[平本淳也のジャニーズ社会学]

ジャニーズはなぜ不倫や淫行騒動と無縁?ジャニー喜多川の決意|平本淳也のジャニーズ社会学

Photo by Pixabay(写真はイメージです)
Photo by Pixabay(写真はイメージです)

 芸能人から政治家まで著名人の不倫が”最恐”のエンターテイメント化している今日この頃。スキャンダルと言えば恋愛・熱愛発覚が定番だが、最近は不倫や浮気に略奪愛と芸能人に限らず政治家の登場も頻繁になってきた。以前はここまで酷いニュースはなかったのにと思いつつ、マスコミも容赦なく、そして間髪なく突いてくるのも時代だろう。突かれたら終わり、その恐怖に慄く人気者たちは少なくない。

 アイドルを扱う芸能プロダクションとしては、この上なきスキャンダルがこの色恋モノだ。ジャニーズも多くの恋や愛を表現してきたが、これまで不倫系のスキャンダルは見当たらない。基本的に若い独身族が多いということが主たる理由だが、相手に伴侶が存在すれば不倫という図式は成り立つものの、遊びの域なら不倫とまでは言えない法律見解もある。

 そもそも「不貞行為」はどこからが”一線を越えるのか”と判断が難しい。例えばキスまでは浮気ではないとか、性行為も1回まではセーフなど、民事における裁定は様々なケースが見当たる。元SPEEDの今井絵理子議員の「一線」は何を指すのか想像の域となるが、本人たちが言う「一線」もその設定は個々に自由ということだ。しかし、それが何だろうと世間は許さない。マスコミは煽るし騒ぐし世間は面白がる。本人たちからすれば台風のごとく時を過ぎるのを待つしかないところだ。

 ジャニーズの場合、色恋沙汰が生じても瞬間的に抹消される。なにか持ち上がって話題となるものの、すぐに立ち消えとなり、ネタとして残っても取り扱う大手メディアは皆無。誰もそれを問わないから「なかったことに」レベルに過ぎ去っていく。ネット上では大騒ぎしているが、それもジャニーズの世界観では大した悪影響は残さない。

 例えば、東山紀之と深田恭子の「お泊り愛」「半同棲」なんか誰も覚えていないし、深キョンはその後に滝沢秀明とも噂になったが誰も騒いでいない。ただし、気になるのは、その当時の深キョンは17歳。それも16歳から17歳になる年のこと。それに対して東山は33歳で、その差は16歳もあった。

 年の差は恋愛において無関係としても、33歳の男が16歳の女子高生と付き合うのは法律上は許されるのだろうか。正確には地方の条例と世間の印象の上で”淫行”と判断されることになる。

 芸能界では度々、この淫行騒動が持ち上がる。相手が18歳未満だったために叩かれて業界を追われた芸人やタレントたちは少なくない。ではなぜ東山のときは誰もそれを問題としなかったのか……。お笑い芸人なら”淫行”だとか”未成年とみだらな行為”などと書き立てられる恰好のネタなのに、大手メディアは見て見ぬ振りをする。そこは天下のジャニーズである。

 まあ、東山のネタはジャニーズのチカラというより、マスコミも仕込みやヤラセに付き合うほど暇でもないというほうの話だった。今の時代は嘘でも許されないが、これが99年の世紀末のこと。20年近く経つと世間の捉え方も大きく変わって、その印象の違いが実に面白い。

■ジャニーズ事務所はなぜ”不倫”や”淫行”と無縁なのか?

 現在もっともスキャンダルで致命的なのは不倫と淫行ではあるが、とりわけジャニーズはこの2つとは長らく無関係だ。あったとしても表沙汰にはなっていない。ちょっと意味深になるが、とりあえず表沙汰になっていなければ、当事者や関係者たちにはどうでもいい話だ。離婚や再婚にDNA鑑定騒動など、相当のスキャンダルはあるものの、ゲス川谷やらベッキーや矢口真里にSPEED今井絵理子や渡辺謙さんのように不倫や浮気で名を馳せたジャニーズのタレントはいない。

 不倫や浮気はバレなければセーフという可笑しなローカルルールも考え方として存在するので下手なことは言うつもりはないが、人気タレントであれば、バレたら大変というのはもう十分に理解できている。ベッキーのときには数億円という「違約金」が注目を集めたが、CMをはじめ、テレビやラジオに舞台やイベント、映画などなど「既存イメージを損なう」と大きな損害が生じてしまう。

 芸能人にとって、この破壊力は凄まじい。それくらい不倫や淫行は薬物系の犯罪と変わらないくらいのインパクトがあり、やるなら「覚悟」が必要である。犯罪ではないにしろ不倫は法律上「不貞行為」とされる恐れもあり、社会の逸脱行為には変わりなく当然の制裁も下されるが、「不倫は文化」公言した石田純一さんやマスコミを上手く手名付けたジャーナリストの山路徹さんのように逞しいケースもある。いずれにせよ。メディアからしたら面白いネタの鉄板である。

 今でこそ既婚者も増えてきたジャニーズの面々だが、そろそろニュースになるようなネタが持ち上がっても良いころだ。ただし、ジャニーズなので抑えるところはガッチリやっているし、マスコミ防御のランクは業界一といってもいい。ジャニーズの守りは今も昔もやはり優秀だ。

■ジャニーさんが「もう男の子だけにする!」と決心したワケ

 ジャニーズは所属タレントに恋愛の噂が立つのを異常に嫌う。過去にはこんなエピソードもある。その昔、ジャニーズでは「女性のタレント」も存在していた。70年代後半から80年代の半ばまで3グループに計5人の女性がメンバーとしてデビューしている。しかし、いつの間にかジャニーズと言えば”男だけの世界”になってしまった。その理由は当時、ジャニー喜多川さんは公式に発表している。

「男の子と女の子が一緒にいれば嫌でも噂は立つ、例え何もなくてもファンの気持ちは落ち着かない。だったら、そういった”スキャンダルの元”となる状況や環境を作らなければいい」

 これが公式なコメントだった。つまり、スキャンダルを未然に防ぐことに考えをおいたジャニーさんの結論だった。噂のひとつでも「スキャンダル」とされていたのは今と大して変わってないが、当時は芸能界や芸能人という世界は現在より遥かに華やかにイメージングされていて、「アイドルはトイレに行かない」という崇拝じみた妄想もあったくらいだ。

 ジャニーさんはそんな華やかなイメージを大切にしたいという真摯な理由から、ジャニーズのアイドルは王子様であり、そして王子様は皆のものとして存在する……というイメージを徹底していくことになる。そこから生まれる疑似恋愛こそビジネスの原点であり、その妄想を傍らで邪魔する存在があってはならない。そのためにも可能な限りスキャンダルは未然に防ぐという姿勢がジャニーズにはある。

 同じグループどころか、所属する事務所が同じというだけでもファンの心境は落ち着かないことを知ったジャニーさん。人気タレントであればあるほどヤキモチや嫉妬によって恋の噂は生まれ、いくら火種がなくともノロシのような噂が立ち上がってしまう。それなら、その可能性はできる限り排除をすべきと懸念したジャニーさんが「もうっ、男の子だけにする!」と決心したことがジャニーズの歴史を大きく変えた。ジャニーさんが単に少年が大好きだったというだけではない……決して(笑い)。

 そんなジャニーさんも最近では、タレントの結婚についても良い相手に恵まれたならそれを邪魔するようなことはしないし、決断は本人に任せるという、タレントへの信頼感をコメントしている。実際にはそう簡単なものではないが、ジャニーズの上の世代、つまり近藤真彦を筆頭に東山や岡本健一、そして木村拓也にTOKIOの面々らが所帯を持ってくれたことによって、下の世代はかなり精神的に楽になっている。実際に中居正広も「木村が結婚してくれたら(下の)皆が楽だよ」と公言していたほどだ。

■ジャニーさんが唯一許せなかったタレントの結婚とは?

 しかし「楽」になったからと言って、恋愛が解禁になったわけでもなく、また勝手に結婚していいワケでもないのはジャニーズとしては最低限の決まり事だ。タレントはその人自身が商品だから、その質や量を勝手な個人の判断で変化させることは断じて許されない。元KAT-TUNの赤西仁はその点において、ジャニーさんに許されなかったわけだ。

 その一方で、結婚やそれに繋がるような真剣交際には興味がないが、やっぱり男の子だし、モテるし、それなりに遊びたい……と羽目を外す若いジャニーズが増えた気がするのは気のせいだろうか。それも芸能界を飛び越えてビクシー女優方面との交流も珍しくなくなっているが、実際はほんの一部しか表に出ていないのが実情で、全部が世間に伝わったらかなり引くだろう。ジャニーズじゃなかったらとっくに終わっているスキャンダルを持つタレントは相当数いる。彼らのヤンチャなプライベートを知るにつけ、やはりジャニーズのディフェンス能力は凄いと感じるし、あれでもタレントたちは守られている中での自由を満喫できているのだ。

 淫行騒動ひとつ取ってみても、天下のアミューズでも小出恵介は守れなかったし、お笑いでは最大手の吉本興業でも板尾創路さんや山本圭壱さんのスキャンダルを隠蔽できなかった。女性問題では、芸能界の頂上に立つバーニング系でも山本裕典を守らず排除するというのが今どきの姿勢だ。

 人道的に守りようがなければジャニーズも排除していくのは変わりないが、世間に出る前に何とかするのが、これまでの「ジャニーズ流」だった。しかし、ネットジャーナリズムやSNSが発展した現代社会ではそれも通用しないだろう。SMAP解散騒動での大ブーイングで、それが身に染みたと言われているジャニーズ事務所。SMAPを守れなかった教訓が今後のジャニーズにどう生きていくのか、見ものである。

著者プロフィール


ジャニーズ出身の作家

平本淳也(ひらもと・じゅんや)

ジャニーズ出身の作家で実業家。著書34冊のベストセラーを誇る売れっ子の物書きとして、テレビや雑誌など多くのメディアに記事やコメント提供。実業家としてはコンサルティング会社や芸能プロダクション、レコード会社などを運営し、タレントから起業家まで幅広い活動の支援を行っている。http://vjsv.com/

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