NATO「マケドニア」を正式承認、30カ国体制に
東方拡大にロシア反発も
【ブリュッセル=森本学】北大西洋条約機構(NATO)は6日、バルカン半島の小国マケドニアの加盟を正式承認する議定書に署名した。国名を巡って30年近く続いていたNATO加盟国ギリシャとの対立が解決したためで、NATO加盟国は30カ国に拡大する。各加盟国の議会承認を経て年内にも正式加盟する見通し。NATOの「東方拡大」に反発してきたロシアとの緊張が高まるのは必至だ。
ブリュッセルの欧州連合(EU)本部で開いた議定書の署名式には、現加盟29カ国のNATO代表部大使と、マケドニアのディミトロフ外相が出席した。NATOのストルテンベルグ事務総長は6日、署名式を終え、「歴史的な日だ」と新加盟を歓迎した。
マケドニアは1991年に旧ユーゴスラビアから独立し、国名を「マケドニア共和国」とした。しかしアレキサンダー大王で知られる古代マケドニア王国の主要都市だった地域を多く抱える隣国ギリシャが、「マケドニア」はギリシャの歴史を象徴する地名だとして猛反発。マケドニアのNATOやEUへの加盟を阻んできた。
EUの仲介もあって、両国は2018年6月に国名変更で合意。マケドニアが19年1月11日に国名変更の憲法改正案を承認したのに続き、ギリシャ議会も同25日に政府間合意を承認。国名を「北マケドニア共和国」へ改名することが正式に決まり、ようやくNATO正式加盟への道を開いた。
NATOの加盟国拡大は17年に正式加盟したモンテネグロ以来となる。マケドニアとモンテネグロはともにバルカン半島の旧共産圏国だったユーゴスラビアから分離独立して誕生。マケドニアはEUへの加盟交渉も年内にも始まる見込みだ。
地政学上の要衝であるバルカン半島でのNATOやEUの拡大の動きはロシアにとっては安全保障上の脅威に映る。プーチン大統領は1月中旬、同じく旧ユーゴスラビアのセルビアを訪問し、同国のブチッチ大統領ら「親ロ」勢力と会談。同地域でのロシアの影響力の堅持に力を入れる。
米ロがともに中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を表明するなかで、欧州はロシアが欧州全域を射程に収める中距離ミサイルの配備を加速させることへの懸念を強めている。一方、ロシア側も、近接するNATO傘下の東欧諸国に、米国主導でミサイル防衛(MD)配備が進むことを警戒する。
バルカン半島を巡っては、中国も中東欧16カ国とインフラ投資などで経済協力を進める「16プラス1」首脳会議を設けるなど、影響力拡大を狙う。EUはマケドニアのNATO加盟やEU加盟交渉入りをテコに、同地域での存在感低下を回避したい狙いだ。