ビッグモーター不正が示した「内部通報」の威力 企業の報復を防ぐため通報者の保護強化を
東洋経済オンライン / 2023年8月16日 7時40分
では、非上場企業では、どういうガバナンスが適切でしょうか。現在、上場企業では、社外取締役の設置が義務づけられています。株主の代理人である社外取締役が経営者を監視するという仕組みです。
今回の事件を受けてビッグモーターは、社外取締役を導入することにしました。マスメディアやネットでも、「一定以上の売上高の企業は、非上場であっても社外取締役を義務付けるべきだ」(評論家・杉村太蔵氏)といった意見が出ています。
しかし、社外取締役を非上場企業のガバナンスの主役に据えることに、筆者は懐疑的です。非上場企業の会社数が多く、社外取締役のなり手がまったく不足するという問題もありますが、社外取締役には実効性のあるガバナンスを期待できないからです。
まず、社外取締役は、詳しい内部事情を把握しておらず、会社側から与えられた情報と本人の知識・常識に基づいて取締役会で発言するだけです。一般的に経営者は、自分に不都合な情報を隠そうとします。社外取締役が経営者にとって不都合な情報を入手し、経営者を正すというのは、極めて困難です。
しかも、非上場企業では、社外取締役はオーナー経営者の一存で選任されます。選ばれるのは、たいてい経営者のお友達です。仮に社外取締役が経営者にとって不都合な内部情報を入手したとしても、お友達である経営者を厳しく諫める、場合によっては辞任を迫るというのは、まったく現実的ではありません。
最近は、上場企業でも「社外取締役はお飾りにすぎないのでは?」という疑念が強まっています(社外取締役が自ら語る「報酬と実効性」のバランス参照)。ましてや非上場企業で社外取締役にガバナンスの中心的な役割を期待するのは、的外れとしか言いようがありません。
内部通報制度の改善を
ガバナンスの「伝家の宝刀」とされる社外取締役が役に立たないとすれば、もはや処置なしでしょうか。そうとは限りません。従業員の内部通報が、ガバナンスに大きく貢献すると期待されます。
ビッグモーターの保険金不正請求では、2021年秋に従業員から損害保険の業界団体に内部通報がありました。近年問題になっている他の不祥事も、多くが内部通報によって発覚しています。
当然ながら、経営者の問題を正すには、社内の情報が必要です。社内の情報を持たない社外取締役よりも、社内事情を精通した従業員のほうが、はるかにガバナンスに有効な役割を果たせるはずです。
ただし、内部通報にも課題があります。大半の非上場企業では、内部通報の社内体制が整備されていませんし、経営者が不都合な内部通報をもみ消そうとします。“裏切り”をした告発者を探し出し、閑職に追いやるといった報復行為が横行しています。
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