四宮総司は変えたい   作:もう何も辛くない

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体育祭編終了
なお短い模様、この作品どころか今まで書いてきた話の中で一番文字数少ないですごめんなさいm(_ _)m


四宮総司は撫でたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論。赤組が勝ちました。まる

 

「まあ、割と得点離れてましたからね。最後のリレーでワンツーフィニッシュしないと逆転できなかったらしいですよ」

 

「はんっ」

 

 現在、総司は赤木が運転する帰りの車内にいる。体育祭は赤組の勝利で閉会し、窓からは楽しげに友人達と帰途につく生徒の姿が見える。

 

「総司様のチームが一位をとっても、もう一つのチームが最下位ですからね」

 

「…かぐやがいて最下位って、マジで他がだらしなすぎだ」

 

 車内で早坂と話すのは最後のプログラム、選抜リレーについて。その時点で赤組と白組は得点差がかなり離れており、白組が優勝するには選抜リレーをワンツーフィニッシュで締め括るしかなかった。

 しかし結果は先程の総司と早坂の会話の通り、総司のチームが一位をとったものの、もう一方の白チームが最下位となり勝負あり。

 中盤までは良い調子だったのだ。かぐやの奮闘もあり、中盤までは白組の一位二位で展開されていた。だが次第に赤組チームとの差が縮まっていき、そして終盤になる頃には一位二位は赤に奪い去られていた。

 アンカーの総司が他のチームをごぼう抜きし、一位を奪取したのは良かったが、もう一方のチームが結局前に出る事はなかった。

 

「…寝てますね」

 

「寝てるな」

 

 窓際にいる総司と早坂の間にはかぐやがいるのだが、そのかぐやは会話に参加せず、すやすやと寝息を立てている。やはり今年の体育祭は疲れたのだろう。その理由の一端である…というより理由の大部分である総司はほんのちょっぴり心を痛める。

 

 ほんの、ちょっぴり。

 

「…まあ負けたけど、楽しかったな。苛つく事もあったけど」

 

「…会計君、喜んでましたね」

 

「あぁ。打ち上げに誘われた時の石上の顔見たか?いやー、何か子供の成長を目の当たりにした親の気分だわ」

 

「一つしか歳は違わないはずですけど」

 

 体育祭という競技に負けはしたが、今までで一番楽しめた体育祭だったと今の総司は振り返る。先程言った通り腹が立つ出来事もあったが、それ以上に楽しい事が多かった。

 

 あのもがき苦しむ様から見事に成長した白銀のソーラン節に、千花が一位をとった障害物競走。そして、総司達以外のメンバーに溶け込む石上。

 

「ホント、楽しかったわ」

 

「…」

 

 この三人だけではない。競技に参加するかぐやと早坂の姿だって総司の思い出に刻まれている。圭が遊びに来た事だって。

 

「…」

 

「…早坂」

 

「はい」

 

「俺、何かおかしな事言ったか?」

 

「いえ、そんな事はありませんが」

 

「ならさ…。何でそんなに睨んでんの?」

 

 ただ体育祭を振り返ってただけなのに。早坂の視線が冷たくなった事に総司は気が付く。いや、本当にただ体育祭を振り返ってただけなのに。何故に?

 

「…私も、今年の体育祭は楽しかったです」

 

「そうか」

 

「しかし、体育祭を振り返るとですね、ちょっと腹が立った出来事も思い出しまして」

 

「…」

 

 早坂が腹を立てた出来事。全く心当たりがない…事はなかった。むしろ心当たりしかなかった。何しろそれと思われる出来事の渦中に総司もいたのだから。

 しかし何故あの時、早坂があそこまで機嫌を悪くしたのか、あの時早坂の他に総司の傍にいた千花や圭が険悪な雰囲気になったのか、総司には解らない。

 

「…早坂」

 

「はい」

 

「…いや、何でもない」

 

 早坂に謝ろうとしたが、何が悪いのか解ってもないのに謝っても早坂の気分を更に損ねるだけだろう。

 開いた口を閉じて窓の外に目を向ける。

 

「総司様は…」

 

 直後、早坂に呼ばれて振り向く。早坂は総司の顔を真っ直ぐ見ながら続ける。

 

「総司様は書記ちゃんか会長の妹さんが好きなんですか?」

 

「…は?」

 

 一瞬、早坂の言葉の意味を計りかねた。好き、とは、恋愛的な意味での事だろうか?

 

「別に好きじゃないけど」

 

「…そうなんですか?」

 

「いや好きじゃないっていうのは語弊があるな…。人間的には好きだぞ?でも早坂の言う好きっていうのはあれだろ?恋愛的な意味でだろ?」

 

 早坂はこくりと頷く。

 

「そういう意味では好きじゃない」

 

「…」

 

 いや、何でそこでちょっと表情が柔らかくなるのか。かと思えばどこか複雑そうな顔にも見えるし、早坂の胸中は一体どんな風になっているのやら。

 

「で?何でそんな事を聞くんだよ」

 

 今度は総司が質問する番だった。早坂が納得する答えを出せたのは良いが、一体何故早坂は突然、あんな質問をしたのか。最近、千花と圭の二人と距離が近い事が気になったのだろうか?まあ、総司も早坂が思いを寄せている相手が誰なのか気になっているし、それと似た気持ちを早坂も抱いているのかもしれない。

 

 というか早坂に好きな人がいると知ったあの日からそれとなく調査を続けているのだが、全くそれらしい男の姿が見えてこない。

 早坂の行動範囲は狭いため、恐らく学園内の誰かと思っていたのだがもしかしたら別の学校の生徒と総司もかぐやも知らない内に知り合ったのかもしれない。

 

「総司様は、二人を下の名前で呼んでいたからです」

 

「は?…あ、あぁ、そういう事か」

 

 早坂の好きな人が誰なのかという問題に意識がいっていたせいで、早坂の返答が何に対してなのか一瞬解らなかった。

 しかし、確かに早坂の言う通り、最近千花と圭を下の名前で呼ぶようになった。そして異性を下の名前で呼ぶというのはその異性同士がそれなりに親しくなければ不可能な事である。だから早坂は総司が千花か圭のどちらかを好きなのでは、と疑ったという訳だ。

 

「二人の事は良い友人だって思ってるよ」

 

「良い、友人」

 

 だから何でそこで表情が柔らかくなる。そしてそれと一緒に複雑そうに唇の端を引くつかせるのか。

 

「…それはそれであの二人が可哀想になりますね」

 

「何でだよ」

 

「それが解ってないから可哀想なんですよ」

 

「…何故だ」

 

 総司の心の底から出た一言、何故だ。しかし早坂の言う通り、それが解ってないから千花と圭が可哀想なのだ。まあそれは早坂も一緒なのだが。

 

「んん…」

 

 和やかな雰囲気と険のある雰囲気が入り交じった微妙な空気の中、かぐやが吐息を漏らしながらこてん、と早坂の肩に頭を凭れかける。

 

「かいちょぉ…がんばってぇ…」

 

「「…」」

 

 総司と早坂が目を見合わせる。かぐやはもにょもにょと唇を動かしながら更に寝言を続ける。

 

「かいちょぉいちい…すごいです…」

 

「「…ぷふ」」

 

 どんな夢を見ているのか、寝言で明らかである。夢の中でかぐやは白銀を応援しているのだ。現実では周囲の目を気にして思い切り応援できなかった様だから、こうして夢で見ているのだろうか。

 そんなかぐやの様子が面白く、総司と早坂は同時に吹き出す。

 

「ホント、いつもこうだったら可愛いのに…」

 

「何言ってんだ、かぐやはいつも可愛いだろう」

 

「あーはいはい、シスコン発言は良いですから」

 

 微笑みを浮かべながらかぐやの頭を撫でる早坂の台詞に食い下がる総司。そして食い下がってくる総司を手をヒラヒラと揺らしてあしらう早坂。

 立場が上なのは総司のはずなのに、完全に子供扱いされている。

 

「おい早坂」

 

「何ですか?」

 

「俺にも撫でさせろ」

 

「…ホントこのシスコンブラコン兄妹は」

 

 ため息を吐きながらかぐやの頭から手を離す早坂。総司はかぐやの方へと近付き、掌をかぐやの頭に乗せる。

 

 女性の肩に凭れかかる女の子の頭を撫でる男。これは端から見たら完全にあれである。かぞ(ry

 

 先程までの微妙な空気ではなく、ただただ穏やかな空気が流れる。少なくとも、三人はその空気に包まれていた。

 

 そんな三人に運転席からルームミラーを通して、赤木は視線を向けていた。




早坂…
多分まだまだ名前で呼ばれないです…
だって使用人だから…(´;ω;`)

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