先述した改正刑法において、もうひとつ注目したいのが「撮影罪」の新設だ。誰もがカメラ付きのスマートフォンを持ち、小型カメラをネット通販で購入できる時代、さらにはそれをインターネットで不特定多数に拡散できる時代が到来して長いが、これまでは法律が追いついていなかった。
「盗撮という犯罪は、加害者側の軽い気持ちと、撮られた側がその後ずっと抱きつづけるであろう恐怖との落差が大きいのが特徴です。一度ネットで拡散されたら、誰が見ているかわからないし、一生消せない可能性もある。
道で男性とすれ違うたび『この人も私の裸を見たのかも』と思い怖くて外出できなくなった、という被害者もいます。私が相談を受けた女性は、証拠として夫が撮影した動画をいくつか抑えていましたが、ほかにもあるのではないかという不安をずっと抱えていました」
盗撮に同意など、あろうはずもない。
「性的同意」が成立する条件
ここであらためて、性的同意と対等性について考えたい。性的同意は、以下の条件がクリアした状況で成立する。
・NOと言える環境が整っている(非強制性)
・社会的地位や力関係に左右されない対等な関係である(対等性)
・1つの行為への同意は他の行為への同意を意味せず、その都度の確認が必要(非継続性)
※いつでも「やめて」と言える
・その行為が「したい」という明確で積極的な同意がある(明確性)
※NPO法人ピルコンHP「性的同意」より
自分がセックスしたくないときに「NO」を言えない関係性は、そもそも対等ではないということだ。
「生活のあらゆるシーンで夫に『NO』を言えない妻は、多いです。DVの被害で相談に来られる方を見ていると、身体的、精神的、経済的、性的DVのうちいくつかが横断して行われていることが多いと感じます。内閣府の『男女間の暴力に関する調査(令和2年)』でも、配偶者からの暴力は複数の種類が重複していることがしばしばあるとわかります。
殴る蹴るをする夫がセックスのときだけ丁寧に寄り添うとは、考えにくいですよね。まず対等でない関係性が根本にあり、それがいろんな形態の暴力として表出しているということでしょう」