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骨伝導じゃない「軟骨伝導」 耳をふさがないイヤフォンの新顔は、“寝ホン”にもピッタリだった

ITmedia NEWS / 2023年8月11日 14時41分

 一方軟骨伝導は、2004年に奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学の細井裕司教授が発見した、比較的新しい方式だ。そもそも耳は頭蓋骨と直結しているわけではなく、耳の付け根周りは軟骨がグルッと取り囲んでいる。耳たぶも大部分は軟骨である。

 軟骨を振動子で振動させると、外耳道の軟骨部を動かし、外耳道内に気導音が生成される。これを鼓膜で聞くわけである。一方で生まれながらに外耳道閉鎖症といった障がいを持つ方でも、軟骨の振動を軟部組織へ伝えたり、あるいは骨を振動させることで内耳へ音を伝達できる。

 すなわち補聴器としても、1つの構造で多くのパターンに応用できるということで、かねてより製品化されている。これをオーディオへ応用したのが、オーディオテクニカの「ATH-CC500BT」というわけである。ただCC500BTは装着方法が骨伝導と同じだったので、その方式の特徴がわかりにくかった。

 この7月から一般販売されたcheeroの「Otocarti LITE」は、軟骨伝導を使いながらもヘッドバンド型ではなく、ネックバンド型で登場した。ドライバには開口部がどこにもなく、小さな球体である。これを耳穴下の軟骨ポケット、医学的には珠間切痕(じゅかんせっこん)と呼ばれる部分に引っ掛けるように装着する。

 左右から圧迫されるわけでもなく、耳穴に入れるわけでもない。これまでここを使って音を聴かせるイヤホンは存在しなかったので、軟骨伝導特有の装着方法だと言える。ただドライバ部がかなり小さいので、人によっては外れやすいだろう。このため製品には、シリコン製のフィン付きカバーが4サイズ付属している。

 なおCheeroでは一般販売に先だって、クラウドファンディングで3タイプの軟骨伝導イヤホンを発売している。一般販売の第1弾は、集音器と軟骨伝導イヤホンがセットになった「Otocarti MATE」だ。

●結構広い軟骨伝導の応用範囲

 現在コンビニやスーパーのレジでは、飛沫防止のため透明のビニールシートで店員と客の間を仕切っているところも多い。役所や銀行などでも同様だ。マスク着用が任意となった今では、お互いを守るための必要な措置であるとはいえ、こうした仕切りがあることで肉声が聞こえにくくなっている。健常者でもそうなのだから、聴力が弱まった高齢者ならなおさらだろう。

 こうした事情もあり、城南信金と奈良中央信金にて、2023年4月から合計99支店の窓口にこの「Otocarti MATE」と同型のモデルを設置し、据え置きの補聴器として実証実験を行なってきた。そして7月14日には、奈良県宇陀市役所の窓口に10台、正式に導入された。さらに7月27日には、品川区警視庁大崎警察署にも導入された。

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