いまも情報提供を呼びかける看板が

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 クルド人100人が機動隊員らを相手に大立ち回りを演じるという、前代未聞の「乱闘」事件が勃発した。クルド人同士によるトラブルが発端になったとされるが、すでに殺人未遂容疑で5人のクルド人が逮捕。捜査はいまも継続中で今後、逮捕者が増える可能性もあるという。事件の背景に何があったのか――。

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【写真】近隣住民が撮影した「クルド人100人」大乱闘の様子

 7月4日、午後8時半頃。埼玉県川口市安行原の県道で1台の車が別の車に車体をぶつけるようにして急停車。直後に車から降りてきた複数の男らによる怒声が周囲に響き渡ったという。近隣住民の話だ。

「一方の車から若い男性が降りると、別の車に乗っていたグループがその男性を小突いたり、叩き始めたりしたように見えました。怒鳴り声や罵声のようなものも大きくなり、そのうち仲間と見られる外国人風の男らがゾロゾロと集まってきて、10分程度で数十人単位の集団に膨れ上がりました」

いまも情報提供を呼びかける看板が

 住民からの通報でパトカーも駆け付け、現場はさらに騒然とした雰囲気に包まれたという。

「少しすると、外国人の集団は車や徒歩で移動を始めたのですが、それを追うようにパトカーもついて行った。あとで分かったことですが、最初に揉めていた男たちがケガをしたようで、彼らを運ぶために近くの病院へ向かったそうです。後日、報道などで“クルド人同士による乱闘だった”と知り、まるでギャングの抗争を見た思いで恐怖を感じました」(同)

機動隊の出動

 同日の夜9時過ぎ、今度は現場から4キロ近く離れた川口市内の総合病院「川口市立医療センター」周辺が喧騒に包まれ始める。住民の一人が当時の様子をこう振り返った。

「パトカーのサイレンが徐々にうるさくなり、“前の車、止まりなさい”との警察車両からのアナウンスも聞こえてきました。驚いて外に出ると、病院の救急用の入り口に車が何台も押し寄せ、取り囲むようにパトカーも10台以上集まってきた。怒声のようなものがアチコチで聞こえ始めましたが、外国語のようで聞き取れませんでした。それでも時折、女性の“(病院内に)入れて!”といった叫び声や“親類が刺された”といった男性の悲鳴を耳にしました」

 医療センター関係者によると、この騒動で「4日の23時30分から翌5時頃まで、救急搬送の受け入れをストップ」せざるを得ない事態に追い込まれたという。

 地元メディア関係者が続ける。

「病院へと詰めかけた大半はトルコ国籍のクルド人と見られ、その数は約100人に達しました。警察官だけでは騒動をおさめることができず、機動隊まで駆け付ける騒ぎへと発展。クルド人のなかには警官の制止を振り切って救急外来の扉を開けようとした者などもいて、一部が暴行や公務執行妨害で現行犯逮捕されました」

容疑者の妻を直撃

 最初に車から降り、複数人から県道上で暴行を受けたと見られる被害者は20代後半のトルコ国籍の男性という。

「病院に運ばれた一人で、頭や首を刃物状のもので切られていた。7月中にこの被害男性を襲撃した殺人未遂容疑で、計4人のトルコ国籍の男性を逮捕した。が、8月1日には、襲撃された際に応戦した被害男性も殺人未遂容疑で逮捕。実は被害男性は事件後の7月12日、麻薬及び向精神薬取締法違反容疑で逮捕されており、今回(殺人未遂)は再逮捕となる」(埼玉県警関係者)

 逮捕された計5人はいずれもクルド人とされるが、付近の住民のなかには「クルド人は運転が荒っぽくて“怖い”との声が以前から上がっていた。改造車で県道を猛スピードで爆走したり、赤信号になる直前でも平気で突っ込んだりと、事故を心配する声は絶えなかった」と話す者もいる。

「刃傷沙汰の原因はハッキリしませんが、クルド人同士のグループ間で発生したトラブルが端緒となって、被害男性は事件が起きる前、別グループの男性らから車で追いかけられていたとの情報もあります」(前出・地元メデイア関係者)

 トラブルの真相を訊ねるため、最初に逮捕された容疑者の妻に話を聞こうとしたが、夫の“長い不在”に当惑した様子で、「分かりません」「知りません」と繰り返すばかりだった。

仕事は「解体業」

 クルド人は「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれ、主にトルコやシリアなどに居住しているが、日本における「最大のコミュニティが川口市」だという。地元市議会関係者がこう話す。

「現在、川口市には2000人以上のクルド人が住んでいるとされます。トルコ政府は過去、独立運動を取り締まる過程でクルド人を弾圧。それにより世界中にクルド難民が散らばり、1990年代以降に日本でも難民申請するクルド人が現れた。実際に難民認定されたケースは聞いたことがありませんが、申請が却下されても『定住者』の在留資格などで暮らし始め、家族や親類を呼び寄せるケースが増えたと聞いています」

 川口市が集住地となったのは「地元の不動産業者がクルド人をはじめとした外国人に寛容だった」や「東京に近い割に物価が安い」など、諸説あるという。また川口に住むクルド人の大半は、日本人が敬遠する解体業などの仕事に就き、実際、逮捕された容疑者のうち「仕事は解体業」と供述している者が複数いるという。

「自分で解体業の会社を興し、同胞を雇うなどして成功しているクルド人もいます。彼らのなかには日本人を雇うなど、地域社会に溶け込んでいるケースもある。でも多くは生活基盤の確立に苦労しているようで、クルド人だけで集まって“孤立”しがちな面も。そのため不安に思っている日本人住民は少なくない」(同)

 今回の事件で地元の人々の懸念はさらに深まりかねず、「共生」への道筋は依然、容易でないという。

デイリー新潮編集部