脊椎動物門 > 硬骨魚綱> コイ目> コイ科
学名:
Acheilognathus cyanostigma Jordan and Fowler, 1903
和名:
イチモンジタナゴ
種の指定状況:
環境省レッドリスト:絶滅危惧IA類
滋賀県レッドデータブック2015年版:絶滅危惧種
- 特徴:
-
全長8㎝。タナゴ類の中でタナゴの次に体高が低い。側線は完全。1対のひげがあるとされるが成魚では、認めるのが難しい。側線鱗の前から6枚目あたりの鱗上方に瞳大の暗緑色の斑点がある。この斑点から連続して太く長い暗色縦条が尾びれ基部まで走り、これが名前(一文字(イチモンジ))の由来になっている。産卵期のオスは、婚姻色として、背方が青緑色、頭部側面および体側腹方は紫桃色を帯び、非常に美しい。背びれの前上縁部と尻びれの縁部は鮮やかな桃色を呈する。吻端に、星状にとがった追星(おいぼし)が形成される。
- 湖内の分布:
-
滋賀県内では、湖東、湖北の一部に分布する。全国的には、琵琶湖・淀川水系、和歌山県紀ノ川水系、福井県三方五湖、濃尾平野に分布する。最近では、兵庫県加古川から広島県芦田川までの諸河川で採集されるほか、四国各地や熊本県江津湖から報告されている。琵琶湖では激減している反面、移殖により分布が拡大している。
- その他:
-
琵琶湖では、従来、内湖に多かったが、オオクチバスとブルーギルの侵入と内湖の減少により、現在では採集するのが難しい。他の地域では、平野部の細流や水路のゆるやかなところや池沼に生息する。主に付着藻類を食べるが、底生の小動物も捕食する。産卵期は、4~8月。多くのタナゴ類と同じく、ドブガイなどのイシガイ科の二枚貝に卵を産みつける。貝に産みこまれた卵は、受精後2日ほどでふ化し、全長8mmに育ってから貝の外に泳ぎ出る。
小型魚であるため外来魚に捕食されやすく、保全のためには、生息水域からバス・ギル類を駆除することが必要である。

婚姻色の発現したイチモンジタナゴのオス
(提供 近大水圏生態研)

早崎内湖で採集されたイチモンジタナゴ(1965年)
(提供 近大水圏生態研)
- 参考文献:
-
- 中村守純 (1969) 日本のコイ科魚類. 資源科学研究所, 東京. 455pp.
- 長田芳和(2001)イチモンジタナゴ. 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海(編)山渓カラー名鑑 改訂版日本の淡水魚. 山と渓谷社. p.372.
- 琵琶湖博物館うおの会(編)(2005) みんなで楽しんだうおの会―身近な環境の魚たち―. 琵琶湖博物館研究調査報告書, 23.233pp.
- 藤田朝彦・西野麻知子・細谷和海(2008)魚類標本から見た琵琶湖内湖の原風景.魚類学雑誌,55(2):77-93.
- 松田征也(2016)イチモンジタナゴ. 滋賀県生きもの総合調査委員会(編) 滋賀県で大切にすべき野生生物滋賀県レッドデータブック2015年版. 滋賀県自然環境保全課. p.549.
- 松田尚一・前畑政善・秋山廣光 (1980) 湖国琵琶湖の魚たち(琵琶湖文化館編). 第一法規出版, 大阪. 8pls. +189pp.
*執筆 細谷和海・川瀬成吾
更新 2020年3月