事件・事故

中1「指導死」認定まで4年 和光の遺族、苦悩語る


長男碧さんの仏前で手を合わせる父加藤健三さん=6月、和光市
 「真実が分からず苦しんだ」。2017年に私立中学1年の長男を自殺で失った和光市の加藤健三さん(51)は、教員の厳しい指導が背景にあったとの第三者委員会の認定を得るまで4年を費やした。今春から、こうした「指導死」をなくそうと活動する市民団体に加わり、学校は遺族へ丁寧に説明する必要があると訴えている。

 17年12月26日、冬休み講習で城北中(東京都板橋区)に登校した長男碧さん=当時(13)=は、母親に「今までありがとう」とメッセージを送信した後、学校近くの駅で電車に飛び込んだ。水泳に打ち込む優しい息子。「朝は笑顔で学校に向かった碧がなぜ死んでしまったのか」。加藤さんは悩んだ。

 学校の「自殺は予見できなかった」との説明に疑念が残り、詳細な調査を求めた。何度も交渉し、約1年半後に大学教授らで構成する第三者
委の開催にこぎ着けた。調査は教員の証言頼みになると懸念し、自分で弁護士に依頼して同級生らから情報を集め第三者委に伝える作業も進めた。

 調査報告書の完成は22年1月。校外から生徒に関する苦情が寄せられたのを受け、自殺当日に教員3人が「碧さんが関与した」と予断を持って本人に聞き取り調査を行い、虚偽の説明や厳しい処分の予告を交えて「自白」させようとしていたことが明らかになった。報告書は「威圧的な指導」で不適切と認定。実際に碧さんが苦情の件に関与したかどうかは確認できていない。

 また、第三者委は「学校側は極度に情報を開示しない守りの態度に入り、遺族と対立関係を深めた」と指摘。再発防止に向けて報告書を公表するよう推奨した。加藤さんもホームページなどで閲覧できる状態にすることを求めたが、学校が応じることはなかった。

 加藤さんは今年5月、市民団体の記者会見に初めて参加し「学校の対応次第で遺族は深く傷つく」と経験を明かした。

 今月には首都圏の私立大に招かれ、教職を目指す1年生向けに講演した。碧さんも生きていれば今春に大学生になっていたはず。「指導死」根絶を願ってこう伝えた。「教師にそのつもりがなくても、指導を重く受け止めて死を選ぶ子どもがいると知ってほしい」
2023/07/24 17:00:00
記事提供:埼玉新聞

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