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2023.08.21
知財ニュース
生成AIにより大震災の様子を伝えるプロジェクト「関東大震災 100年前の100人の新証言」を日本赤十字社が開催
日本赤十字社は、関東大震災から100年の節目にあたり、当時の様子を描いた絵画や史実書から、生成AIを用いて新たな形で〈人々と“新”証言〉として現代に蘇らせるプロジェクト「関東大震災 100年前の100人の新証言」を各地で開催する。当時の救護活動を描いた絵画と文献データから、生成AIを用いて当時の様子をリアルに復元し、展示する。
8月25日より都内2会場にて順次展示(8月25日~29日:日本赤十字社東京都支部、8月31日~9月7日:ミカン下北内「砂箱」)を行うほか、同支部ホームページ上で8月25日より公開する。
本プロジェクトは、関東大震災からの教訓を現代と未来へと繋ぐために、生成AIを活用し新たな形で〈人々と“新”証言〉として現代に蘇らせるというもの。当時の日赤の救護活動の様子が描かれた絵画から、生成AIを用いて“リアルな体験談”として温度感を持った人物像(肖像)を生成する。また、当時の文献データからAIライティングシステムにより、生成AIによる“新”証言を導き出した。
※ 本企画は、「もし、絵の中に描かれた人物が語るとしたら」を起点としてAIを使用しています。使用した文献中の体験は当時実在した人物によるものですが、本企画ではAIを介した解釈が入った絵画中の人物が語ることから、「証言」ではなく「“新”証言」という言葉を用いています。また本企画で紹介するひとりひとりのストーリーは、各種文献に記載された内容をデータとして扱い、AIが再構築したフィクションです。
本プロジェクトでは、「20人の人物像」と「100の“新”証言」という2種類の生成を行っている。肖像の生成では、まず当時の油絵に描かれた人々の中から20人を抽出し画像を読み込ませ、肖像を生成するためのプロンプトを作成。そこからより「写真」に近づけるために条件づけを行った上で、最新AI描画テクノロジーにより、「語り部」としての人物ポートレート(肖像画)をフォトリアルに生成する。そこからさらに、肖像が身にまとう衣服などを当時のものにできる限り近づけるため、各種文献から得られる情報から生成AIを用いて調整を行い、20人分の肖像を完成させた。
“新”証言の生成には、ChatGPTをベースに構築した独自のライティングシステムを採用。関東大震災に関する史実書や証言文などの各種文献から60万文字以上の情報を読み込ませ、油絵に描かれた100人分の人物像をヒントに100の新証言を構築したという。データは体験談を中心に読み込ませることで、当時を生きた人のリアルなストーリー(物語)として訴求する内容となっている。
生成した人物像(肖像)、および生成AIにより導き出された新証言は、8月25日から同支部WEBサイトで公開するほか、都内2会場などで展示を行う。
■展示概要
【第1弾】
日時:8月26日(土)~29日(火)9:30〜17:00 ※最終日は12:00終了。
場所:日赤東京都支部 1階エントランス(新宿区大久保1-2-15)
※実際の絵画とともにご覧いただけます。
【第2弾】
日時:8月31日(木)~9月7日(木)10:00~19:00 ※初日のみ14:00開始。
場所:ミカン下北内「砂箱」(世田谷区北沢2-6-4 ミカン下北 E街区2F)
※第2弾の展示終了後は、本年12月末まで日本赤十字社東京都支部で再展示予定。
■日赤東京都支部WEBサイト https://www.jrc.or.jp/chapter/tokyo/(8月25日~コンテンツ公開)
油絵「関東大震災当時の宮城前本社東京支部救護所の模様」
生成AIによる“新”証言生成に用いられた油絵『関東大震災当時の宮城前本社東京支部救護所の模様』は、日本赤十字社が二世五姓田芳柳(にせいごせだほうりゅう)に依頼し制作されたものといわれる。大正15年(1926年)に米国・フィラデルフィア万国博覧会に出品された。
今から100年前となる大正12年(1923年)9月1日午前11時58分、関東地方でマグニチュード7.9の地震が発生。被害は東京、神奈川など7府県に及び、死者・行方不明者は約10万人を超える。日本赤十字社東京都支部は、発災後の夕刻には100坪を超える臨時救護所を皇居前広場(宮城前)に設け、ただちに傷病者の手当てを開始した。負傷者は救護テントに灯る光を頼りに押し寄せ、広場には30万人の避難者がひしめき合った。日本赤十字社は各支部の救護班を動員し、延べ206万人以上を救護している。
当時の資料には、現代の防災や減災につながるヒントが詰まっている。各所にバラバラと点在する様々な資料に残された当時の体験談をデータとして読み込ませ、後世に残していくことができる形へと再構築を図ったという。生成AIにより紐解かれるそれぞれの体験談から導き出される教訓を、現在の備えにつなげていくとのこと。
Top Image : © 日本赤十字社
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