コロナ禍を教訓に地政学リスクに備え
大手の一角、パナソニック空質空調社も6月22日、日本市場向けの家庭用エアコンについて国内での研究開発や生産体制を強化すると発表した。現在は中国広州工場で生産している高級、中級モデルを、草津工場(滋賀県草津市)などに設備投資を行い、国内生産に移管する。設備投資額は約100億円を見込んでいる。
23年度中に高級モデル、24年度中に中級モデルを国内生産に移管することで、パナソニックが国内で販売する家庭用エアコンの国内生産比率は10%から40%にまで高まる見通し。これにより、納品までのリードタイムも約4分の1に短縮されるという。
同時に同社は省エネや自然冷媒などの環境技術の開発も国内で加速させるほか、現在はシリーズごとに違った部品仕様を共通化・モジュール化することで、部品点数を3割削減してコスト削減も進める。
20年から約3年間続いたコロナ禍によって、グローバルに生産拠点を構える企業は部品調達がままならず、需要はあっても供給が滞る状態が続いた。特に昨年の上海でのロックダウンは多くのメーカーに多大な影響を与えた。
コロナ禍による供給力不足の課題は解消されつつあるものの、気候変動の影響を受けての災害や地政学的なリスクはいつ起こるか分からない。こうした状況下で、企業はいま、サプライチェーンの見直しを進めている。エアコン大手の動きもこうした流れに対応するものだと言えるだろう。
また、コロナ禍の教訓を得て、単に生産コストの安さだけが競争力の源泉ではない、と企業も実感したのではないか。顧客ニーズを的確にとらえ、納期を短縮して商機を逸しない力も当たり前ながら企業にとっては大きな競争力なのだ。家庭用エアコンの国内生産回帰、国内生産・開発基盤強化の動きを取材して改めて感じた。