第25回世界スカウトジャンボリー
第25回世界スカウトジャンボリー | |||
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Theme | Draw Your Dream | ||
本部所在地 | 全羅北道扶安郡セマングム | ||
国 | 韓国 | ||
座標 | 北緯35度42分56秒 東経126度35分39秒 / 北緯35.71556度 東経126.59417度 | ||
開催日 | 2023年8月1日~12日 | ||
加盟 | 世界スカウト運動機構 | ||
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ウェブサイト http://www.2023wsjkorea.org/ | |||
第25回世界スカウトジャンボリー は、2023年8月1日から12日まで韓国全羅北道の干拓地セマングムで、「優秀な韓国文化と自然環境を世界に知らせる」という名目で招致・開催されたボーイスカウト・ガールスカウトらの国際大会[1]。テーマは 「Draw Your Dream」[2] [3][4][5]。別名セマングムジャンボリー大会[6]。
ボーイスカウトの世界スカウトジャンボリーには、青少年参加者(ジャンボリー開催時点14~18歳)と成人ボランティアが参加する。成人参加者らは、成人リーダー(AL)、派遣管理チーム(CMT)メンバー、国際奉仕チーム(IST)としての役割を果たすイベントである。
参加費用は1人当たり約13万円[7]-約90万円[8][9][10]であり、159カ国4万3255人が参加した。参加者のほとんどは各自の学校でリーダーとして活動中の青少年参加者(ジャンボリー開催時点14~18歳)である[6]。最高気温が35度に達する猛暑の中で木が1本もない干拓地で約4万3000人が野営行事をさせられるという劣悪な環境と 、ぼったくり価格、熱中症患者続出、劣悪なトイレ・シャワーなど施設、食べ物不足など各種不衛生や配慮不足を含む未熟な運営に批判が殺到し、「嫌韓製造祭り」「国際的恥さらし大会」「青少年災難体験大会」「リアルイカゲーム」などと報道された[11][6][4][5][12]。
概要[編集]
今回のスカウトジャンボリー(会場セマングム野営場)は宋河珍全羅北道知事(当時)が2014年から「韓国と全北の未来像を世界青少年に見せる」と積極的招致活動を開始し、文在寅が大統領就任(2017年5月10日– 2022年5月10日)以降から、国家100大国政課題に選定など政府レベルの全面的支援を受けたことで、同年8月に開催地に決まった[13][14]。韓国政府は文在寅政権の2017年から準備しており、当初の491億ウォンから増大し、6年間で約1082億ウォン(約120億円)を投入した[14]。会場のセマングム野営場は海を埋め立てた干拓地で日陰がなく、広さは汝矣島の3倍(8.84平方km)である。太陽の光が直接降り注ぐため、大会3日目である2023年8月3日には最高気温が35度にまで上昇した[15]。
全羅北道は開催前は6年間1000億ウォン以上を投入されたジャンボリー開催で6兆ウォン(約6515億円)以上の経済効果があるとしたが、 開催後は韓国ブランド価値を高めるどころか「韓国は本当に先進国なのか」という批判に溢れる結果となった[16]。
各種トラブル・国際問題化・批判[編集]
世界スカウトジャンボリーは世界各国のボーイスカウトたちが集まるキャンプ大会であるが、全羅北道扶安郡セマングム開催の「第25回世界スカウトジャンボリー」は国際問題となった[17]。今大会は暑さ対策不十分による熱中症など体調不良者やぼったくり被害の多発、カビが生えたゆで卵など新鮮な食材の不支給、薬品在庫切れ、洪水被害の復旧不足でテントが浸水、トイレとシャワー室数不足、男女の区分けもカーテンもない男女同室丸見えシャワー室、トイレとシャワー室の不衛生、虫の多発、多様な食習慣への配慮0など各種杜撰な運営の有様が、参加者らのSNSや海外メディアなどでスカウト大会会場の劣悪な状況が伝えられ、国際的な批判を呼んだ大会となった[6][11][14][18][15]。SNSを中心に今大会には参加者や家族から批判が殺到した。世界スカウト連盟の首席広報大使が、開営式の様子をSNSにアップすると、「まともなシャワー室もトイレもないし、食べ物のデリバリーも困難」「(孫が)開幕式に出ようとしたら、満員だといわれて入り口で止められた」 「子供たちが楽しみにしていたのに、まるでデスゲーム」と外国の保護者を中心に海外から批判殺到した[18]。SNSや外国通信社の報道で、現地の劣悪な状況が拡散、保護者らの抗議の声が相次いだため[17]、今大会で1カ国としては最多の約4500人のスカウトたちを派遣しているイギリスは現地に外交官を緊急派遣した。英国外務省は韓国のジャンボリー組織委員会と韓国政府に対して、再発防止を要請した[18]。アメリカ合衆国も自国からの参加者に体調不良者が多発したため、「大使館職員が米国代表団の安全を確保するため韓国政府と直接連絡を取り合っている」「状況を注視する」と表明した[17]。チリからの参加者を引率したカタリナ・ゴンザレスは牛肉中心の食物しか提供しなかったため、ヴィーガンの人など食事ができなかったことを批判した。このように国際的イベントでは常識である、牛肉を食べられないなど様々な食習慣を持つ世界中の人々が参加するイベントということも考慮さえできなかったとの批判が相次いだ[15]。組織委員会提供のゆで卵からカビが見つかったため、韓国食品医薬品安全処が調査を開始した[15]。
運営は韓国政府機関の女性家族部・行政安全部・文化体育観光部、地方自治体全羅北道の4つであったが互いに責任を押し付けあった。 組織委員会チェ・チャンヘン事務総長(女性家族部出身)はスカウト隊員たちの熱中症が開営式時点でも多発したことについて、「自然な現象」「どの国で実施してもあり得る状況」「野外活動を覚悟し、克服するためにキャンプ生活をしている」「K-POPイベントでエネルギーを使って活動した結果、数多く発生した」と主張をした。大会主催者の一つである全羅北道は「準備に万全を期した」と主張した。地方議員ヨム・ヨンソン(共に民主党)も「ジャンボリーは避暑ではない」「参加者たちは大切に育てられてきた上に、キャンプ経験が不足している」と参加者を批判した[14]。
そもそも開催地選定(干拓地セマングム)が問題視された。大会会場のセマングムは湿度が70%を超える上に、体感温度はさらに高い場所である。その上、開催時期も真夏時期、農業用地として造成された干拓地を会場にしたため、湿気が高いのに天然の日除け空間がなく、日差しをそのまま浴びるしかない[14][17]。参加した現地のスカウト隊員たちも「全く(日除けスペースが)足りていない」と批判している[14]。参加した韓国人は現場はサウナだとし、「テントで煮え上がらないためには朝6時には起床しなければならない」と語った。中学1年生の息子を送り出した親は朝鮮日報の取材に「昨日の夜に電話で話した時、息子は泣きながら『帰りたい』と言っていた」「ジャンボリーに送り出した親たちは順番に毎日必要なものを宅配便で送っている」と話した[15]。夜間でさえもテント内は外より暑くなるため、参加者は寝れない修羅場だと朝鮮日報のインタビューに答えている。大会組織委員会によると、2023年8月2日の開営式だけで体調不良者が139人発生し、108人は熱中症患者だった[17]。開幕3日目には患者は1000人以上になった[15]。大会組織委員会によると、大会二日目の夜10時の時点で992人の患者が報告され、熱中症患者は207人(20.9%)、強い日差しでやけどを起こした患者は106人(10.7%)だった。開営式の2023年8月2日夜10時30分時点には83人のスカウト隊員が目まいで倒れた。韓国消防当局は同日夜10時54分には今大会の組織委員会に行事中止要請した[15]。
4回以上ジャンボリー大会に参加した韓国人によると、日本で同じく干拓地で行われたジャンボリー大会にも参加したが平気だったことと比較し、「15歳の時から参加しているが、今回は最悪」「セマングムで全世界の子供たちが犠牲になっている」と批判した[15]。
2023年8月5日、同日までにイギリスとアメリカ、ベルギーが予定よりも早くキャンプ場から撤収することを決定した。これを受けて、世界スカウト機構は「韓国スカウト連盟に予定より早く大会を終え、参加者が本国に戻るまで支援する案を検討するよう要求した」との声明を発表した[19][20]。
全羅北道が大会開催を周辺インフラ拡充を説得するための口実に使っていたこと[21]、費やした費用は当初予算の倍となったが、「ジャンボリー準備」として韓国女性家族部や全羅北道庁の関係者がスイス・イタリア・オーストラリア・米国などを海外視察に費やしていた。これらの海外視察自体が観光であった[22][23]。
2023年8月7日、開催期間中に台風6号が朝鮮半島に上陸し、会場に接近する恐れが出てきたことから、主催者は参加者全員(156カ国・地域、約3万6000人)を首都圏近郊の屋内施設に退避させることを決定。同日付で事実上閉幕することになった[24][25][26][27]。
最多のスカウト派遣をしたイギリスのスカウト団は日陰不足、配慮が必要隊員の食べ物不足、劣悪な衛生、不十分な医療サービスなど4つの面で「レッドライン」に違反したことを2023年8月4日の撤退理由に上げた。隊員たちはジャンボリー参加のために1人当たり約3500ポンド(約584万ウォン、64万円[28])支払ったことを明かした。大会から撤退したが、英スカウト協会準備積立金から100万ポンド(約16億6987万ウォン)を追加支出する必要となった。そのため、代表は将来の活動のための予算を支出したことで、今後3~5年間計画したことが出来なくなったことを明かした[9]。
イギリスと同じく撤退したアメリカ合衆国からの参加者は1人当たり参加費6500ドル(約90万円)を支払った。そのため、両国の父兄から批判が殺到したことが、イギリスガーディアン、BBC、ロイターで報道された。高額な参加費用を払うために多くを犠牲にした人々はインタビューで「そのお金だったら他の多くのことができただろう」と後悔を表明した。参加者の家族は「組織委員会が十分な食糧や涼しい空間などスカウトに必要な基本要件を満たしていない」と指摘し、「(韓国の大会関係者らが)全世界に謝罪することを望む」と批判した[10]。
台風を受けて、参加国のスカウトらは全撤退となったものの[29][30]、そのスカウトたちの受け入れも問題となった。韓国には大規模な人員を国家単位団体で宿泊させる規模の宿泊施設は、「大学の寮」や「企業研修院」しかなかった[29]。忠清南道はジャンボリー隊員の内約5200人を18施設に分散収容することが決まった。韓国のジャンボリー組織委員会は、洪城郡の夏休み中の恵田大学の寮に「イエメン隊員175人を割り当てる」と通知した。これを通報された恵田大学総長を含む関係者と洪城郡の郡長を含む公務員たちが休日出勤で緊急に集まり、寮の清掃と状態点検、歓迎垂れ幕とイスラム教徒向けの175人分のビュッフェ料理まで用意した。しかし、同日夜9時過ぎにそもそもイエメンからの入国したスカウトは0だったことが判明し、20万ウォン分のハラル食事が廃棄処分となった[31]。
スイス隊員乗せたバスが順天でバスと衝突する交通事故を起こし、3人が負傷した[32]。
関連項目[編集]
- 韓国グランプリ-同じく、韓国誘致・開催で批判を呼んだ国際イベント。
- 2002 FIFAワールドカップ-日本の誘致開始後割り込んで韓国誘致・部分開催に持ち込み、審判買収疑惑批判を呼んだ国際イベント。
引用[編集]
- ^ “【社説】猛暑で「生存ゲーム」に 恥をさらした韓国スカウト大会”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月4日閲覧。
- ^ “2023 SaeManGeum 25th World Scout Jamboree Official Site”. 2023 SaeManGeum 25th WorldScout Jamboree Official Site. Korea Scout Association. 2022年3月1日閲覧。
- ^ Ji-hye, Jun. “World Scout Jamboree in Korea becomes nightmare due to mounting heat illnesses, hygiene issues”. The Korea Times. 2023年8月3日閲覧。
- ^ a b “「国際的恥さらし…スカウト大会の縮小・中断検討を」 攻勢強める韓国野党”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月4日閲覧。
- ^ a b “「水がたまったキャンプ場で漂流」 揶揄の対象になった韓国スカウト大会…コロナ感染拡大も”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月4日閲覧。
- ^ a b c d “「腐った卵」「ビニールで仕切られたトイレ」…「嫌韓製造」の不名誉を被ったジャンボリー”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月4日閲覧。
- ^ 900ドル
- ^ イギリスからの参加者の費用は1人当たり600万ウォン(約60万円)、アメリカ合衆国からの参加者の費用は6500ドル(約90万円)。
- ^ a b “英스카우트 "폭염, 위생, 음식, 의료까지…잼버리 안전하지 않았다"” (朝鮮語). n.news.naver.com. 2023年8月9日閲覧。
- ^ a b 이유나. “"한국, 전세계에 사과하길" 잼버리 사태에 美·英 학부모 분노” (朝鮮語). n.news.naver.com. 2023年8月9日閲覧。
- ^ a b “猛暑・やけど虫…リアル生存ゲームになった韓国スカウト大会(1)”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月4日閲覧。
- ^ 箱田哲也 (2023年8月5日). “まるで「イカゲーム」? 混乱の韓国・スカウトジャンボリー続行へ”. 朝日新聞. 2023年8月8日閲覧。
- ^ “猛暑・やけど虫…リアル生存ゲームになった韓国スカウト大会(2)”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月4日閲覧。
- ^ a b c d e f 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 (2023年8月4日). “ずさんな準備と気象異変、世界スカウトジャンボリー韓国組織委は責任逃れに終始「もともと克己訓練」”. www.chosunonline.com. 2023年8月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 (2023年8月4日). “6年準備したのに…韓国開催「世界スカウトジャンボリー」 シャワーは不衛生、トイレは不足、コンビニはぼったくり”. www.chosunonline.com. 2023年8月4日閲覧。
- ^ “<世界ジャンボリー>「6兆ウォンの経済効果」だったのに…全羅北道いまは「マイナス」を心配(1)”. ライブドアニュース. 2023年8月9日閲覧。
- ^ a b c d e 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 (2023年8月4日). “全世界の心配の種になった韓国開催「世界スカウトジャンボリー」”. www.chosunonline.com. 2023年8月4日閲覧。
- ^ a b c チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版 (2023年8月3日). “熱中症続出のスカウト世界大会、「まるでデスゲーム」と海外から批判殺到…英国は外交官を緊急派遣/全羅北道【独自】”. www.chosunonline.com. 2023年8月4日閲覧。
- ^ 金泰均 (2023年8月5日). “韓国で開催中のボーイスカウト祭典 英・米が撤収決定”. 聯合ニュース. 2023年8月5日閲覧。
- ^ 韓国経済新聞 (2023年8月5日). “韓国スカウト大会が中断?…英国・米国にベルギーまで次々と撤収”. 中央日報. 2023年8月8日閲覧。
- ^ 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 (2023年8月8日). “全羅北道、「世界スカウトジャンボリー開催」を口実にセマングムのインフラ拡充”. www.chosunonline.com. 2023年8月9日閲覧。
- ^ “ずさん運営の韓国開催「世界スカウトジャンボリー」、予算100億円は何に使った? ようやく氷水が隊員に行き渡る”. www.chosunonline.com. 2023年8月9日閲覧。
- ^ “「セマングム世界スカウトジャンボリー担当公務員、8年間で海外出張99回」 韓国与党代表が精査を要求”. www.chosunonline.com. 2023年8月9日閲覧。
- ^ 桜井紀雄 (2023年8月7日). “韓国、スカウトの祭典が撤収の事態に ずさん対応に批判”. 産経新聞. 2023年8月8日閲覧。
- ^ 金泰均 (2023年8月7日). “世界スカウト大会 早期撤収を受け尹大統領が「非常対策班」設置指示”. 聯合ニュース. 2023年8月8日閲覧。
- ^ キム・ヨンヒ、チェ・ユンテ、キム・ミナ (2023年8月8日). “ふらついた韓国ジャンボリー、事実上「早期閉幕」…世界が見ていた”. ハンギョレ新聞. 2023年8月8日閲覧。
- ^ “韓国開催の世界スカウトジャンボリー、台風で避難 衛生状態や食事に懸念”. ロイター通信 (2023年8月8日). 2023年8月8日閲覧。
- ^ 「台風6号で韓国開催のジャンボリーが早期終了に 暑さや衛生面でも問題」『BBCニュース』。2023年8月9日閲覧。
- ^ a b “캠핑장 불 꺼지자 남은 불씨는 K팝뿐…정부 “잼버리 더 확대되는 것”” (朝鮮語). n.news.naver.com. 2023年8月9日閲覧。
- ^ “【写真】「全員早期撤収」決定…閑散としているジャンボリー野営場の様子”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月9日閲覧。
- ^ 기자, 홍성 이천열. “‘입국도 안한 잼버리 대원’ 배정받은 대학… “출장음식 모두 폐기했다”” (朝鮮語). n.news.naver.com. 2023年8月9日閲覧。
- ^ “順天でジャンボリー大会スイス隊員乗せたバスが交通事故…3人軽傷”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年8月9日閲覧。