長野県松本市の中心部にある伊勢町商店街の組合が人手不足で解散し、人気イベントも終了する。近隣の商業施設「松本パルコ」の閉店も決まり、「街の存在意義が問われている」と危機感を募らせる。復活へ期待するのが個性的で魅力的な店を出す移住者。もっと新しい血を入れるべきだと訴える。

[伊勢町商店街振興組合元理事長]
宮坂 賢吾氏
1965年松本市生まれ。大学進学を機に上京。そのまま東京で就職し、音楽業界で働いたのち、40歳でUターン。家業の一つだった銭湯を引き継いだ。2019年に伊勢町商店街振興組合理事長に就き、23年3月に同組合解散を決めた。

 松本駅近くにある伊勢町商店街振興組合を解散しました。解散の理由は単純です。マンパワーがなくなったのです。組合員は減少し、組合の会議をはじめ、何かイベントをやるにも人数がそろわない状況でした。このまま組合を続けてもビジョンが描けないという議論が2022年の4月くらいから出ていました。

 私は40歳で松本にUターンし、組合に参加しました。年々組合員が減り、最終的に理事長になったのですが、その時には既に同世代や次世代の役員は不在。「街のためにやれることを1人でも頑張ればいい」と思ってやってはいましたが、事務局員が倒れ、本当に1人ですべてをやった時には限界を感じました。組織は「誰かがやってくれるだろう」と人任せになると機能しなくなります。次世代の人たちにも確認をとりましたが、「今(組合を)託されても何もできない」といった反応でした。であれば、無理に任せるよりも、今のうちの解散がいいという結論に達しました。

組合員の多くは商店を営まず

 地権者の組合員といっても、ほとんどが今は商店を営んでおらず、他に勤めていたり、住所は別だったりします。私自身、かつては実家の商店が伊勢町にありましたが、今は住んでいません。皆さん自分の生活があり、街づくりのための時間が割けないのです。23年に入り「組合を解散します」という話を理事会・役員会などを通して伝え、3月25日に開いた臨時総会で3分の2以上の賛成を得て、解散を決めました。

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