ビッグモーター不正が示した「内部通報」の威力 企業の報復を防ぐため通報者の保護強化を
東洋経済オンライン / 2023年8月16日 7時40分
社会を揺るがしているビッグモーターでは、辞任した兼重宏行前社長と息子で前副社長の宏一氏の異常な経営の実態が次々と明るみに出ています。
同社は、売上高約5800億円(2022年9月期/帝国データバンクの調査による推定値)という大企業でありながら、非上場です。一連の事件は、非上場企業のオーナー社長のコーポレートガバナンス(以下、ガバナンス)という問題を提起しています。
オーナー経営者のガバナンスという課題
今後のガバナンスのあり方を考える前に、これまでのガバナンス論の経緯を簡単に確認しておきます。ガバナンス論の起源は、バーリ=ミーンズの『近代株式会社と私有財産』という1932年の論文です(「ガバナンス」という用語が使われるようになったのは1960年代から)。
アメリカでは1920年代、企業が巨大化し、資本金額が大きくなり、創業者・創業家の出資比率が低下しました。多くの企業でオーナー経営者が退場し、代わって経営管理の知識を持つ専門経営者、つまりサラリーマン経営者が経営を担うようになりました。「所有と経営の分離」と言います。
「所有と経営の分離」の状況で、サラリーマン経営者が株主の利益に反するひどい経営をしても、株式所有が分散しているので、株主は経営者を簡単にはクビにできません。そのため、ほとんど株を持たないサラリーマン経営者が実質的に会社を支配し、好き放題に振る舞うようになります。「経営者支配」と言います。
「経営者支配」の状況で、株主にとっては、サラリーマン経営者が株主の利益のために経営するよう、どう規律づけるかが課題になります。これが、ガバナンスです。このように、伝統的なガバナンス論では、上場企業において株主がサラリーマン経営者をどうコントロールするかが課題で、非上場企業のオーナー経営者は議論の対象外でした。
しかし、サラリーマン経営者であれ、オーナー経営者であれ、経営者がひどい経営をしたら従業員・顧客・取引先・地域社会などさまざまな利害関係者に悪影響が及びます。近年、株主だけでなく、広く利害関係者を意識したガバナンスが求められるようになっています。
日本では、上場企業は3901社(8月10日現在、日本取引所グループ公表)で、全国の企業368万社(「令和3年経済センサス‐活動調査」)の0.1%にすぎません。99.9%を占める非上場企業(オーナー経営者が大半)のガバナンスが、日本では重要かつ未対応の課題と言えます。
社外取締役は解決策にならない
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