半導体戦争はアメリカの負け

2023-07-27T19:39:46+09:00

Posted by MOS_IC_MAKE

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ひとりごと

トランプ君の時代から続いてきた半導体戦争はアメリカの負けになりそうだ。

アメリカの半導体メーカーインテル、エヌビディア、クアルコムのハイテク業界のCEOたちは経営者はワシントンで集まり、バイデン政権の高官と会談した。具体的な会合の詳細はあまり明らかになっていないが、すべての企業は、米国が「中国市場」での影響力を損なうような追加的な措置を課すことに反対したという。
Intel、NVIDIA、Qualcommのトップらが中国への規制を緩和するよう米政府に働きかける

彼らの主張によれば、アメリカの規制により、高度な半導体を中国に売ることができなくなったことにより、企業利益が大幅に下がっている。彼らの利益の大部分は中国市場で稼いでおり、中国市場は失うことはできないのだ。

そもそも中国は世界の70%の半導体を消費する。中国市場で売れなくなったらほとんどの半導体メーカーは倒産する。アメリカの半導体メーカーとてその例外ではない。

アメリカは国家の安全保障を理由に高度の半導体を規制した。当初は最先端の7nm以下の製造技術を規制したが、そこから14nmの製造技術を規制した。これにより中国は14nm以下の高精細の半導体は入手できなくなった。
このためフアウェイはスマホ用のCPUが入手できなくなり、一時スマホ事業から撤退を余儀なくされた。ほかもさぞかし困っただろうと思うだろうが、実際はそれほど困ってはいない。

民生用、軍事用含めて、90%の半導体は28mn以上の技術で作られている。14nm以下の技術の半導体は高性能だが開発費が高価だしノイズに弱いためスマホとか一部のコンピューターでのみ使われる。
中国国内ではすでに28mnの技術を達成しており、ほとんどの半導体は内製できる。
つまりアメリカの半導体規制はほとんどの産業分野に影響することはなかった。
中国は逆に最先端の分野よりもレガシーな分野に力を入れ、海外の半導体への依存を減らしていった。このためアメリカを始めとする半導体メーカーの売上は大きく減ることとなった。テキサスインスツルメンツやウェスタンデジタルなどの会社は業績を大きく下げた。日本のエルピーダはこのアオリを食って倒産した。

最先端半導体に関して言えば14nm以下の高精細の半導体はもう技術的な限界に近づいている。7nm、3nmの半導体を作れるのは台湾のTSMCと韓国の三星にかぎられている。アメリカはこの2社に中国からの発注を受けないように圧力をかけた。さらに製造設備や部材を入手できないよう、数少ない製造国であるオランダや日本にも圧力をかけた。だがアメリカの規制は遅かったし、まとはずれだった。

7nm、3nmの半導体は開発費が非常に高い。こういった半導体を使えるのはスマホやパソコンなど大量生産できるデバイスだけである。半導体は微細化が進めば進むほど性能は向上する。開発費も上がる。しかし微細化がある程度以上進むと性能の向上は頭打ちになる。3nm以下になるとほとんどメリットはないとされる。TSMCはアメリカに最先端の工場をたてたというが、顧客はアップルぐらいしか期待できない。

つまりアメリカが規制した14nm以下の半導体は中国にとって主要な障害ではないということだ。しかも中国は内製化をすすめ、7nmの半導体は遅くとも来年には量産される。アメリカの規制のおかげでアメリカ製半導体が入手しにくくなったので、その分中国産の半導体のシェアは広がる。それはアメリカ製品より当然安価だから、国外にも出てゆく。
つまりアメリカ政府は自国の半導体メーカーの売上を下げているのだ。





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