鋭い毒針や巨大な巣の秘密が明らかに!さらに、スズメバチの幼虫が人間の健康に役立つかも⁉
もくじ ●スズメバチの毒針は巣を守るための武器 ●なぜあんな模様に?スズメバチの巣の秘密 ●スズメバチの幼虫が人間の健康に役立つ⁉
スズメバチの毒針は巣を守るための武器
アンチの言い分「毒針が怖い!」 スズメバチの言い分「しかたなく毒針を持っている!」
スズメバチが毒針を持つのは、クマやタカなどの外敵から自分たちや巣を守るためです。巣にいる幼虫やサナギは、タンパク質が豊富で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養素も含んでいるため、クマやタカなどにとってはごちそう。そのため、スズメバチの巣はクマやタカなどからよく狙われてしまいます。
スズメバチの毒針は、子どもたちを他の生き物から守るための武器なのです。
スズメバチはお尻の先から毒針を出して敵を刺します。スズメバチの体はウエストが細いおかげで、腹部を動かす可動域が広く、いろいろな方向に毒針を刺して毒液を注入することができます。
細いウエストは、相手を攻撃するには都合がよいのですが、よいことばかりではありません。スズメバチの胃は腹部にあるのですが、ウエストが細すぎて、固形物は胃に届きません。スズメバチは毒針を自在に繰り出すことができるのと引き換えに、液体しか食べられなくなっているのです。
スズメバチの毒液には、激しい痛みや腫れ、血圧低下などの症状を引き起こしたり、細胞を破壊したりする成分が含まれていて、人が刺された場合、アレルギー反応の1種である「アナフィキラシーショック」を引き起こす可能性があります。ハチ毒アレルギーがない人であれば、刺されても、痛みや腫れが生じる程度で命に別状はありません。
(ただし、刺されたときには、医療機関を受診するなど十分な注意が必要です。)
では、スズメバチに刺されないためにはどうしたらいいのか?
主な方法は3つです。
1.黒い服を着ない(スズメバチは黒いところを狙う習性がある)
2.無理に手を振って追い払わない(攻撃していると思われ襲われる)
3.姿勢を低くして逃げる(スズメバチは敵の動きを目で追うので、目立たず、視界から外れた状態で逃げる)
なぜあんな模様に?スズメバチの巣の秘密
アンチの言い分「巣が不気味」 スズメバチの言い分「巣は愛の結晶」
模様が不気味だ、などといわれるスズメバチの巣には、女王蜂の壮絶な人生が込められています。
解説してくれるのは、アニメーションクリエイターの石塚瑛介さん。
アニメでわかりやすく解説する女王蜂の子育て奮闘記はこちら
冬眠から目覚めて春を迎えた女王蜂は、木のうろ(幹にあいた穴)などに家を作ります。
家の中に子ども部屋をいくつも作って部屋ごとに『産卵』し、
卵がかえれば子どもたちのための『食材調達』(バッタなどの昆虫を捕獲)と『ご飯作り』(捕獲した昆虫で“肉団子”を作る)。
さらに巣を大きくして子ども部屋をつくるために『家の増築』。
新たに作った子ども部屋にまた産卵して、卵がかえれば食材調達…。
たった一人で子育てしながら家の増築をする生活が、子どもたちが働き蜂として働けるようになるまで、およそ1か月間も続きます。すべては愛する子どもたちのため。
つまり、スズメバチの巣は女王蜂が幼虫のために作り上げた愛の結晶なのです!
しかし、アンチは「巣の模様が気持ち悪い!」と主張。
確かにスズメバチの巣は独特な模様をしています。
このような独特な模様になる理由は、働き蜂の巣作りにあります。
女王蜂が育てた働き蜂は、女王蜂から「女王物質」と呼ばれるフェロモンを受け取り、一生を巣の繁栄のために捧げるようになるといわれ、巣作りに参加するようになります。
働き蜂は巣の増築のために飛び回って木をかじり取り、唾液と混ぜてボール状にして巣に持ち帰ります。このボール状の木材を、アゴと触角を使って薄くのばしながら貼り付けていきます。
働き蜂たちが、いろいろな色の木から材料を持ってきて巣の増築をするので、スズメバチの巣は独特のマーブル模様になるのです。
スズメバチの巣は、子どもたちが快適に過ごせるために必要な構造を備えています。
快適に過ごせる温度は、30度から32度。その温度に温めた水を巣の中と外に設置して、それぞれの温度の変化を調べました。
【気温40度のとき(夏場を再現)】
1時間後、巣の外の温度は急上昇しましたが、中の温度は34度でほぼ横ばいでした。
【気温10度のとき(秋から冬)】
1時間後、巣の中と外では6度の差が出ました。巣の中は、温度の低下がゆるやかでした。
巣の外の温度が40度のときでも10度のときでも巣の中の温度が変化しにくかったのは、巣に「空気の層」があるからです。
スズメバチの巣はまるで冷暖房完備のようなもの!
空気の層が気温の変化から幼虫を守ってくれているのです。
スズメバチの幼虫が人間の健康に役立つ!?
アンチの言い分「幼虫が気持ち悪い」 スズメバチの言い分「幼虫が人間の健康に役立てるかも」
一体、どういうことなのか?
解説してくれるのは、農研機構の亀田恒徳さん。
スズメバチの巣の白い部分は、幼虫がサナギになるときに吐く糸でできていて、ホーネットシルクと呼ばれています。
ホーネットシルクは、カイコなどが作るシルクとは異なります。
リチウムが入った水に入れて1時間ほどするとほとんどが溶けてしまいます。
亀田さんによると「溶けやすいということは、形を自由に変えられるということです。例えばフイルム、粉末、チューブにすることもできる」とのこと。
さまざまな形に変えられるホーネットシルクをフィルムにして機能を調べたところ、細胞がくっつきにくいという特徴がわかったそうです。
亀田さんは「例えば、手術をしたあと臓器同士がくっついてしまうという癒着(ゆちゃく)。これを防ぐための癒着防止膜、こんなものに使えるんじゃないか。まだまだわかっていないすばらしい作用、効果を示すものが含まれていて、もっともっといろんなことが分かるんじゃないかと思っています」とコメントしています。
つまり、スズメバチの幼虫が作り出す糸には、人間の健康に役立つ可能性が秘められているのです!
まとめ
森でスズメバチの巣を見かけたら、まずは姿勢を低くしてその場を離れ
安全な場所から巣に込められた愛情を応援してあげましょう。
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