公務員試験を受験するのに、専門試験も勉強するのは大変そう。

でも専門科目の勉強をしなかったら、受験できるところが少なくてヤバイ?

こんなジレンマに悶絶されている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

本稿では、教養のみで受験対策するメリット・デメリットについて徹底分析したいと思います。

これでジレンマから救出させていただきます!

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教養試験のみで受験できる試験は?

市役所試験

まず、教養試験のみで受験できる職種といえば、市役所試験が思い浮かびます。

市役所試験とは、政令指定都市を除く市役所の採用試験をいいます。

政令指定都市とは、地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のことです。

2023年2月現在、全国には772もの市役所があって、そのうち、政令指定都市は札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、川崎市、横浜市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、九州市、福岡市、熊本市の20市です。

政令指定都市の居住人口は全人口の約2割を占めています。

参考:指定都市市長会

まず、全国に772もある市役所は、いくつかの市役所ごとにまとまって同一日程で同じ試験問題で試験を実施しています。

併願の防止と、試験問題の作成経費を抑えるためですね。

ほとんどの道府県と政令指定都市(地方上級とよばれます)は毎年同一日程(6月第4日曜)に一次試験を実施しています。

この地方上級と同じ日に試験を実施する市役所試験もあります。

市役所試験は、A日程〜D日程と名前がつけて呼ばれますが、これは一次試験(筆記試験)の日程の違いからくる名称です。

市役所試験の一次試験の時期は、

  • 市役所試験A日程 6月第4日曜(地方上級と同一日程)
  • 市役所試験B日程 7月第2日曜
  • 市役所試験C日程 9月第3日曜
  • 市役所試験D日程 10月第3日曜

となっています。

同一日程で実施される試験は、同じ試験問題を使用するのが通例です。

ただ例外もいくつかあって、上記日程以外に試験を実施する市役所もありますし、規模の小さい市役所だと隔年採用になっているところもあります。

A日程は、地方上級と同じ日に試験が実施される市役所で、県庁所在地など比較的規模の大きい市役所がこの日に試験を実施しています。

なので、県庁との併願ができません。

試験問題は、教養試験・専門試験ともに地方上級と同じ試験問題を使用するので、教養試験だけで受験できないことになります。

ただ、A日程の中には、教養試験だけを実施して、専門試験を実施していない市役所試験もあります。

市役所試験のほとんどが、C日程で実施され、概ね教養試験だけで実施されるのですが、中には専門試験を課す市役所もありますし、独自の試験形式を採用する市役所もあります。

A~D日程いずれの試験も、難易度に差はありません。

違いといえば、科目による出題数が若干違っているのと、市役所によっては日程のいかんにかかわらず専門試験を課すところもあるという点です。

ただ、近年の公務員試験の潮流として、民間企業と併願しやすいように教養試験のみで実施する市役所が増加する傾向にあります。

いずれにせよ、市役所試験は規模も小さくフットワークが軽いので、試験日や試験内容が変更されやすく、受験の際には必ず、当該市役所の受験案内を確認するようにしてください。

【市役所試験のまとめ】
①A~D日程のどれなのか、これら以外なのか、日程を確認することが重要
②試験の難易度は概ねどこも同じ
③市役所試験のなかにも専門試験を実施するものもある
④市役所試験は毎年同じ日程・内容で試験が実施されるとは限らない

国立大学法人等職員採用試験

厳密には公務員でなく、準公務員(公務員と同じような待遇を受ける)ですが、国立大学法人等職員採用試験も教養試験のみで受験が可能です。

一次試験(筆記試験)は、例年7月第1日曜に実施され、試験科目は教養択一のみです。

国立大学法人等とは、国立大学法人、独立行政法人国立高等専門学校機構、大学共同利用機関法人、一部の独立行政法人及び放送大学学園のことをいいます。

国立大学法人等職員採用試験はこれらの機関で働く職員を採用するための統一筆記試験です。

面接試験は、機関ごとに個別に実施されます。

募集のある機関は年によって異なります。

また、全国を7ブロックに分けて採用試験を実施し、ブロック内にある機関の面接を受けることになり、異なるブロックを併願することはできません。

国家一般職と同じようなシステムを採用しているわけですね。

さらに、全国の自治体には、公立大学法人があり、これらの採用試験も教養のみで実施されるところがほとんどです。

実施日程は、各公立法人によってことなります。

各自治体の「特別枠」「新方式」

民間企業へ流れる人材を確保するために、従来の試験形態とは異なって、筆記試験の負担の少ない独自の採用試験を実施する自治体が年々増加しています。

「特別枠」「新方式」などの試験がそれです。

大阪府や大阪市のように、そもそもの試験形態をドラスチックに変更し、地方上級とは別日程で民間企業同様の形態で採用試験を実施するところもあります。

多くは、これまでの採用形態は維持しつつ、採用予定人数のうちの何人かを「特別枠」「新方式」で募集しています。

【2023年度】各自治体の特別枠・新方式の日程

日程特別枠・新方式
3/24(金)長野県 大卒程度行政B〔SPI方式〕
4月上旬佐賀県「特別枠・スポーツ特別枠」
4/1(土)福岡市(行政「特別枠」)
秋田県(早期枠)〔SPI方式〕
4/3(月)横浜市(特別実施枠)〔SPI方式〕
4/4(火)群馬県(行政事務B)〔SPI方式〕
4/6(木)福井県Ⅰ種(行政)〔アピール枠〕
4/9(日)山口県「チャレンジ型」
4/16(日)鹿児島県(大学卒業程度「特別枠」)
岡山県A「アピール型」
4/23(日)岩手県Ⅰ種(アピール試験型)
4/30(日)特別区Ⅰ類(一般方式・新方式)
東京都Ⅰ類B(一般方式・新方式)
5/1(月)奈良県Ⅰ種(行政「アピール型」)

※ここにあげたものは一例です。受験の際には、自治体の受験案内を確認するようにしてください。

教養のみで受験できる職種のポイント
1 市役所が代表的だが、専門試験を課す市役所もあるのに注意
2 国立大学法人等職員や各自治体の公立大学法人なども狙い目
3 地方上級の中には「特別枠」「新方式」を設けるところが増えている
4 教養試験のみで受験することのメリット・デメリットを考える

「教養のみ」で受験するメリット・デメリット

ここまで読んでくださって、それでも「やっぱり教養のみで受験するか専門も勉強するか迷っている」方もいらっしゃることでしょう。

結論から申し上げて、どちらにすべきかは、一概にはいえません。

  1. 筆記試験までの日数
  2. 日々確保できる勉強時間の長さ
  3. 働きたい職種
  4. これまでの勉強の経験・程度

これらの要素を勘案して決めるしかありません。

ここでは、教養のみで受験するメリット・デメリットを挙げておきますので、判断の材料としてください。

教養のみで受験するメリット

なんといっても筆記試験の負担が軽くなります。

専門試験の勉強時間は教養試験の倍は必要なのが通例です。

なので、教養試験のみで受験する場合に比べて3倍の勉強時間がかかると考えていいでしょう。

もっとも、大学受験などで教養科目の知識が十分だという方であれば、勉強時間は専門科目だけに割くことができますが、それでも負担が増えるのは事実です。

教養試験のみで受験するデメリット

併願先が少なくなる

教養のみだと、先にご紹介した市役所試験などは受験できますが、国家一般職、国税専門官などの大卒程度の国家公務員試験はほとんど受験できません。

ただ、併願をリスクヘッジのために考えるというなら、専門の勉強に時間が取られるというリスクもあるので、天秤にかける必要がありますね。

筆者の持論ですが、併願はあくまで「可能性をひろげるため」にするものです。

公務員と一言でいっても、職種によって働く場所・仕事の内容は様々です。

特に、何がやりたいのかはっきりわかっていない場合は、様々な職種を受験して面接を受けることによって、自分のやりたいことが定まってくることもあります。

実際、複数の試験に合格して、そこで初めて自分がやりたいことに気づいて、第一志望が変化する人はめずらしくありません。

そういった意味で併願の可能性を広げておくことは、決して悪いことではないでしょう。

でも、体は一つです。

どれだけ内定をもらおうが、働くことができるのは一つだけです。

就職活動をしていて、幸せなのは、たくさん内定をもらうことでも、第一志望先から内定をもらうことでもありません。

自分が幸せになる仕事に出会えることです。

もし、教養試験のみで受験できる職種にやりたいことがあるのであれば、あまり迷わず集中するのがいいかもしれません。

倍率が高いのが一般的

「特別枠」「新方式」は、一般方式(デフォルトの受験形態)よりも倍率が高めになるのが通例です。

それはそうですよね、自治体が「特別枠」などを設ける目的は、これまで民間企業と併願しなかったような人を呼び込むために設けられた受験形態ですから。

ただ、公務員試験における倍率はあまり気にする必要はありません。

記念受験する人も少なくありませんし、筆記試験の倍率は、人気民間企業に比べれば微々たるものです。

実際の筆記試験の倍率は2~3倍程度ですから心配無用です。

公務員試験は面接試験重視の傾向にあることにも注意

これはデメリットともメリットとも言い難いので、別に論じます。

「新方式」「特別枠」、大阪市や大阪府のような試験形式は、民間企業と同様に、面接重視で採用試験を実施することが目的のひとつです。

市役所試験も、願書提出時から簡単な面談を行うところもあるくらいです。

これは、面接が得意な方にはメリットになりますが、面接が苦手な方にはデメリットと言えるかもしれません。

もっとも、公務員試験といえども就職試験なので、人物本位・面接重視なのはどの試験も共通で、最近とくにその傾向は増していますので、教養試験のみでの受験に特有の問題ともいえないかもしれません。

ただ、筆記試験にかける時間が少なくてすむ分、面接対策には十分な時間をかけて準備することができますし、必要です。

加えて、教養試験だけで受験できる職種を選ぶ層は、民間と併願している、働きながら受験準備している、といった人が多数であることが想定されます。

つまり、面接スキルが高い人が多そうだとうことです。

したがって、面接のレベルは高くなると考えて入念な準備をしておくべきです。

この点、教養試験のみであれば、勉強時間が少なくてすむのがメリットになりますね。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

後は素早く決断して、迷わず合格に向かって突き進んで内定を勝ち取ってください。

このコラムが少しでもお役にたったなら幸甚です。

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この記事の著者

小林 美也子講師 (講師紹介はこちら


大手資格予備校・地方自治体・企業・教育機関等様々な場所で,長年にわたり公務員試験,宅建試験の受験指導,職員研修を行う。

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