『三国志』馬謖に見る「目的にあわせたノウハウ選択の難しさ」
『三国志』の蜀に馬謖という武将がいます。街亭の戦いで敗北し、第一次北伐失敗の原因となったことで、「無能」「登山家」などの謗りを受けています。
馬謖の失敗エピソードは『三国志演義』由来のものが多く、逆に原典の『三国志』には詳細が書かれていないので、馬謖が本当に無能であったかは分かりません。ですが、馬謖の失敗はBtoBマーケティングにも共通する失敗なので、史実かどうかに関わらず参考になります。
※これ以降、『三国志演義』のエピソードを前提に話します。
目的とノウハウが合致しなかった戦い
まず、馬謖が負けた街亭の戦いの要点は以下の通りです。
・諸葛亮の目的は、魏討伐の要衝である祁山を攻略すること
・馬謖の目的は、祁山攻略までの間、祁山に向かう魏軍を足止めすること
・馬謖軍と魏軍が街亭で交戦するが、馬謖は敗北
・魏軍の足止めに失敗したことで、諸葛亮の祁山攻略は失敗
馬謖の目的はあくまで魏軍の足止めであり、必ずしも魏軍を撃破する必要はありません。それを踏まえて、諸葛亮は街亭の街道を封鎖せよと命令しています。
ところが、馬謖は街道を封鎖せず、山頂に布陣しています。彼は「高きによって低きを視るは勢いすでに破竹」という兵法に従ったそうですが、文章から分かる通り、これは敵の撃退・殲滅を目的とした兵法なので、馬謖の目的である足止めと合致していないのですね。つまり、目的と合致しない兵法を選択してしまったことが、馬謖の敗因といえます。
※馬謖の敗因にはもう一つ、「水源が山麓にしか無かったので、魏軍に水源を絶たれて水不足に陥った」という致命的なものもあるのですが、この記事の趣旨とは外れるので除外します。
出典: 横山光輝『三国志』53巻
目的にあわせたノウハウ選択の難しさ
ここで、BtoBマーケティングの話に変わります。
『孫子』などで兵法の定石が語られるのと同様、BtoBマーケティングに関するノウハウは記事やセミナーなどで語られています。広告・SEO・ホワイトペーパー・メルマガ・ウェビナー・インサイドセールスなど色々な情報が出回っており、私が教えなくてもクライアントの担当者は既にご存じということもよくあります。つまり、ノウハウや知識でいえば、私とクライアントはそこまで差が無いのです。
なのに、なぜ多くの企業が今だにBtoBマーケティングで悩み、私に仕事を依頼するのか? その理由は、ノウハウを知っても、目的にあわせてノウハウを選択できるとは限らないからです。目的が新規リード獲得なのにメルマガのナーチャリングに力を入れたり、目的がLPのファーストビュー離脱率の減少なのにLP下部の修正をしてしまったりするのは、馬謖の生兵法と同じです。皆さん気をつけましょう。
※こうして文章にすると、当たり前だと思われるかもしれませんが、生兵法に陥っている企業はかなり多いです。誰しも、自分が馬謖のようになっているとは思わないものです(私も過去なっていたことがあったかもしれません)。
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