2022年末に韓国に出張した。サムギョプサルを食べに入店すると、ベトナム人らしき女性が迎えてくれた。どこから来たのか、と知人が訊くと、やはりベトナム人学生で情報工学を学びに来たという。「日本は選ぼうとしませんでしたか」と訊くと「韓国しかありません」と答えてくれた。「私の友だちも韓国に来ています」。外国人で日本語を学ぶ人が少なくなっている、ともよく聞く。
日本で働いてくれる外国人労働者数を見てみる。厚生労働省は5年間の推移を発表しており、2017年の128万人から2021年の173万人と増えている。しかし対前年増加率はかなり減少している。コロナ禍だったとはいえ、2021年は0・2%となり頭打ちになっている。
円安、パワハラ動画拡散、日系企業のブランド力…ベトナム人労働者の日本離れが進んでいる3つの理由
2021年初頭から日本は絶望的なモノ不足に陥った。そしてそれはモノだけでなく、労働力としての「人材不足」も顕著となってきている。『買い負ける日本』 (幻冬舎) より一部抜粋・再構成してお届けする。
買い負ける日本#1
日本のパワハラ動画は拡散されている
「もちろん、それはあるかもしれません。でも実習生から聞く限り、昔に比べて労働環境は改善しています。労働環境が悪いから日本を希望しないのだったら、以前から少ないはずです。私が候補者と話した感じでは、やはり賃金として魅力がなくなっていますね。
円安がそれに拍車をかけました。仕送りすると目減りする。私たちは、候補者に為替は変動するから、現時点の為替レートだけで決めないように伝えるんですが、そもそも為替を詳しく知らない候補者もいます。日本の魅力も伝えます。ただ、彼ら、彼女らからすると、出稼ぎなのでお金は重要です」
前出のベトナム人幹部は最後に、かつて隆盛を極めた日本企業向け接待交際費の予算はほぼなくなったといい、現在は現地ベトナムでの食事くらいは自腹で払っていると教えてくれた。
外国人労働者・技能実習生の雇用や受け入れについて研修やコンサルティングを行う関係者は言う。
「これは差別ではないものの、やはり歴然としてアジアの国の地方からやって来る人か都会からやって来る人かでレベルが違うのが現実です。そして日本にやって来る人は地方からが多い。日本の魅力度が低下しているのは事実でしょう。コロナ禍で面接がオンラインになったので見極めも難しいですからね。
またベトナムにはサムスンのように外国から有名企業が進出しているのでベトナム内での知名度が高いんですね。日本はさほど優位性がない。さらに日本に技能実習生として行っても働ける年数が短いでしょう。さらに日本の職場でベトナム人がパワハラを受けた動画が一瞬で拡散されます。あんな酷いことをする日本の職場は一部ですよ。でも、一部でも日本を敬遠するには十分です」
文/坂口孝則
『買い負ける日本』(幻冬舎)
坂口孝則
2023年7月26日
¥1,034
248ページ
978-4-344-98698-5
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著になっている。日本企業は、買価が安く、購買量が少なく、スピードも遅いのに、過剰に高品質を要求するのが原因。過去の成功体験を引きずるうちに、日本企業は客にするメリットのない存在になったのだ。調達のスペシャリストが目撃した絶望的なモノ不足と現場の悲鳴。生々しい事例とともに、機能不全に陥った日本企業の惨状を暴く。
新着記事
【こち亀】銭湯の入浴料は?
「14歳未満は人を殺しても刑務所には入らないって本当なんですか?」10代の少女2人が小学2年生を殺害した「仁川小学生殺害事件」に見る韓国の不条理な少年法とは
続・韓国カルチャー 描かれた「歴史」と社会の変化 #1
「ホリエモンがフジテレビの経営者になっていたら、日本のテレビ局は変わっていた」RIZINをつくった男が語る「地上波の未来」と「自身の引き際」
負ける勇気を持って勝ちに行け! #2
ヒグマは本来は「人を避けてくれる」はずなのに…胃の中からは男性と思われる肉片と骨片。クマが増えている日本で『バッタリ遭遇』を避けるためには
クマは駆除ありきの『害獣』なのか!?〈ヒグマ編〉