北マケドニア共和国
北マケドニア共和国(Republic of North Macedonia)
基礎データ
令和5年1月4日
一般事情
1 面積
2万5,713平方キロメートル(九州の約3分の2)
2 人口
207万人(2021年世銀データ)
3 首都
スコピエ
4 言語
マケドニア語、アルバニア語
5 宗教
キリスト教(マケドニア正教)7割、イスラム教3割
6 略史
年月 | 略史 |
---|---|
6、7世紀頃 | スラヴ人が定住 |
15世紀以降 | オスマン・トルコの支配下に入る |
1918年 | セルビア人・クロアチア人・スロベニア人王国建国 |
1945年 | マケドニア人民共和国に国名を変更。翌年旧ユーゴ構成共和国の構成国である議会制の共和国に。 |
1991年 | マケドニア共和国に国名を変更。旧ユーゴより独立。 |
1993年 | 国連加盟 |
2001年2月 | アルバニア系過激派勢力による武装蜂起、政府軍との銃撃戦。(旧ユーゴ最後の民族紛争) |
2001年7月 | NATO仲介の下、停戦。枠組み合意(オフリド合意)が成立(同年8月)。 |
2003年3月 | EU軍事ミッションがNATOから駐留ミッション引き継ぎ。 |
2006年6月 | EU駐留ミッション活動終了。 |
2019年2月 | 憲法上の国名を「北マケドニア共和国」に変更。 |
2020年3月 | NATO加盟 |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
ステヴォ・ペンダロフスキ大統領(2019年5月就任、任期5年)
3 議会
一院制(北マケドニア議会)定員120議席。任期4年。
議会議長 タラト・ジャフェリ(DUI党)
4 政府(2022年1月発足)
- 首相
- ディミタル・コヴァチェフスキ首相(SDSM党)
- 外相
- ブヤル・オスマニ外相(DUI党)
5 内政
- (1)2001年の国内のマケドニア系勢力とアルバニア系勢力との衝突後、民族融和に関するオフリド枠組み合意に基づき、多民族国家として平和裏の国家再建を継続。
- (2)内政一般については、1991年の独立以来、二大政党(VMRO-DPMNE党、社会民主同盟)のいずれかが、小政党(アルバニア系等)との連立政権を築いてきた。
- (3)2006年以降、VMRO-DPMNE党を中心とする連立政権が継続し、グルエフスキ首相の下、安定した政権運営を行っていたが、2015年2月、野党SDSMが政府関係者の盗聴テープを公表した(賄賂汚職や選挙違反、司法制度介入、盗聴等の言動を暴いた)ことにより、首相の辞任を要求するデモや、これに対抗すべく結成された政府支持者によるカウンターデモが実施される等、情勢が不安定化。国内の混乱を受け、ハーン欧州委員(欧州近隣政策・拡大交渉担当)等が仲介し、与野党党首間協議を実施。その結果、2016年1月中旬までのグルエフスキ首相の退陣、同1月15日までの暫定政権発足、同4月までの議会選挙実施等を含む合意に達した。同合意に含まれる議会選挙の実施については、公正な選挙基盤が整っていない等の理由により2度に亘り延期されたが、EUや米の仲介により、2016年8月末、与野党は、12月11日に議会選挙を実施することで合意。
- (4)2016年12月の前倒し議会選挙の結果、VMRO-DPMNEが第一党となるも、アルバニア系政党との連立合意に至ることが出来ず、組閣マンデートを返上した。その結果、2017年5月末、第2党SDSMとアルバニア系2政党(DUI及びアルバニア人のための同盟)の連立によるザエフ内閣が発足。
- (5)2019年10月にEU理事会にてEU加盟交渉開始審議の先送りが決定したことを受け、ザエフ首相は前倒し国会選挙を行うことを発表。2020年1月に選挙前の臨時内閣が発足し、副首相兼内相であったオリヴェル・スパソフスキが首相に就任。
- (6)2020年7月の前倒し議会選挙の結果、SDSM連合がVMRO-DPMNE連合に僅差で勝利。アルバニア系政党のDUIとの連立によりザエフSDSM党首を再び首相とする政権が発足(第2次ザエフ政権)。
- (7)2021年10月の地方選挙におけるSDSMの敗北を受け、ザエフ首相がSDSM党首及び首相の座からの引責辞任を表明し、同年12月にザエフ内閣が総辞職。2022年1月、SDSM新党首に就任したコヴァチェフスキ前財務副大臣を首相とするコヴァチェフスキ内閣が発足。
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)1991年の独立後、国名問題(注)を巡ってギリシャとの関係が悪化したが、1993年、「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国(FYROM)」の暫定名称を用いることで国連加盟を実現した。その後、長期にわたる交渉を経て、2018年6月にギリシャとの間で国名を「北マケドニア共和国」とする合意が結ばれた(プレスパ合意)。同年9月の北マケドニアでの国民投票は投票率が成立条件の50%を下回り無効となったが、法的拘束力はないため議会での手続きは継続し2019年1月に北マケドニア議会で憲法改正案が承認され、同月ギリシャ議会においてプレスパ合意が承認されたことにより、国名問題は「北マケドニア共和国」への変更で決着した。同年2月12日、北マケドニア政府は国連に改名を通知し受理され、公式に「北マケドニア共和国」の名称の使用を開始した。
(注)ギリシャが、「マケドニア共和国」の名称を、「マケドニア」がギリシャ古来の由緒ある名であること、同名称の使用はギリシャ北部のマケドニア地方に対する領土要求の野心を示すものとして、その使用に反対していた問題。 - (2)北マケドニアは、アフガニスタンで展開するNATO軍への派兵、米国主導のイラクにおける多国籍軍への派兵など、軍事面における国際貢献を内外にアピールしつつ、NATO加盟招請に向けた各種取組みを行ってきた。国名問題解決への進展を受け、2018年7月にNATO加盟招請が行われ、2019年2月には、北マケドニアのNATO加盟議定書の署名が実施され、2020年3月にNATO加盟が実現した。
- (3)目下の主要な外交目標は、EU加盟である。2004年3月、EUに正式加盟申請を行い、2005年12月、欧州理事会において、EU加盟候補国の地位を付与することが決定された。また、2009年12月19日より、EU諸国への査証免除が導入された。国名問題の解決に向けた動きがあったものの、2018年6月、2019年6月及び10月の欧州理事会において北マケドニアのEU交渉開始の決定が累次にわたり延期され、2020年3月の欧州理事会において北マケドニアの加盟交渉開始が承認された。その後、ブルガリアの反対によって実際の加盟交渉開始がブロックされる状態が継続したが、2022年7月には加盟交渉が正式にスタートした。
2 軍事力
- (1)予算:
- 3億5,000万ユーロ(21億4,550万マケドニア・デナル)
- (2)兵制:
- 志願制
- (3)兵力:
- 約7,100名
(2022年、北マケドニア国防省)
経済
1 主要産業
商業、製造業(食品・飲料、輸送機械・部品等)、農業(たばこ、ワイン)、鉱業(鉄等)
2 GDP
138億ドル(2021年、世銀)
一人当たりGDP 6,695ドル
3 経済成長率
4.0%(2021年、世銀)
4 物価上昇率
3.2%(2021年、世銀)
5 失業率
16.2%(2021年、世銀)
6 貿易額・貿易品目(2021年、北マケドニア国家統計局)
- (1)輸出
- 69億2,000万ユーロ(機械、輸送機器・部品、化学製品、非鉄金属)
- (2)輸入
- 96億4,000万ユーロ(鉄鋼、繊維、一般機械・輸送機器、化学製品)
7 貿易相手国(2021年、北マケドニア国家統計局)
- (1)輸出
- ドイツ(46.7%)、ブルガリア(4.8%)、コソボ(4.4%)、セルビア(4.2%)、ハンガリー(3.1%)
- (2)輸入
- 英国(17.7%)、ドイツ(10.2%)、ギリシャ(7.6%)、セルビア(6.8%)、中国(6.7%)
8 通貨
マケドニア・デナル
9 為替レート
1ユーロ=61.5デナル前後(変動)
10 経済概況
- (1)北マケドニアは、1990年代に入って旧ユーゴの解体とそれに続く国連の対新ユーゴ(セルビア及びモンテネグロで構成)経済制裁及び国名問題によるギリシャの経済封鎖のため、貿易、特に輸出が不振となり、経済は、独立以降急激な悪化と停滞を余儀なくされた。
- (2)北マケドニア政府は、IMF及び世銀の支援を得つつ、1993年より経済安定化政策(賃金抑制、赤字国営企業の整理、為替レートの安定化等)を実施。1995年より旧ユーゴ地域との交易が再開したこともあり、GDP成長率は、1996年以降はプラスに転じた。
- (3)1998年から1999年のコソボ紛争時には多数の難民が流入し(最大時は約25万人)、その受け入れに伴う負担が重なった上、旧ユーゴ地域や欧州との交易が阻害されたことにより経済的に大きな損害を受けた。また、2001年2月に発生した紛争により、経済は大きな打撃を受けた。
- (4)北マケドニア政府は、外国投資の促進による経済発展を実現すべく各種取組みを行っており、2013年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を受けた2020年を除き、プラス成長を維持している。
二国間関係
1 政治関係
日本は、1993年12月に「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」の名称で国家承認し、1994年3月に外交関係を開設した。日・北マケドニア外交関係樹立20周年にあたる2014年10月、駐日マケドニア旧ユーゴスラビア共和国大使館(現在の駐日北マケドニア共和国大使館)が開設され、同年12月に初代駐日大使が着任した。日本は、2017年1月に在マケドニア旧ユーゴスラビア共和国日本国大使館(現在の在北マケドニア共和国日本大使館)を開設し、同年5月に初代大使が着任した。
2 経済協力
(1)日本の経済協力
- (ア)日本の経済協力は、北マケドニアの安定と発展がバルカン地域全体の安定にとって重要との認識の下、1994年に政策協議を実施し、技術協力を開始した。1995年には初の無償資金協力としてノンプロジェクト無償及び医療機材整備計画に対する援助を実施し、また1996年以降は草の根無償資金協力も多数実施している。さらに1998年-1999年のコソボ危機により生じた難民の受け入れ国に対する支援として、医療機材供与、食糧増産援助、ノンプロジェクト無償等合計22億7400万円を供与した。日本は最大の支援国の一つである。
- (イ)北マケドニア政府の要請を受けて、ズレトヴィツァ水利用改善計画(北マケドニア東部の4都市及び近郊への生活・産業用水供給、灌漑及び水力発電を目的とする総合開発計画)に対し、2003年11月に、96億8900万円を限度とする円借款を供与した。
- (ウ)2000年度より北マケドニアは一般文化無償資金協力の対象国となり、最初の案件として北マケドニア・フィルハーモニー管弦楽団に対して楽器を供与することとなった(2000年)。両国外交関係樹立25周年にあたる2019年の12月には、北マケドニアで2回目となる一般文化無償資金協力案件である国立オペラ・バレエのための楽器・音響・照明機材整備計画の交換公文が署名された。
(2)日本の援助実績
- (ア)有償資金協力 96.89億円(「ズレトヴィツァ水利用改善計画」)
- (イ)無償資金協力 277.25億円(2020年度までの累計)
- (ウ)技術協力 51.04億円(2020年度までの累計)
3 経済関係
二国間貿易額(2021年、財務省貿易統計)
- 輸出(日本からの輸出) 約18億円(輸送用機器、化学製品、電気機器等)
- 輸入(日本の輸入) 約22億円(電気機器、衣類及び同附属品、たばこ等)
- 両国外交関係樹立25周年にあたる2019年の6月、北マケドニアで初めてのJETROビジネスミッションが実施された(関経済産業副大臣同行)。
4 文化関係
- (1)1996年より国費研究留学生の受け入れ開始
- (2)1990年マケドニア・日本友好協会設立
- (3)文化行事として、邦楽コンサート、日本映画祭等を随時開催してきた。両国外交関係樹立25周年にあたる2019年には、日本料理デモンストレーション、能公演・ワークショップ、日本映画祭等様々な文化行事が開催された。
- (4)2020年5月、北マケドニア郵便は、建築家丹下健三氏のスコピエ再建への功績を讃える記念切手を発行した。
5 在留邦人数
26名(2021年10月現在)
6 在日北マケドニア人数
55名(2021年12月現在)
7 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1994年 | 柳井外務省総合政策局長をヘッドとする旧ユーゴ調査チーム |
1995年 | 衆議院外務委員会調査団(団長:三原委員長) |
1996年 | 水野衆議院議員、柳沢衆議院議員 |
1999年4月 | 高村外務大臣 |
1999年12月 | 河野外務大臣 |
2004年9月 | 荒井外務大臣政務官 |
2013年4月 | 城内外務大臣政務官 |
2014年2月 | 牧野外務大臣政務官 |
2017年9月 | 中根外務副大臣 |
2019年6月 | 関経済産業副大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1995年 | ツルヴェンコフスキ外相 |
1996年 | ミトレヴァ議会外交委員長 |
1998年 | フィティ蔵相、イリエフスキ保健相 |
1999年 | ドンチェフ首相特使、ポポフスキ環境相 |
2000年 | ダニロフスキ保健相 |
2003年7月 | ミトレヴァ外相 |
2003年10月 | トライコフスキ大統領 |
2004年4月 | ブジャク運輸通信相、ジュンデフ外務次官(西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合出席) |
2006年6月 | プレショスキ・北マケドニア日本友好協力議員連盟会長 |
2006年7月 | キリヤス外務次官 |
2007年1月 | タシュコヴィッキ投資担当相 |
2011年4月 | ミロショスキ外相 |
2011年11月 | グルエフスキ首相(スタヴレスキ副首相兼財務相(同行)、パヴレスキ外国技術担当相(同行)) |
2014年6-7月 | グルエフスキ首相 |
2015年10月 | ポポスキ外相 |
2019年10月 | ジェルノフスキ外務副大臣(即位礼正殿の儀参列のため) |
2022年5月 | オスマニ外相 |
8 二国間条約・取極
- 1997年2月、旧ユーゴ政府との間で締結された通商航海条約、科学技術協力協定、文化協定等の承継を確認するための書簡交換。
- 2022年5月、技術協力協定
9 外交使節
- 北マケドニア駐箚日本国大使
- 大塚 和也 特命全権大使
- 駐日北マケドニア大使
- ゴラン・ツェコフ特命全権大使