甲子園のアルプス席は「神案内」 ちょっとした気遣いで迅速、安全に
夏の甲子園の舞台、阪神甲子園球場のアルプススタンドにはブラスバンドや在校生らの応援団が多く詰めかけ、試合のたびにガラッと入れ替わる。甲子園のグラウンド整備が「神整備」と呼ばれるが、スタンドのスムーズな入退場の背景にも、ちょっとした「神」案内がある。
14日、鳥栖工(佐賀)と対戦した日大三(西東京)のアルプス席。1点を勝ち越した六回裏が終わると、緑色のシャツを着た男性スタッフが拡声器を手にした。退場する際の注意点を説明。試合が終わってすぐに球場を出られるよう荷物をまとめておくことを勧めた。
そして最後に一言。
「先ほど勝ち越せたんで、いい流れで来ています。後半戦も応援を頑張りましょう」。拍手がわき起こった。
アルプスは試合が終わり、次戦が始まるまでの約30分で数千人が入れ替わる。案内しているのが、球場に委託されたイベント運営を請け負う会社のスタッフだ。一塁側、三塁側で計48人を配置している。
同社でスタッフを束ねる社員の藤沢凱輝(がいき)さん(27)によると、スタッフには応援団としっかりコミュニケーションをとるようにお願いしているという。「声かけの話題は現場で臨機応変に選んでもらっています」と話す。
ほかの試合でも五回が終わると、「皆さんの応援で熱戦になっています。選手のためにもう少し頑張りましょう」「あと残り4回攻撃があります。追加点を取って快勝しましょう」などの呼びかけが聞かれた。代表校の地域の話題を話すこともあるという。
現場の男性スタッフに意図を聞いた。「観客のみなさんに寄り添うためです。その方が協力してもらいやすいし、スムーズな案内につながるんです」
応援団の入れ替えを安全に、かつ迅速に行うための工夫。藤沢さんは言う。「接触事故やトラブルが起きないようにすることはもちろん大事。でもやっぱり一番は気持ちよく観戦して、帰ってもらうことなのです」(松永和彦)