Elle Decor
東レによって1970年に発表されて以来、アパレルやインテリアといったものづくりの現場で重宝されてきたマテリアル「ウルトラスエード®」。多くのクリエイターを魅了するこの素材の魅力に迫る。
1970年に鮮烈なデビューを果たした「ウルトラスエード®」は、当初アパレル用途向けに東レが開発したテキスタイル。その後も幾多の技術革新を経て進化を続け、現在は家具の張り地、壁装材をはじめ洋服、靴やバッグなど、さまざまな分野でその存在感を発揮している。
高い機能性と豊富な色展開で、来場者の関心をキャッチ
今回のオルガテック会場では、テキスタイルデザイナーの竹内瑠奈と企画開発したテキスタイルも展示。ファッション、インテリアといったジャンルを超えた、強い個性をまとう作品が並んだ。
一方、インテリアの張り地としてお馴染みの「Ultrasuede®HP」や、2022年にリニューアルした壁装材用の「Ultrasuede® for wallcovering」に関心を寄せるゲストも多数。特に上質感が求められる内装に適した後者は、「ウルトラスエード®」として史上最薄の基材を使用しながら、準不燃認定も取得済みといった機能性が注目を集めていた。
<写真>50年超の歴史を持つ「ウルトラスエード®」の魅力を多角的に表現したブース。左の壁面にディスプレーされているのは壁装材のシリーズ「Ultrasuede® for wallcovering」。右の壁面には椅子の張り地シリーズ「Ultrasuede®HP」と「Ultrasuede®nu1.0」が展示された。
また2016年にスタートした、クリエイターと「ウルトラスエード®」とをつなぐプロジェクト「TALKING Ultrasuede®」の活動を紹介するコーナーも盛況だった。環境負荷低減などにも積極的に取り組み、皮革に代わるサステナブルな素材としても注目を集めている「ウルトラスエード®」。今後のさらなる拡張性に、ますます期待が高まっている。
<写真>家具に「ウルトラスエード®」を張り込んだ事例。上の椅子は萩原製作所のアームチェア「Converge Type-F」。明るい原色系の発色のよさは「ウルトラスエード®」の得意とするところ。下はリーン・ロゼのソファ「ロゼトーゴ」。上質な素材感に加え耐摩耗性にも優れているので、ハイエンドなソファの張り地や高級車の内装材としても多数採用されている。
クリエイターの力で加速するウルトラスエード®の応用力 その1
「TALKING Ultrasuede®」は「ウルトラスエード®」とさまざまな分野で活躍するクリエイターが対話をしながら、それぞれの新しい可能性を探っていくプロジェクト。なかでも個性際立つプロジェクトを紹介しよう。
<写真左上>NIB WORKSPACE by MIDORI.so
東京都渋谷区の実験型コワーキングスペースに設置された、テレホンブースに「ウルトラスエード®」を採用。名古屋工業大学とライフルが関わったこのブースは、繭に包まれているようなリラックス感が得られる、と評判も上々。
<写真右上>WORK ON/ON SHOES
デザイナーの名倉誠人が手がけるブランド、N.G.R.が開発に携わったオン/オフ兼用シューズ。外履きに求められる上質さと内履きに期待されるリラックス感を併せ持つマテリアルとして、「ウルトラスエード®」が選定された。
<写真下>Vintage Conversion EV
オンライン・モーター・マガジン『ドライブスルー』のディレクター、神保匠吾のかつての愛車BMW(E21)がEVへコンバート。この一連のプロジェクトに伴い、インテリアはヴィンテージの質感に近い「ウルトラスエード®」が張られた。
クリエイターの力で加速するウルトラスエード®の応用力 その2
<写真上>Village Hinohara
人口約2000人という東京都西多摩郡檜原村の山間地にプランされた、テレワークやワーケーションが可能な滞在型交流拠点「ヴィレッジ ヒノハラ」。壁面に「ウルトラスエード®」を使用することで、上質かつ温かな印象の空間が誕生した。
<写真左下>Takigahara Farm
石川県小松市の築100年の古民家が、都市再生プロジェクト「Rプロジェクト」の主導によりホステルへと改装。蔵の階段部分の壁面には、“文化的でサステナブルな素材”として選択された、柔らかな質感の「ウルトラスエード®」が張られた。
<写真右下>TOSHIKI
八木沢俊樹が手がけるバッグブランド、TOSHIKI。同ブランドが展開する「エレファント」シリーズでは「ウルトラスエード®」をメインの素材として採用。軽さ、上質さ、豊富なカラーリングを生かしたデザインが好評を博している。
お問い合わせ先/東レ ウルトラスエード事業部
Tel.03-3245-5401
公式サイト
Photos:SHUHEI SHINE(ORGATEC)
Text:SHIYO YAMASHITA