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東京国際映画祭での受賞歴もあるアート系映画の旗手で、大田原市の渡辺紘文さん(40)、雄司さん(38)兄弟による映画制作集団「大田原
大田原愚豚舎は日本映画学校(現・日本映画大学、川崎市)で学んだ紘文さんが、映画音楽家の雄司さんと2013年に創設。デビューから4作連続で、東京国際映画祭に正式出品を果たし、プール監視員を主人公とした16年公開の「プールサイドマン」は、独立系映画を対象にした日本映画スプラッシュ部門で、最高賞の作品賞を獲得した。
演者やスタッフにほぼプロを入れず、資金も自前で賄う「自主制作」のスタイルを貫いてきた。地元の大田原市で撮影することも多い。一般的に、映画撮影には最低でも十数人のスタッフが必要とされる中、父母や地元の友人らと数人規模で作っており、紘文さんは「今やみんなプロ並みに動ける」と笑う。
巨匠・今村昌平監督の影響を受け、日常の描写を繰り返すスタイルを打ち出しており、どの作品も「人間の生活を撮りたい」という思いで貫かれている。19年公開の6作目「叫び声」では、北関東のある農村を舞台に、年老いた祖母と2人で暮らす男が豚舎で黙々と働く姿を、極限まで言葉を排したモノクロ映像で描き出した。これまでの作風を深化させたこの作品では、日本映画スプラッシュ部門の監督賞を受賞した。
これまでアート系映画の分野で、海外を中心に評価を確立してきた2人。モノクロのこびない作風で、雄司さんは「ここまで来るには、誰も見なくてもいいというほどの覚悟が必要だった」と話す。一方で「表現が固まってきた」という思いも芽生え、昨年公開の最新作「テクノブラザーズ」では、イメージを覆すような全く異なる表現に挑戦した。
作品は、正体不明の3人組ミュージシャン・テクノブラザーズが、レコード会社への売り込みのため、冷酷なマネジャーと東京へ向かうロードムービー。全編カラーのミュージカルコメディーで、楽曲は全て雄司さんが手がけた。古参のファンからは批判も受けたが、「その声がむしろ、自分たちのやったことの正しさを証明してくれた」と紘文さん。イタリアの映画祭では、詰めかけた約1600人の観客が、ラストシーンで踊り出すほどの熱狂を呼んだという。
現在は、アート性の強い作品と並行しながら、テクノブラザーズの続編や、ホラー映画の制作にも着手しているという。紘文さんは「この10年で、より多くの人を楽しませたい気持ちが強まった。今後はさらに表現の幅を広げ、門戸を広げていきたい」と次の10年を見据えている。
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大田原愚豚舎の10周年を記念した特集上映が、東京都新宿区の映画館「ケイズシネマ」で開かれている。先月8日から全作品を順次公開しており、4日まで。上映時間は各日午後8時から。料金は1500円(60歳以上1000円)。