「風量弱」「こまめに電源オフ」は逆効果 冷房の節電、「あるある」な勘違い 意外と暑いよ夏の信州
気象庁は22日、長野県を含む関東甲信地方の梅雨明けを発表しました。本格的な夏がやってきます。
“冷涼な気候”というイメージがある信州ですが、日中の気温は35度以上になることも。気象庁は6日に発表した長野県の1ヶ月予報で「期間の前半は、気温がかなり高くなる見込み」と注意を呼びかけており、今年の夏も暑そうです。
総務省のまとめでは、2022年5~9月に熱中症で搬送されたケースのうち、発生場所として最も多かったのが「住居」で4割近くに上ります。暑さを我慢しすぎず冷房を使うことが重要ですが、物価の高騰を感じる中、使用をためらう人もいるかもしれません。
長野市に住む同僚の自宅の電気代は、2021年7月よりも22年7月の方が使用量は10キロワットアワー減ったにもかかわらず、22年の方が2千円ほど高かったとのこと。今年の夏も心配になります。
そこで、節電になりそうだけど実は逆効果になる「あるある」な勘違いや、簡単にできる節電方法をダイキン工業の広報・森重雄己さんに聞きました。
■「風量弱」「こまめに電源オフ」は逆効果
まず大切なのは、節電に関する間違いに気付くこと。森重さんは4つ、勘違いしている人が多い点を教えてくれました。
●勘違い①「風量は弱にした方がいい」
風量を「弱」にするとエアコンの動作音やファンの音も静かになるため節電だと感じがちですが、設定温度に達するまでに時間がかかり、かえって消費電力がかさんでしまうそう。風量は「自動」設定がおすすめとのこと。
●勘違い②「室外機をカバーで覆う」
エアコンは室内の熱を外に出し、冷たい空気を送ることで部屋を涼しくしています。室外機に囲いをしたり、周辺に植木鉢などを置いたりしている人も少なくないですが、前面が覆われすぎていると、ファンがうまく空気を送り出せず、消費電力が上がってしまうそう。「ただ、直射日光を避けるのは節電効果があるので、よしずを立てかけるのがおすすめです」と森重さん。
●勘違い③「こまめに電源を切る」
冷房をつけているとき、買い物などで少し家を空けることもありますよね。そういうとき、こまめに電源を切って節電したくなりますが、逆効果になることも。ダイキンの実験では、日中は30分程度ならつけたまま出かけた方が節電になるという結果が出ました。
これは、電源を入れたときが一番、温度を下げるために消費電力が大きくなるためです。そのため比較的外が涼しくなる夜間は、十数分と目安が短くなります。
●勘違い④「風向きを下にして、人のいる場所を集中して冷やす」
エアコンは、通常上部から空気を吸い込み、その温度で「設定温度まで下がっているかどうか」を判断します。風向きを下にしていると部屋の中で温度ムラができ、エアコンが「まだ設定温度に達していない」と勘違いして冷やし続けてしまう可能性があるそう。風向きは平行にし、反対側にサーキュレーターを置いて空気をかくはんすると、効率よく部屋全体を冷やせます。
■避けられないフィルター掃除、こまめに行えば1回10分!
勘違いを整理したところで、森重さんが「これだけは簡単なのでやってほしい」というおすすめの節電方法を2つ挙げてもらいました。また、長野県のように、昼夜の気温差が大きい地域で気をつけるべきことはあるのでしょうか?
●簡単節電①「エアコンの風量は“自動”に」
前述の「勘違い」でも触れましたが、森重さんは「自分で最適な風量を設定するのはとても難しいです」と指摘。冷房をつけてすぐは「早く冷やしたい」と風量を強くする人も少なくないかもしれませんが、自動運転に任せた方が効率的だそうです。
●簡単節電②「フィルターの掃除」
フィルター掃除をしなければいけないと思っていても、面倒で先送りしている人も少なくないのでは?しかし、エアコン内部のフィルターが汚れていると、取り込む空気の量(=吐き出す冷たい空気の量)が少なくなるため、部屋を冷やすのに電気代がかさみます。
ダイキンが行った実験では、きれいなフィルターは3年間掃除していないフィルターと比べて、電力消費量が48.9%削減でき、電気料金は1ヶ月換算で800円削減できたそう。
掃除は2週間に1度程度が目安。汚れがひどいときには中性洗剤をとかしたぬるま湯で洗う必要がありますが、軽い汚れなら掃除機で吸うだけ。慣れれば10分程度で可能です。
■昼夜の気温差の大きい地域では、外の温度を時々確認して
特に県内は昼夜の気温差が大きいため、森重さんは「自分で温度や風量を適度に調整するのは、より難しいと思います。自動運転をうまく使った上で、涼しくなってきたらきちんと切るなどの対応が必要なのではないでしょうか」とコメント。気付いたら、冷房を使っている室内よりも外の方が涼しくなっていた─という経験、記者もしたことがあります。外の気温を時々確認するのは節電につながりそうです。
梅雨が明けると夏本番がやってきます。環境省によると、屋内で熱中症となり死亡した人の9割が冷房を使っていなかったという調査もあり、冷房を控えすぎることは命に関わる可能性も。森重さんは「電気代が気になるとは思いますが、節電方法を生かしながらうまく冷房を活用し、快適に過ごしてほしい」としています。(小西和香)
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