2020.12.03
# 政治学 # 陰謀論 # ネット右翼

「右でも左でもない普通の日本人」を自認する人ほど、陰謀論を信じやすかった…!

研究が示す驚きの事実
秦 正樹 プロフィール

「在日認定」と「普通の日本人」

「普通の日本人」というレトリックとネトウヨ的言説の奇妙な相性のよさを示す現象をもう一つ説明したい。それが「在日認定」である。「在日認定」とは、メディア上で、とくに韓国や中国に味方するような発言をした芸能人やコメンテーターを「○○は在日朝鮮人だ」と勝手に「認定」することを指す。

「在日認定」された著名人は、ネット上だけでなく、所属組織への電話攻撃(いわゆる「電凸」)などの直接的な被害を受けることもある――言うまでもなく、その人が実際にどのような出自やバックグラウンドであっても、そのこと自体を批判や非難の対象とすることは明確に「差別」である。

一部の「愛国者」を自称する人々の論理では、「在日認定」とは、相手を「日本の敵」とみなすことの宣言となる。つまり、自称「愛国者」たちは、気に食わない相手を「特殊な存在」「敵」とすることで自身を(相対的に)「普通」と位置づけ、さらに「敵」への反撃は「普通の日本人」なら当然のことだと正当化しているように思われる。ここでもやはり「普通の日本人」というレトリックが、ある種の「免罪符」となっているといえよう。

筆者が知る限り、「在日認定」は、主に2010年代以降に台頭した保守系団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の主張に端を発しているように思われる。在特会は、とくに永住権を有する在日朝鮮人は不当に政治的・社会的な優遇を受けており、「普通の日本人」こそ(相対的に)不利益を被っていると主張する*1。もっとも、極端な主張をする在特会であるが、そのメンバーには「ネットで真実を見るまでは」ごくごく一般的だった人も少なくないことも知られている(樋口、2014)。

 

「みんなと同じ意見」は「普通」でない?

「普通の日本人」という意識は、ネトウヨ的言説、陰謀論の受容のしやすさと関係しているのではないか――このような問題意識から、筆者は「普通の日本人(意識)」と陰謀論の関係を検証するために、2019年3月に全国1509名を対象とするWEB調査を行った。以下では、この調査結果にもとづいて「普通の日本人(意識)」と陰謀論の関係をデータ分析を通じて明らかにしていきたい。

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