第105回全国高校野球選手権記念大会は19日、準々決勝4試合が行われる。春夏3度目の甲子園出場で初勝利からベスト8入りしたおかやま山陽は神村学園(鹿児島)と対決。ジンバブエに球場を建設する夢を抱く堤尚彦監督(52)は、今大会の躍進により、著書への注目度が急上昇していることが18日、分かった。この日は大会休養日。準決勝、決勝の前日も休養日とし、悪天候での順延が続かない限り2日連続の試合が発生しないようになっている。
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甲子園初勝利から8強入りしたおかやま山陽のフィーバーは、球場内にとどまらない。7月5日に発売された堤監督の著書「アフリカから世界へ、そして甲子園へ」(税込み1760円)が通販大手「Amazon」の17日の総合ランキングで最高6位になったことが分かった。「ノンフィクションのスポーツ」、「自伝・伝記」の両部門ではともにランキング1位に。16日は1万5000位以下だったが、17日の3回戦(対日大三)に勝利したことなどで、売り上げが急上昇した。
19年東京五輪予選でジンバブエ監督を務めるなどした海外での経験や、野球普及への熱意を記した一冊。「印税でジンバブエに球場を作りたい」と公言している堤監督の夢が現実味を帯びてきた。「まず球場を作って、その後で施設を良くしていきたい」と、同国第2の都市・ブラワヨでの建設を想定している。関係者によると、物価の安いジンバブエでは、学校グラウンド程度の小さな球場なら2~300万円で設立可能という。印税の相場は10%前後。300万円を目標とすれば、約1万8000部売れれば実現する計算だ。
出版した東京ニュース通信社の編集担当者は「当初の『初版部数を売り切る』から目標を上方修正しました」と重版の方針を明かした。目標を「甲子園3勝」から「決勝進出」に変えたおかやま山陽と同様、出版社も目標を上方修正した。
準々決勝の神村学園戦を控えたナインは西宮市内で調整したが、打撃練習は行わなかった。堤監督は「(打撃に)飢えた方がいい」と独特の言い回しで狙いを明かした。アフリカなど世界各国から快進撃を祝うメールが届く指揮官。渡辺颯人主将は「監督が野球の普及に力を入れていると知り、入学した。人間性も育ててもらえると思った」。ナインも、野球発展途上国への球場建設という同じ夢を持って戦う。(田村 龍一)
◆堤 尚彦(つつみ・なおひこ)1971年7月26日、兵庫・加東市生まれ。52歳。東京・都千歳高で主将。東北福祉大卒業後、青年海外協力隊員としてアフリカに赴任。ガーナ、インドネシアで代表コーチ。18年にジンバブエ代表監督に就任し、19年に東京五輪のアフリカ大陸予選に参加。2006年、おかやま山陽監督に就任。17年夏、18年春に甲子園出場。社会科教諭で同校教頭。アジア野球連盟公認インストラクター。
◆ジンバブエ アフリカ大陸南部に位置し、面積は日本とほぼ同じの約38・6万平方キロメートル。人口約1600万人。首都ハラレ。1980年に英国から独立。言語はショナ語、ンデベレ語、英語。グレート・ジンバブエ遺跡などが世界遺産。野球は86年にアフリカ野球・ソフトボール協会に加盟。現在の競技人口は約220人。堤監督が率いた東京五輪アフリカ予選は3位で本戦出場を逃した。