日本大百科全書(ニッポニカ) 「オードブル」の意味・わかりやすい解説
オードブル
おーどぶる
hors-d’œuvre フランス語
おもな料理が供される前に勧められる小品料理の総称で、一般に前菜と訳されている。イギリス、アメリカではアペタイザーappetizer、ロシアではザクースカzakuskaとよばれている。中国料理のチエンツァイ(前菜)もオードブルの類に入れられる。
ギリシア・ローマの古代からあったものとは考えられない。かつてロシアでは会食の前に別室で酒(ウォツカ)を飲む習慣があり、そこで突き出しに出される料理を、しばしばフランスの名司厨(しちゅう)長を呼んでつくらせた。ロシア前菜はこれらの人々によって完成されたという。フランスの前菜は、フランスの家庭から出てきたといわれる。家庭で肉は昼と夕の分をまとめて買い、それが余ることがあると、翌日の昼にはそれがコールドミートとなる。これを人数分に切り分けるが、これだけでは寂しいので、貯蔵品のラディッシュ、オリーブ、チョロギ、ピクルス、ニシンの冷薫、カビィヤール(キャビア)、アンチョビーなど手持ち材料で趣(おもむき)を加える。これが冷前菜である。これに対して、一度火を通した残り物その他を利用して温かく調理した温前菜もある。フランスでは、このように前日の残り物を巧みに利用して、昼食時に勤めから帰ってくる主人に供した。近年は目で見て、舌で味わうことにより食欲をそそるようにつくるようになった。小さく美しい形、繊細な味、巧みな材料の取り合わせ、色彩豊かな盛付け、材料の重複を避けるなど、細かい配慮を必要とする。日本では宴会料理がレストラン、ホテルなどで独自に発達し、昼夜の別なく、献立の最初に供されることが多い。カクテルパーティーのとき、つまみとして少量が独立して供されることもある。
[小林文子]
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冷前菜
一品料理として用いられる代表的なものに、生カキの殻付き、キャビア、フォアグラ、エスカルゴ、メロンなどがある。
盛合せ前菜(数種を盛り合わせるもの)には次のようなものがある。
(1)野菜類 トマト、セロリ、キュウリ、ビート、ラディッシュ、アスパラガス、アーティチョーク、マッシュルーム、生シイタケなど。
(2)果物 メロン、パイナップル、グレープフルーツ、アボカド、リンゴ、パパイヤなど。
(3)魚貝類 生で食べるムールガイ、ウニ、アカガイ、アワビ、ミルガイなどのほか、ソースで和(あ)えて用いるエビ、カニ、小魚、ワカサギ、キス、マリネにするニシン、サケ、ワカサギ、キス、ハゼと種類が多い。また、塩漬けのイクラ、キャビア、アンチョビー、缶詰のオイルサーディン、薫製のサケ、ウナギ、カキ、マスも使う。ゼリー寄せではイセエビ、クルマエビなど。
(4)肉類 ローストポーク、ローストチキンに、加工品のハム、ベーコン、ソーセージなど。
これらのほかにウズラ卵や鶏卵、各種のチーズやピクルスなど、盛り合わせるものは限りなくあって、変化に富んだ冷前菜ができる。
[小林文子]
温前菜
温前菜は冷前菜と異なり、軽い肉料理、揚げ物、煮物、焼き物がある。おもな温前菜を次にあげる。
(1)ブッシェbouchée パイ皮を一口大に焼いたものに、ソースで和えた鶏肉、エビ、魚などのすり身を詰めた料理。
(2)ブロシェットbrochette 肉などを串(くし)に刺して焼く料理。
(3)クロケットcroquette エビ、カニ、白身の魚、鶏肉、ジャガイモ、その他の野菜などをホワイトソースで和え、小形のコルク栓形に整えてフライにしたもの。形は好みで丸形、俵形など自由である。
(4)バルケットbarquette タルト型にパイ生地(きじ)を敷き、中にソースで和えた魚、エビ、ハムなどを入れて焼いた料理。
(5)コキーユ(コキール)coquille ホタテガイの殻に入れて焼いた料理で、コキーユとはホタテガイのこと。
(6)カナッペcanapé 長方形にかたどった食パンに、調理した材料をのせたもので、のせる材料によってその名前を料理名とする。
[小林文子]
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千利休(せんのりきゅう)のことばのように、ごく冷たいものは冷たく、温かい料理はごく温かく供することが肝要である。前菜用に特別のガラス器、木製その他変化に富んだ器ができている。一品前菜は1品のみを供する。銘々皿にレースペーパーを敷いた上にのせて勧める。とくに生ガキなどは、大皿に砕いた氷とともに盛る。盛合せ前菜の場合は3品、5品、7品というように異なった種類の料理を、仕切りのある器に盛り合わせる。ひと目でたくさんの種類のオードブルが見渡せるように、立体的に変化に富んだ盛付けをすることが望ましい。サラドヘルパー(サラダをとるスプーンとフォーク)は金属製でないものを用いるとよい。
[小林文子]