設楽原の太陽光発電計画/新城市教委
2023/07/25
太陽光発電が計画されているのは立ち木の手前の土地。奥に馬防柵が見える(新城市で)
「長篠・設楽原の戦い」があった新城市内の土地での太陽光発電計画をめぐり、市教育委員会が1月、設楽原の景観を守るため設備設置を見送るよう事業者側に要請していたことが24日、分かった。ただ、市は事業者とその後行った協議で改めて懸念を伝えることはなかった。歴史的景観の保護に向けた対応が十分だったか問われそうだ。
問題となっているのは、新城市八束穂での設置計画。事業者のエクソル(京都市)が市教委生涯共育課に事前の照会を行った際、同課は文化財保護法上の届け出が必要だと回答するのに合わせ、「景観上の観点からこの場所で設置を行わないでほしい」とファクスで指摘した。
5月下旬~6月末には、エクソルは市との間で条例に基づく事前協議を実施。市の窓口になった環境政策課は、生涯共育課の見解を把握していたが、同社へ伝えないまま協議を終了した。
この問題に関して、下江洋行市長は24日の記者会見で「現状では、条例や規則で史跡への太陽光発電設備設置を規制していない」と述べ、制度に限界があったとの認識を示した。
市の太陽光発電設備設置手続き条例が4月に施行されたばかりだが、下江市長は「史跡に係る場所でこういう事案が起こることは想定外だった」と指摘。今回の問題を機に条例改正などを検討すると表明した。
また、「市として景観を守りたい場所であることをしっかり事業者に伝える」と強調。8月4日にエクソルの東京本社を訪問するという。
エクソルが設備設置を予定するのは、馬防柵が再現された場所から南東に150メートルほどのところ。同社はこれまでの取材に「8月の地元説明会で理解を得られなければ、事業の見直しも勘案して進める」と柔軟な姿勢を示している。