日立製作所、「シリコン式」量子コンピューターに新手法
日立製作所は12日、「シリコン方式」と呼ばれる量子コンピューターの高性能化に向け、基本素子となる「量子ビット」を効率よく制御する手法を考案したと発表した。配線や回路の簡素化につながり、計算に必要な量子ビットを大幅に増やすのに役立つとみている。
量子コンピューターは極低温に冷やした「超電導」の技術を使う方式が主流だ。シリコン方式は超電導タイプに比べて開発は遅れているものの、既存の半導体技術を活用できる。将来の大規模集積化や高性能化には有利な面があるとされている。日立はシリコン方式の研究開発に取り組んでいる。
日立が開発する方式ではシリコン素子中に微小な箱を作り、電子1個をとじ込めることで計算に必要な量子ビットを実現する。従来は箱の中に電子を固定することが前提だったが、考案した新手法では必要に応じて電子を移動させることで効率よく演算などに利用できる。
量子ビットを固定する従来方式に比べて配線や回路が削減され、構造がシンプルになる利点が見込める。隣接する量子ビットの間で「クロストーク」と呼ばれるエラーが生じるのを抑制する効果も期待できる。量子ビットの数を大幅に増やし、量子コンピューターを高性能化するのに役立つとみている。