕方まで行った勉強会と同じ光景が繰り返されるだけ。

 千花が解らないままだった数学の問題も、時間を掛けて説明した事で解決。圭も本番で凡ミスさえしなければ学年一位ほぼ間違いなしといえるだろう。

 早坂は…まあ、早坂は少し特殊なため置いておく。

 

「悪いな。こっちの都合で終わらせる事になって」

 

「いえいえ。気にしないでください」

 

「そうですよ総司さん。お仕事頑張ってください」

 

 勉強を始めてから一時間と少し、時刻は十時になろうとしていた。

 ここで今日の勉強会はお開きとなる。理由は先程の会話で解る通り、総司の今日の分の仕事があるからである。

 

 荷物を片付けて部屋を出ようとする三人、特に詳しい事情は知らない千花と圭に謝罪する総司。早坂には二人を頼むとアイコンタクト。早坂が頷いたのを見て安心する総司。

 

「それじゃあ総司君、おやすみなさい」

 

「おやすみなさい、総司さん」

 

「あぁ、おやすみ」

 

 千花と圭の二人が総司と挨拶を交わしてから部屋を出る。

 

「おやすみなさいませ、総司様」

 

「ん。おやすみ」

 

 そして最後に早坂が退室し、部屋に残されたのは総司一人となる。

 つい先程まで賑やかだった部屋が一瞬で静まり返る。

 そんな寂寥感に浸る間もなく総司はデスクの前の椅子に腰掛け、PCを立ち上げる。

 

「さて、急がないと徹夜だぞ」

 

 デスクトップ画面が表示されるとすぐにメールを確認。そこに添付されたデータと指示を基に総司は作業を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋ばなしましょう!」

 

 総司が仕事を始めたその一方、総司の部屋から客室ではなくかぐやの部屋へと移動した女子組は、勉強の続きを始める訳でもなく、ベッドに輪になって座り女子トークを始めていた。

 

「こ、恋ばなって…何で?」

 

「色々と知りたいんですよ。例えば圭ちゃんが総司君を好きになった切っ掛けとか」

 

「千花姉!?」

 

 掌を口許に当て、ニヤニヤとした笑みを圭に向けながら言う千花。

 

「確かに、私も知りたいですね」

 

「かぐやさんまで!?」

 

「ふふっ。でも、私は圭だけじゃなく…」

 

 千花に続いてかぐやが便乗した事に追い詰められる圭、かと思えばかぐやのターゲットは圭だけではない事が判明する。

 

「藤原さん?早坂?貴女達の話も聞かせてもらいますよ?」

 

「え!?わ、私はそんな、別に面白い話じゃないですし…」

 

「右に同じです。私の話なんてつまらないですよ」

 

「そんなの聞いてみない事には解らないじゃない」

 

 柄にもなくかぐやはワクワクしていた。何しろ自分の人生の片割れといえる総司を好く三人から、その理由の話を聞けるのだから。

 一応言っておくが、別にこれから聞く話をネタに総司をいじるとかそういう意図は一切ない。かぐやは純粋に、妹として、兄の事が好きなその理由を聞きたいだけだ。

 

「で、でも…」

 

「…まあ、貴女方の気持ちは解ります。恋に落ちた切っ掛けなんて、恥ずかしくて話せませんよね」

 

「?気持ちは解るって…。かぐやさん、もしかして好きな人いるんですか!?」

 

「ふへぇっ!?」

 

 かぐやの口から変な声が漏れた。目を真ん丸くして、頬を紅潮させるかぐやの姿は千花の推察が正しい事を証明していた。

 

 その姿を見た千花と圭は目を輝かせ、早坂は二人からは見えない所でため息を吐く。

 

「そうなんですか、かぐやさん!?誰!?誰なんですか!?」

 

「い、いないわよ!好きな人なんて!」

 

「でも私達の気持ちが解るんですよね!?」

 

「そ、それは何となく察しがつくって事よ!それだけです!」

 

 必死に否定するかぐや。しかし千花と圭の勢いは止まらない。

 

「またまたそんな事言ってぇ~。ラブ探偵の血が騒ぎますよぉ~?」

 

「かぐやさんと関わりのある男の人…。やっぱり生徒会関連の人かな…?」

 

「わ、私の話は良いんです!それより私は、総司の妹として、貴女方の話を聞きたいんです!」

 

 圭の小声の推察を耳にしたかぐやは話題転換を図る。

 

「でも、気になりますよ~。かぐやさんの好きな人」

 

「だからいません」

 

「…まさか、兄さんなんて事は」

 

「──────」

 

「え」

 

「違います」

 

 危ない。危うくバレる所だった。脈絡なく白銀を持ち出されてつい硬直してしまった。その硬直は一瞬で、すぐに否定したから大丈夫だと思うが。

 

「それより、貴女方の話です。総司を好きになった理由は聞かないであげますが、せめて総司のどこを好きになったのかくらいは聞かせてほしいものです」

 

「…それってあまり変わってない気がしますよかぐや様」

 

「そう?」

 

 かぐやに自覚はないが、実のところ話す際の恥ずかしさとしてはあまり変わっていない。それでも惚れた理由、切っ掛けを話すよりは辛うじてマシとは言えるが。

 

「ほら、話してはくれないのかしら?」

 

「え、えっと…」

 

「ん、んー…」

 

「…総司の妹として、ちゃんと総司の事を見れてるのか知りたかったのですが。やっぱり、総司の外見に釣られただけなのかしら?」

 

「「そんな事はありません!」」

 

「それなら、話せますよね?」

 

「うーわー…、性格悪…」

 

 かぐやの台詞に聞き捨てならないと言わんばかりに声を揃えて言い返す二人の背後で、早坂が人の悪い笑みを浮かべるかぐやの顔をげんなりした様子で見る。

 

「…私は、その…、一目惚れでした」

 

 始めに口を開いたのは圭だった。体の前で両手を組み、落ち着かない様子でモジモジしながら言う。

 

「…圭、それはつまり」

 

「はい…。()()()さっきかぐやさんの言う通り、総司さんの外見とか、そういう所に釣られてたと思います」

 

 圭は先程のかぐやの台詞を部分的に肯定してから、でも、と続ける。

 

「総司さんと会って、話をして、関わってく内に総司さんの優しさに触れて…、そしたら、その…。もっと、好きになってました…」

 

「「「おぉ~…」」」

 

 顔を真っ赤にして俯いてしまった圭。そして、圭の話を聞いていた三人はパチパチと両手を叩いて拍手をする。

 

「~~~~~っ!はいっ、次千花姉!」

 

「えぇっ!?私ですかぁ!?わ、私は…」

 

 続いて話し出したのは千花。千花も先程の圭と負けず劣らず頬を染め、両手の指を弄りながら話を続ける。

 

「最初は、かぐやさんのお兄さんってどんな人だろうって気になって話し掛けただけだったんですが…。すごく優しくて、頼もしくて…、それで、とても努力家なんだって事も知って…、それに…」

 

「…それに?」

 

「それに…っ!だ、ダメです!これ以上は言いません!」

 

「なっ…、それはズルいよ千花姉!」

 

「嫌です!これ以上はぜっっっっったいに言いませんから!」

 

 初めはゆっくりと、総司の好きな所を話していた千花だったが、突如話すのを止めてしまう。

 

(どうやら、総司と何かあったようね。藤原さんの好意を決定付ける何かが)

 

 かぐやは圭と言い合う千花を見つめながら考える。

 千花の様子から、本気でこれ以上話す気がないのは解る。本来なら是が非でも聞き出したい所だが、先程も言った通りかぐやには好きな人について語る恥ずかしさが解る。

 

 かぐやに好きな人はいないが。断じていないが。

 

「ほら二人とも落ち着いて。藤原さん、私はこれ以上問い質すつもりはないから安心して」

 

「か、かぐやさん…」

 

 二人を諭すかぐや。かぐやの台詞に千花は感激の涙を浮かべ、圭は不満げに唇を尖らせ子供っぽい表情を浮かべる。

 

「さて。最後は早坂、貴女よ?」

 

「…勘弁してほしいのですが」

 

「ダ~メ」

 

 表向きには茶目っ気のある、しかしその裏に有無を言わせない圧力を醸した笑みを浮かべるかぐやに早坂は一つため息を吐く。

 

「…私も白銀さんと似たような感じですよ。総司様と関わる内に好きになっていった。ただ違うのは、一目惚れはしなかったです」

 

「でしょうね。貴女、最初は総司を毛嫌いしていたものね」

 

「ちょっ」

 

「え!?そうなんですか!?」

 

「それでどういう経緯で総司さんを好きになったんですか、早坂さん!?」

 

「い、いや、それは…」

 

 余計な事を口にしてくれたかぐやを睨む早坂。そんな視線を物ともせず素知らぬ顔をするかぐや。

 

「好きになった経緯は話さなくても良いので」

 

「私は話しましたが」

 

「それは自滅でしょう?」

 

「む」

 

「ああああああああ!気になります!ラブ探偵の血がぁ!!」

 

「…」

 

 楽しげに、かぐやの表情が緩む。今の彼女ら三人は、同じ男を好きになった恋敵ではなく、ただの友人に見える。恋ばなを楽しむ、普通の。

 

「それよりもです。二人とも、忘れてませんか?」

 

「え?」

 

「何がですか?」

 

「ここにはもう一人、女子がいるんですよ?」

 

「「…っ」」

 

 悪戯気に笑う早坂。そして、早坂の台詞を聞いて少し間を空けてから、同時にかぐやの方へと振り向いた千花と圭。

 

「…えっと、何かしら?」

 

「そうでした…。さっきは話を逸らされましたが、もう逃がしませんよ…?」

 

「かぐやさんの恋ばな、聞かせてもらいます…」

 

 ターゲットが移った。それを悟り、余計な事を口にしてくれた早坂を睨むかぐや。そんな視線を物ともせず素知らぬ顔をする早坂。

 

「ほら、かぐやさぁん」

 

「かぐやさんの好きな人って、誰なんですかぁ?」

 

「だ、だからっ、私に好きな人なんて…!い、いや!近付かないで!そ、総司!助けて総司ぃぃぃいいいいいいいい!!!」

 

 かぐやの叫びは届かない。彼女達の夜は、まだまだこれからである。




いつか藤原と早坂の、総司との過去を掘り下げていきたいですね
圭ちゃんも負けるなー

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