脊椎動物門 > 硬骨魚綱> コイ目> コイ科
学名:
Tanakia lanceolata (Temminck and Schlegel, 1846)
和名:
ヤリタナゴ
種の指定状況:
環境省レッドリスト:準絶滅危惧
滋賀県レッドデータブック2015年版:絶滅危機増大種
- 特徴:
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全長10㎝。タナゴ類の中では体高は低い。側線は完全。口角に1対の口ひげを持つ。タナゴ類によく見られる肩部の暗色斑、体側後部の暗色縦条がともに不鮮明。産卵期のオスの婚姻色は、体側前部が赤紅色になり、えらぶたと胸びれの上は特に濃い。背びれの前上縁と尻びれの縁の朱色もその濃さを増す。腹面は黒色に変化する。吻端の追星(おいぼし)は左右に分かれる。
- 湖内の分布:
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琵琶湖岸全域と瀬田川、安曇川などに分布する。全国的には、北海道と南九州を除く各地に分布している。
- その他:
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流れのある平野部の細流や水路に生息するが、湖沼の岸辺にも生息する。食性は、付着藻類や小型の底生動物を食べるなど雑食性を示す。産卵期は地域により差があるが、琵琶湖では5~8月。本種を含むタナゴ類はすべて生きている二枚貝(マツカサガイ、ニセマツカサガイ)の中に産卵するという特徴を持つ。オスがメスを誘導し、メスが貝の出水管に産卵管を挿入して卵を産みつける。ふ化後全長1㎝程度のころ、貝の中から泳ぎ出る。
小型魚種のため、魚食性外来魚の侵入による捕食が減少要因と考えられている。また、河川改修等により産卵に適する二枚貝類の減少や生育に適する緩流域の消失が生存の脅威となる。
タナゴ釣りは本種が主な対象とされる。食用として、つくだ煮等に供される。

ヤリタナゴ
(撮影 細谷和海)

ヤリタナゴ
(撮影 山野ひとみ)

ヤリタナゴ模式標本(ホロタイプ). オランダナチュラリス所蔵:シーボルト・コレクション.
(撮影 細谷和海)
- 参考文献:
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- 武内啓明(2019) ヤリタナゴ. 細谷和海(編・著)山溪ハンディ図鑑15 増補改訂版 日本の淡水魚. 山と渓谷社. pp.58-59.
- 中村守純 (1969) 日本のコイ科魚類. 資源科学研究所, 東京. 455pp.
- 長田芳和(2001)ヤリタナゴ. 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海(編)山渓カラー名鑑 改訂版日本の淡水魚. 山と渓谷社. pp.354-355.
- 琵琶湖博物館うおの会(編)(2005) みんなで楽しんだうおの会―身近な環境の魚たち―. 琵琶湖博物館研究調査報告書. 23. 233pp.
- 松田尚一・前畑政善・秋山廣光 (1980) 湖国琵琶湖の魚たち(琵琶湖文化館編). 第一法規出版, 大阪. 8pls. +189pp.
- 松田征也(2016)ヤリタナゴ. 滋賀県生きもの総合調査委員会(編)滋賀県で大切にすべき野生生物滋賀県レッドデータブック2015年版. 滋賀県自然環境保全課. p.556.
*執筆 細谷和海・川瀬成吾
更新 2020年3月