今から3年前、郵便局で働いていたシェリーは、娘が病いで体調を崩したため、孫3人を預かることとなった。
夫と離婚していたシェリーは働きながら1人で孫たちを育てていた。
シェリーたちが住んでいたのはミシガン州の小さな田舎町・アルモント。
治安が良く、とても安全な地域として知られていた。
その日は、孫2人と食料品の買い物に出掛けていた。
数時間後、夕食の準備をしていた時、奇妙なことに気づいた。
飲み残しのあったはずのお酒が消えていた。
他にも、置いたばかりの消臭剤がなくなっていた。
しかし、そのうち出てくるだろうと気に留めなかった。
だがその夜、買ったばかりの食料品が次々と無くなっていた。
翌朝、孫たちを送り出したシェリー。
不思議な現象が起こり始めてから2日後、家の中でシェリーが初めて1人になるタイミングだった。
突然、後ろから銃を突きつけられた。
この男はずっと潜んでいた…クローゼットの中で。
実はクローゼットの中にはもう一つの扉があり、配管なども通る物置へと繋がっていた。
シェリーはここを2ヶ月に1度くらいしか開けていなかったのだ。
潜んでいた男の名は、ジェローム。
シェリーの家に何度も訪れたことがあった。
そのため、孫娘がいつも大音量で音楽を聴いており、多少物音を立てても気づかないこと、シェリーの家が治安の良いエリアにあり、彼女が鍵をかけないことを知っていた。
孫娘を留守番に残し、出掛けていくシェリーたちを確認した後、玄関から家に侵入。
酒や食料品、排泄物の匂いを消すための消臭剤を持って、クローゼットの奥底へ潜んだ。
皆が寝静まった頃、中から出てきて、食料を補給していたのだ。
そしてシェリーが1人になると、彼女に銃を突きつけた。
実は、ジェロームは5年前に離婚したシェリーの元夫。
離婚の原因はジェロームの酒癖の悪さだった。
その後、酒だけでなく、薬物にも依存するようになっていた。
離婚後も友人関係が続いていた2人。
元夫の薬物依存に気づいたシェリーは、友人である彼の薬物依存をどうにかしてあげたいと思った。
だがジェロームは、それを愛であると受け取った。
思いは日に日に強くなっていき、事件の1ヶ月前、ジェロームはシェリーに復縁を迫った。
ジェロームは薬物依存から抜け出せていなかった。
シェリーがいくら止めても、隠れて薬物を使用していたのだ。
さらに薬物の影響なのか、彼はシェリーの家から金品を盗むようになっていた。
シェリーはそんなジェロームを追い返した。
その後、ジェロームは電話やメールを何度もしたが、シェリーは取り合わなかった。
薬物中毒となり、正気を失っていたジェローム。
シェリーへの愛情はいつしか強い憎しみへと変化していた。
銃を突きつけられ、シェリーは死を覚悟した。
だがその時、孫たちの写真が目に入った。
自分が死んだら、孫たちは誰が面倒を見るのか…孫たちのためにも絶対に生き延びなければと思った。
ジェロームはキッチンに移動し、シェリーに携帯を出せと言ってきた。
ジェロームが携帯を棚の上に置くために後ろを向いた瞬間、シェリーは逃げ出した。
だが、すぐにジェロームに気づかれてしまった。
そこでシェリーは「ねぇ、ジェローム。お腹すかない?昔みたいにパンを焼くわよ」と言った。
トースターの横には孫の携帯があった。
その誘いにジェロームがのり、成功したかに思われたが、それも気づかれてしまった。
怒ったジェロームはシェリーを殺すと脅してきた。
するとシェリーは「なんで私が1人になるまで出てこなかったの?」と言ったのだ。
「孫に殺すところを見せたくなかったんじゃないの?」と。
以前はみんなで一緒に遊びに出掛けていた。
ジェロームは孫たちに優しく接しており、愛しているようだった。
そして、「ここで殺したらあの子たちに私の死体を見せることになる。私を殺すならどこか別の場所にしてちょうだい」と言った。
それを聞いたジェロームは「そんなに死にたいと言うんだったら殺してやるよ!別な場所でゆっくりといたぶってな」と言って、アプリを使ってジェロームの口座に全額振り込めと指示をしてきた。
ジェロームは車の後部座席の足元にシェリーを座らせ、車を発信させた。
ジェロームがATMに金を下ろしに行っている間にシェリーは車の鍵を使い、逃亡を試みることにした。
実は、ジェロームに渡した車の鍵は合鍵だった。
いつも使っている鍵は上着のポケットに入っていたのだ。
逃げようとした時、ジェロームに気づかれ、急いで車を発進させた。
振り返るとジェロームが逃げ出す姿が見えた。
シェリー「逃げていく彼を見ていたら腹が立ってきました。こんなことを私にしておいて今更逃げようって言うのって。だから私は追いかけて彼を車で轢こうと思ったの。」
シェリー「”一体何をしているんだ?”と我に帰りました。私は孫たちの元に帰る必要があったのです。もう少しで轢いてしまうところでした。友達の家まで車で行き、通報してもらいました。」
通報を受けた警察はジェロームの携帯の位置情報を元に捜索。
泥酔状態で道端にいるところを発見し、逮捕した。
その後の裁判でジェロームは、誘拐、第一級住居侵入、恐喝などで起訴され、最低6年3ヶ月、最高20年の実刑判決を受けた。
事件からおよそ1年半後、シェリーさんは家を売却。
現在は別の場所で孫たちと一緒にひっそりと暮らしている。
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