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ビッグモーター不正が示した「内部通報」の威力 企業の報復を防ぐため通報者の保護強化を

東洋経済オンライン / 2023年8月16日 7時40分

ビッグモーターでは、2021年秋の内部通報を受けて、2022年夏に損保会社から自主調査の依頼がありました。調査の結果、経営陣は「連携不足やミスが原因で、組織的な不祥事ではない」と処置しました。その後、兼重前社長にも不正の告発がありましたが、会社側はもみ消しました。ようやく2023年1月、マスコミ報道を受けて第三者による特別調査委員会を設置しました。

こうした経緯を受けて消費者庁は8月3日、ビッグモーターに対し公益通報者保護法に基づく報告を求めました。2022年6月に改正された同法では、従業員300人以上の企業は内部の公益通報体制を構築することなどが義務付けられていますが、ビッグモーターでは未整備でした。

国は「公益通報者保護制度相談ダイヤル」を設置するなど、この問題への対応を強化しています。ただ、通報の対象となる法令違反の範囲が狭い、取引先や1年以上前に退職した従業員は保護の対象外になっているなど、まだまだ通報者の保護よりも企業側への配慮のほうが濃厚です。

アメリカでは罰金の一部を通報者に還元

アメリカでは、不祥事などで企業に課せられた罰金の10~30%を通報者(ホイッスルブロワー)に報奨金として支払う制度があるなど、内部通報を奨励しています。わが国でそこまでやるべきかは議論が分かれるところですが、企業の告発者探しへの厳罰化などを含めて一層の改革が必要であることは間違いないでしょう。

今回の一連の事件は、ビッグモーターというブラック企業で起こった特殊な出来事でしょうか。そうではなく、非上場企業ならどこでも起こりうることです。筆者が知る範囲でも、「小さなビッグモーター」「少しマイルドなビッグモーター」がたくさんあります。

ガバナンスというと「堅苦しい」、内部通報というと「密告の横行で組織風土が荒む」といった経営者の反発があります。しかし、適正なガバナンスによって経営者が襟を正して良い経営をすれば、企業が発展し、最終的に経営者にとってプラスになるはずです。

今回のビッグモーターの事件をきっかけに、非上場企業のガバナンスという問題に政府も経済界もしっかり取り組み、日本企業が健全に発展することを期待しましょう。

日沖 健:経営コンサルタント

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