中小企業診断士の1次試験における「経営法務」科目は、企業活動における法律の知識が必要ですが、法務部担当でもない限り、多くの受験生には、馴染みが薄く、苦手意識を持っている人も多いことでしょう。

特に近年の絶望的な合格率を見ると、尻込みしてしまいますね。

このコラムでは「経営法務」の出題傾向や試験に突破するための勉強法のポイントを解説します。

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中小企業診断士試験における経営法務の概要

経営法務科目は、以下の分野から出題されます。

(1)事業開始、会社設立及び倒産等に関する知識

(2) 知的財産権に関する知識

(3) 取引関係に関する法務知識

(4) 企業活動に関する法律知識

(5) 資本市場へのアクセスと手続

厳しい合格率

経営法務科目は、ここ最近こそ10%台を何とか確保していますが、一桁台になることも珍しくなく、非常に厳しい科目であると言えます。

平成29年 平成30年 令和1年 令和2年 令和3年 令和4年
8.4% 5.1% 10.1% 12.0% 12.8% 26.9%
【参考】中小企業診断協会 中小企業診断士試験 過去の試験結果・統計資料

会社の設立から営業上の法規制、会社整理までの会社の一生を網羅しています。さらに、上場など将来的なステージに関する法律知識も求められます。

企業経営には法律は重要なテーマですが、中小企業の経営者は、法律知識に乏しく、法律のスペシャリストである弁護士をうまく活用できていない面があります。経営も法律もわかる診断士が、経営者の意向をうまく伝えられることを期待されています。

法律に従うことは必要ですが、単に守るだけでなく、経営上戦略的に法律を活用することも、中小企業診断士に求められています。

経営法務科目は、二次試験にはほとんど関連しません。その理由としては、法律には改正が付き物なため、二次試験の事例内容としては相応しくないからなのでしょう。

反面、コンサルタントとしての実務面では非常に重要な科目です。

法律の専門家になる必要はありませんが、企業のドクター役である中小企業診断士は、常に経営者から法律面でのアドバイスも求められています。

出題形式と配点

経営法務科目は、以下の仕様で出題されます。

・二日目の最初の科目

・時間数は60分

・択一マークシート形式(四肢択一式)で実施。

・問題数

 18~23問で、年度によって変動があります。

出題の傾向

法律に詳しくない大半の受験生は、範囲の広さと専門性に途方に暮れそうな科目ですが、実は出題テーマに大きく偏りがあります。

特に「知的財産権」と「会社法」で出題率約60%に達しています。

経営資源に乏しい中小企業にとって、大企業に対抗しうる知的財産を武器にすることや、創業やガバナンス、会社整理に至るまでのアドバイスを中小企業診断士に求めていることが、はっきりとわかります。

経営法務の勉強法

①法律の趣旨を理解した上での暗記

経営法務には計算問題やグラフの読み取りなどの知識は不要です。反面、覚えるべき内容が膨大にあるのが法律です。

しかし、単に条文内容を覚えるのは至難の業です。

そのため、「法律の意図」を理解しながら学習することをお勧めします。

ある程度の法律の趣旨が分かると、暗記もしやすくなりますし、もし忘れた場合でも、法律の意図を考えれば答えを導き出すことが出来ます。

②重点テーマを優先

出題傾向からも分かるように、「知的財産権」と「会社法」を徹底的にマークすることが最優先です。

さらに、「民法」の理解が加われば合格が見えてきます。

③法律改正に注意

試験1~2年前に改正された内容は要注意です。知っているかどうかが試されやすく、作問しやすいものです。

反面、試験直前の法改正は間に合わず、出題しようがないため、受験の年の法改正は気にしない方が得策です。

しかし、受験が複数年に及ぶときは要チェックです。

そういった意味では、古い過去問はあまりあてになりません。最新の問題集の方が重要です。

④英文問題への対応

毎回必ず出題されているのが、英文問題です。

サイトによっては捨て問と考える方が良いとアドバイスする傾向が多いようですが、中身的には、秘密保持契約(NDA)など、ワンパターンなことが多いので、他のテーマがある程度準備出来たら、最低限の用意で加点も期待したいところです。

まとめ

多くの受験生が苦手意識を持っている「経営法務」科目ですが、意外に的が絞りやすく、効率的な学習が可能な科目であることがお分かりいただけたのではないでしょうか?

つい、科目合格率だけみると怖い科目に見えますが、テーマを絞り込み、理解&暗記をすすめ、法改正に注意すれば、あなたにとって得意科目に変身することでしょう。

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