2023.5.11
本文内に掲載の画像、映像は開発中のものを含みます。
『ティアーズ オブ ザ キングダム』を開発する中での苦労と経緯はよくわかりました。
ただ、フィールドは同じということですが、実際は空にも行けますし、今作のフィールドは大きく広がっているんですよね?
空や洞窟などが、それにあたりますね。
前作まではいろんな理由から実現できていなかった場所でもあります。
実は前作『ブレス オブ ザ ワイルド』は、もともとWii U※7でつくっていたのもあって、開発上の制約が今よりも厳しかったんです。
なので、開発中にいろいろとやりたいことは出てきたんですが前作では「やらないこと」を明確にしていました。
「このタイトルは空を飛ばないゲームにしないとだめだよね」とか・・・。
そしたら青沼さんは、「空が飛べないなら穴を掘りたい!」ってずっと言ってましたけど。
それも、当時は「いや~、穴を掘るのも勘弁してください~」って(笑)。
※72012年に発売した、TVと手元のWii U GamePadに表示される画面を連携させたゲームを特長とする据置型ゲーム機。
前作を遊んでいるとね、欲求として自然に出るのよ。
ここに穴、掘りたいな~って(笑)。
(笑)。
今作では、そういう取りこぼしを集めて実現するところから始めました。
まったく新しいフィールドをつくっていたら前作と同じように実現できていなかったでしょうし、そういう意味でも、やはり同じフィールドでつくるということの意味は大きかったですね。
画像崖にある「洞窟」の入り口はわかりやすい例かもしれないです。
前作では崖はただ登ることしかできなくて、その側面には何もなかったですもんね。
今作で崖の側面に「洞窟」を発見した人は、「あっちの崖のどこかにも洞窟があるんじゃないか?」って気になり始めると思うんです。
知っている場所でも、その場所に新しい価値がひとつ加わると、世界の見え方が変わるんですよね。
開発者としての視点でも開発中に見えてくる風景が変わりましたし、きっとプレイヤーのみなさんもハイラルの歩き方が変わると思いますよ。
なるほど。確かに一つのヒントで連鎖するようにいろんな場所の見え方が変わってくるのがゼルダですよね。では、空についてはいかがでしょうか。
前作では、壁があって高さがあるといっても、僕は大きな意味では平面的な遊びだと思っていました。
なので、今作では“縦”すなわち、高さを活かした遊びを取り入れようとして、地上から空までひとつながりで移動できることを前提に、より立体的なフィールドをつくりました。
リンクも新しいアクションとしてダイビングできますし、空用の服なども新規で追加されています。
空にも島が浮いていて、どうやったらあそこに到達できるんだろうと、考えるのも楽しそうです。
空島は移動のアクションも、探索も楽しいですよ。
あんまり新しいアクションや空のフィールドが新鮮だったのでやりたい遊びをいろいろ検証しようとして、空島がどんどん増えてしまって。
そしたらある日、デザイナーから怒られました。
島を置きすぎて空が汚いって(笑)。
ゴミゴミしてましたねえ・・・(笑)。
実寸で空に島を浮かべるとね、「あれ、空島って見上げるとこんなに小さくなっちゃうの?」ってびっくりしましたね。
すべてのシーンを継ぎ目なくシームレスにつなぐ、というのを前作から徹底していたんです。
だから、家なんかも実寸でつくっていて、家の中に入ってもマップ切り替えがなく、窓からさっきまでいた風景が見えるようになっている。そんなウソのないつくりになっているんです。
でも実寸でシームレスにつながる空に飛び石のように浮かぶ遊び場を増やしたら、地上から見るとあまりに小さすぎてゴミが浮いているようにしか見えなかったですね(笑)。
最終的にはデザイナーがうまく見た目を調整してくれましたけど。
空と地上がシームレスにつながるというのは、サウンド面でも苦労したんですよ。
ああ、よくプログラマーがサウンドのスタッフに「空と地上の境界線を教えてくれ」って詰め寄られていましたね。
サウンドはシームレスにつながっているのですが、とくにBGMはシチュエーションの変化に合わせて切り替える必要があるんで、どこから切り替わるかのトリガーをつくらないといけないんで・・・
「どこからが空?」なんて、これまで考えたことなかったので悩みましたね(笑)。
(笑)。
あと、どんな音が「空の音」としてしっくりくるのか、というのも難しかったです。
みんな、空って飛行機の中から見える景色しか見たことないですから。
そうそう。
「空を飛ぶ音」ならまだしも、「空にある島の音」って(笑)。
空にある島なんて、誰も行ったことないもんね。
そういえば空の話ばかりしましたが、今作にもダンジョンはあるんですよね?
ダンジョンについては、初めてお話ししますが前作から変わって、今作ならではのものが登場します。
例えばフィールドから地続きにつながっているダンジョン。
空からダイビングで急降下してそのままダンジョンに突入してイベントが発生したり、前作にはなかった新しい感覚を味わっていただけると思います。
その土地にあったユニークなダンジョンを用意しているのでバリエーション豊かなご当地感を楽しんでいただけると思います。
その「バリエーション豊か」ってのが、なかなかに手強かったですね。
前作はある程度デザインが共通している四体の「神獣」がダンジョンになっていたのですが、今作では、従来の「ゼルダの伝説」のように地域ごとに雰囲気の異なるデカいダンジョンがあるので。
やりごたえもガッツリあると思いますが、つくりごたえも同じようにガッツリ(笑)。