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若者はあえて「ブラック企業」で働いてみるべき訳 「ビッグモーター」の不祥事を「資本論」で考える

東洋経済オンライン / 2023年8月8日 9時0分

繰り返される企業不祥事が、必然的な現象である理由とは(写真:SASA/PIXTA)

ビッグモーターの不祥事が世間を騒がせています。兼重宏行前社長が「ゴルフを愛する人に対する冒涜」云々と発言したというので、クルマ屋だけにてっきりフォルクスワーゲン・ゴルフがどうかしたのかと思いきや、ゴルフボールで顧客の車を故意に傷つけていたというのですから、想像の斜め上を行く話でした。

保険金の不正請求に加え、除草剤を用いた店舗前街路樹の破壊の疑惑も濃厚になってきています。ワンマン社長の支配の下、社員は無理なノルマを強要され、違法な命令も受けていたと見られますから、ビッグモーターは典型的なブラック企業であると言えるでしょう。

いまさら驚く話なのか

しかしまあ、こうした話に私たちはいまさら驚くでしょうか? SDGsだのダイバーシティだの、この世の中を倫理的に向上させようという掛け声が四六時中鳴り響いている一方で、企業の不祥事は後を絶ちません。

「チャレンジ」と称した粉飾決算によりボロボロになった東芝は、部門の切り売りを繰り返すなかで再建の目途は立っておらず、かつ粉飾決算を引き起こした旧経営陣のうち、逮捕された者は誰もいません。あるいは、創業者の性加害問題に揺れるジャニーズ事務所にしても、組織ぐるみでジャニー喜多川氏の乱行を許容・助長してきたことは明らかであるにもかかわらず、所属タレントは何事もなかったかのごとくに仕事を続けています。そして、津波対策を怠って大量の放射能をブチ撒いたにもかかわらず、旧経営陣の誰もいまのところ有罪宣告されてない東京電力こそ、企業不祥事番付の横綱です。ビジネス倫理だのコンプライアンスだのといった言葉は、ただひたすら空しいとしか言いようがありません。

だから、ビッグモーターの件も、せいぜい五十歩百歩にしか見えないのです。不正行為を社会的にもみ消すことができるほど大きな権力を持つ企業と、それほどの力を持たない企業があるだけだ、と考えるべきではないでしょうか。してみれば、企業の不祥事とは例外的な嘆かわしい現象なのではなく、資本主義的に運営される企業とは、本質的に倫理的ではあり得ない存在なのであって、繰り返される不祥事は必然的な現象なのではないでしょうか。

セオドア・ルーズベルトも朝食を吐き出す

現に、『ザ・コーポレーション』を書いたカナダの法学者、ジョエル・ベイカンは、企業を人間に例えるならばサイコパスである、と言い切っています。いわく、「精神を病む生き物である企業は、他者を傷つけないように道徳に従って行動することも、そうした道徳を理解することもできない」(『ザ・コーポレーション』早川書房、81頁)。ゆえに、企業には内在的な遵法意識はないのであって、法を守ることは費用対効果の問題になります。法を破ることによって得られる利益が、それがもたらす損害を上回るならば、企業自身に法を尊重する動機はないのです。

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