社会部記者は捜査が難航している要因をこう語る。
「道警は当初、Aさんは同性愛者の可能性もあるとみて関係者の割り出しに力点を置いていました。実際、ホテルにチェックインした際にAさんは白いブラウスにスカート姿で、連れも女性の服装をしており、女装したゲイ同士のトラブルかと思われましたが、実はAさんは『女装愛好家』であっても同性愛者ではなかったようです。
現場の浴室にあったのは首のない遺体だけで、スマホや洋服などAさんの身元の特定につながるものは一切残されておらず、この“連れ”イコール“容疑者”が全て持ち去ったとみられています。スマホにはAさんの交友関係やさまざまな立ち入り先などの情報があるのは間違いない。そこにアクセスできないことで、絞り込みの作業が遅れている感は否めません」
〈札幌すすきの・首切断〉「お客様、お客様…」ホテル関係者が語る戦慄の現場…「怖くて前に回り込んで確認できなかった」「ベッドはまったく乱れていなかった」営業再開は見通し立たず「全面改装するしかない」
札幌市随一の繁華街・すすきののホテルの一室で男性Aさん(62)の遺体が首のない状態で見つかった事件の捜査は、発生から1週間以上が経過しても混乱の極みにあるようだ。Aさんがホテル入室時にスカートを穿いており、直前にLGBT関係者が参加するディスコイベントに参加していたことなどから、北海道警の初動捜査は交友関係の絞り込みが中心だった。しかし、容疑者特定につながる情報はいまだ得られず、捜査範囲はむしろ拡大を迫られている。背景を探るとともに、ホテル関係者による事件現場の証言を届ける。
「先に1人で出ます。鍵があかないので開けてください」
ホテル関係者が続ける。
「被害者は入室時には2人で入室されています。防犯カメラでも確認しましたが、手をつなぐなどそういったことはなく、被害者の方がタッチパネルを押して部屋を選んでいます。被害者は白っぽいブラウスのようなものを着てスカートを穿き、バッグをふたつくらい持っていて、62歳という実年齢よりもだいぶ若く見えました。
加害者と思われる方の服装は上下白っぽい色で、下は短パンなのかミニスカートか判別できない感じで、黒の帽子をかぶってます。スーツケースを押していて、年齢はなんとなくですが20代から30代くらいに見えました」
入室は7月1日の午後11時ごろだった。
「2人でエレベーターに乗り、2階の部屋に入室しました。3時間後の夜中の2時くらいに、先に加害者と思われるかたが出ていきました。事前に『先に1人で出ます。鍵があかないので開けてください』という電話がフロントに入りましたが、不審な様子は感じ取れず、声色から女性だと思ったということです。その電話の数分後に部屋から出てエレベーターで降りてきました」
“連れの女性”は、入室時と明らかに様子が異なり、背中が妙に膨らんでいたという。
「入室時はリュックなど何も背負ってなかったのに、帰りは服も白から黒色に変わり、リュックを背負ったように膨らんだ背中でスーツケースを押していました。スタッフは着膨れしているだけと思ったみたいですが、後から色々な映像を見るとリュックを背負っているとわかりました。しかし、慌てるような素振りはなく、本当に普通にホテルを出て行ってます。行きも帰りもマスクをしていたので、顔はほとんど見えません。日本人か外国人かもよくわかりません。身長は160〜170センチという被害者の方に比べると、10センチ以上は小柄に見えました」
Aさんも“連れの女性”にも、見覚えはなかったという。
「被害者の方の顔写真は見ましたが、おそらく初めてであろうとしか言えないです。少なくとも頻繁に見るかたではないです。今回の事件の2人は最初は女性2人の入室だと思っていましたが、最近では女性同士でホテルというのは何ら不思議はないんです。飲んだ帰りに終電を逃して泊まる方たちもいるし、女子会でも使われてますからね。
このホテルは今のオーナーが購入してまだ4〜5年なのに、こんな事件が起きてしまったので、正直厳しいですよね。一応、まだ営業は続けるつもりですけど、これだけのニュースになるとしばらくは大変でしょうね」
関係者は頭を抱えた。事件のあった部屋は前述のように、不思議なほど汚れていなかったが、全室内装を張り替えるという。
「部屋が汚れてなかったとはいえ、お客様からするとあそこのホテルのこの部屋だとわかるわけですから、部屋は全て内装を入れ替える予定にしています。時期的にもかきいれどきでもありますし、警察からまだ引き渡されずに、営業できなくなってもう1週間以上ですが、もう少しかかるみたいです。売り上げの損失という意味でも相当です。営業再開しても、しばらくは客足が戻らないでしょうね。何がどうなるかまったく予想がつきませんが、1日も早く営業を再開したい気持ちです」
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
Twitter
@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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