男女の賃金格差が夫婦関係にも影響

太田さんは、社会の構造にある問題が夫婦関係に影響しているのだと指摘する。

なかでも大きいのは、夫婦間の収入差ですね。それぞれの家庭の事情以上に、日本では女性の多くが非正規労働者として働くしかない状況にあり、男女間の賃金格差が大きいという状態が長くつづいていて、そのような社会構造が夫婦間にも反映されています。経済力が強い側は、家庭内でもその力を濫用して相手を支配しようと思えばできるわけです」

「誰のおかげで食えていると思っているんだ!」というセリフは、決して過去のものではないと太田さんは言う。

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「社会にこうした構造がある以上、夫婦間の対等性を保つのは個々の努力だけではむずかしいところもあるかもしれませんが、それでも権力があるほうが、家庭内に資本主義の論理を持ち込まない、それから権力を濫用しないという意識をどれだけ強く持てるか――ここにかかっていると思います」

それは決して、簡単なことではない。優位な立場にいる側ほどその優位性に気づきにくい。しかし対等なパートナーシップを築き、良好な夫婦関係を維持したいのであれば、そこから始め、日々の生活のなかで気をつけていくしかないということだろう。その秘訣は、『50歳からの性教育』で太田さんの担当講にあるとおり、「相手への尊重と傾聴」が不可欠だ。