十割そばが簡単に? 世界初、もちもちソバを育種 のどごし香りよし
少し先だが、年末年始の楽しみといえば、年越しそばとお餅を思い浮かべる人も多いかもしれない。ソバの実はゆでても粘り気がなく、そのままだとパサパサするので、つなぎに小麦粉などを使うが、京都大や理化学研究所などのチームが、粘り気が強い「モチ性」のソバを世界で初めて開発した。簡単に「十割そば」をつくることができたという。
「もち米」「もち麦」と呼ばれるように、コメやコムギなどの穀物にはモチ性を持つ品種があるが、ソバにはない。コメやコムギほど普及しなかったため、育種の研究開発があまり進められてこなかった。
だが、世界的な人口増加で、コメとコムギ、トウモロコシの三大穀物に頼るだけでは将来、食糧不足になる懸念がある。高地でも育てられるソバなどが食糧不足を補う有望な作物の一つになると考えた研究チームは効率的に育種研究を進められるよう、ソバのゲノムを高精度に解読した。
ソバは日本では麺の「そば」として食されるが、海外では、パンやガレット、パスタなどにも使われている。また、十割そばを打つには職人の高度な技術が必要になる。研究チームは、これまでにないモチ性のソバの作出に挑んだ。
穀物の実に含まれるでんぷんには、粘り気のもとになるアミロペクチンと、粘り気にならないアミロースがある。コメやコムギなどでは、アミロースの合成にかかわる酵素をつくる遺伝子が機能しなくなることで、アミロペクチンの割合が増え、モチ性が出てくることが知られている。
ソバゲノムの解読で、ソバにはこの遺伝子が五つもあり、うち二つが実の部分で強く働いていることがわかった。そこで種子に化学薬品をかけて様々な変異を起こさせた5801個体から、二つの遺伝子が一つずつ働かなくなったものを、遺伝子解析で見つけた。それらを交配させ、二つとも機能しない個体をつくり出し、つけた実を調べたところ、モチ性を確認できた。
すでに特許を申請し、京大付属農場(京都府木津川市)で試験栽培して繰り返し収穫している。開発したモチ性ソバと、ふつうのソバの粉を混ぜると、小麦粉などがなくてもそばを簡単に打てて、ゆでても切れにくくなり、歯ごたえやのどごし、香りもよくなった。モチ性ソバは米飯のように炊けて、餅やせんべい、あられもつくれたという。
ソバゲノムの情報は、共同研…