ヤクザとのトラブルをきっかけに、豊川誕は覚醒剤中毒に陥った。1998年から逮捕・服役を繰り返し、自殺未遂するまでに精神を病んだ。だが豊川は、同じ薬物中毒から立ち直ったある俳優の姿を見て発奮。歌手として再びステージに上がることを決意する。
覚醒剤ってのは本当に怖いものですよ。シャブにハマッていた時のことを思いだすと気分が沈んでくる。だから、あまり当時のことは話したくないんです。
恩人のメリー喜多川さんやジャニーズ時代の友人たち、多くの人が僕の再起を信じて支援をくださいましたが、彼らを何度も裏切って刑務所に行ったりきたりを繰り返しました。自暴自棄になって自殺未遂を図ったこともあります。刑務所での労務時間中、刑務官が目を離したすきに内装工事中の刑務所の足場を駆け上がりました。そのまま飛び降りようとしましたが、刑務官に取り押さえられました。
それでもシャブの誘惑には勝てませんでした。
最後に入ったのは新潟の刑務所。懲役のベテランでも「絶対行きたくない」と言う厳しい所です。そこの看守に言われました。「地獄を見ないかぎり、おまえはまたここに戻ってくる」って。
シャブ断ちを決意したのは、その時です。依存症治療のために医療刑務所に入院しました。病院では睡眠薬などの向精神薬を大量に飲まされました。服用を続けると、目まいがして吐き気に襲われる。吐瀉物にまみれてもだえ苦しむ地獄の日々でした。
そんな辛いリハビリ生活での希望は、アメリカの俳優、ジョニー・デップの活躍でした。10代で深刻な薬物中毒に陥り、どん底から立ち直った彼の姿を見て「復活したい」と真剣に考えるようになったのです。
刑務所を出てからは、トラック運転手や土木作業員など、いろいろな仕事をしました。現在は歌手としての再起をかけ、ライブハウスや健康ランドのステージを回る毎日です。1月には、28年ぶりの新曲「愛は咲き頃」も出しました。いつか僕の歌で、メリーさんやジャニーさん、ジャニーズの仲間に恩返しができればいいですね。 (おわり)
12月3日午後7時から、東京・浅草のライブハウス「ちゃま」で公演。同24日のクリスマスショーにも出演する。問い合わせは(電)03・5828・6333。