中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する

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マネー現代

債務不履行の恐れも

(文 真壁 昭夫) ここへ来て中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれている。

 不動産市況の悪化は鮮明だ。不動産関連分野はGDPの3割程度を占めるとの試算もあり、経済に与える負の影響は大きい。

 価格の下落、住宅販売の減少によってデベロッパーの経営体力は低下し、債務不履行の恐れも高まっている。

 土地譲渡益の減少によって地方財政も悪化した。

 地方政府がインフラ投資などの景気刺激策を発動することは難しくなった。

 雇用、所得環境は悪化し中国の需要は減少した。7月の主要経済指標から確認できる。

 輸入は前年同月比12.4%減少した。川上の物価動向を示す生産者物価(PPI)は同4.4%、消費者物価指数(CPI)も同0.3%下落した。

日本のバブル崩壊後を想起させる

 自動車、家電、家賃などの価格は下落し、デフレ圧力は高まっている。かつて、わが国が経験した、バブル崩壊後のデフレ不況への道を歩んでいるようだ。

 また、海外経済の環境の悪化や半導体など先端分野での米中対立の影響もあり、7月の輸出は前年同月比14.5%減少した。

 共産党政権は経済成長率の低下を食い止めるため、不良債権処理を本格化し規制緩和などを進めることが必要だろう。中国経済の本格的な回復にはまだ時間がかかる。

 足許、中国の経済全体で債務の返済を優先し、支出を抑制する個人や企業が増えている。

 思い起こされるのは1990年代のわが国の状況だ。バブル崩壊による資産価格の急落によってわが国経済全体でバランスシート調整が進んだ。

 消費や投資を減らし債務圧縮に取り組む家計が増えた。1990年後半にわが国はデフレ経済に突入し、“失われた30年”と呼ばれる長期の停滞に陥ってしまったのだ。

地方政府の財政も悪化

 中国経済もそうした環境に向かいつつあるように見える。きっかけは、2020年8月に共産党政権が“3つのレッドライン”と呼ばれる不動産融資規制を実施したことだった。

 多くの市場参加者は、共産党政権が不動産バブルの抑制に真剣に取り組み始めたと急速に危機感を高めた。

 結果、不動産の投機熱は冷めた。

 不動産デベロッパーは資金繰り確保のために資産の切り売りを急いだ。中国の不動産市況全体で“売るから下がる、下がるから売る”という負の連鎖は鮮明化。マンションなどの価格は下落し、不動産業界全体で資金繰りに行き詰まる企業は増えた。

 8月8日、碧桂園(カントリー・ガーデン)はドル建て社債の利払いを実施しなかったと報じられた。

 マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。

 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。

 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる。

若年層の失業率が46.5%に

 インフラ投資に用いられる基礎資材、建設機械などの需要も減少し、生産活動は停滞した。過剰生産応力は累積し、7月まで生産者物価指数は10ヶ月続けて下落した。

 不動産や設備投資の減少などによって雇用、所得環境も悪化した。

 アリババなどIT先端分野の企業に対する締め付け強化もあり若年層(16~24歳)の失業率は46.5%に達したとの研究結果も報じられた。

 個人消費の減少により7月の消費者物価指数も下落した。共産党政権は金融緩和を強化したが、目立った効果は出てい・・・・・

 習政権は景気の減速を食い止めるために財政支出を増やす考えも強調しているが、不動産分野や地方政府の債務問題が深刻であるため大規模な対策は打ち出しづらい。

 消費者心理は悪化し、半導体、自動車部品など輸入も減少基調だ。

 外需に関しても環境は厳しい。先端分野での米中対立、世界的なスマホやパソコンの出荷台数減少などによって、輸出減少は鮮明だ。

盛り返す展開は見えない

 また、労働コストの上昇や政策に関する不透明感の高まりなどを背景に、中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。

 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている。

 若年層を中心とする雇用、所得環境の悪化懸念を背景に、共産党政権が本格的に不良債権処理を進めることも容易ではない。

 1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる。

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最終更新:8/14(月) 5:02

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