サイエンス

「後悔への恐怖」を乗り越えて人生の新しい一歩を踏み出す方法とは?


後悔をするということは、人間が過去の失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないために脳が獲得した重要な学習プロセスです。しかし、後悔することを恐れるあまり、時に非合理的な判断をしてしまったり、判断を先延ばしにしてずるずると現状維持を続けてしまったりします。そんな「後悔への恐怖」に打ち勝つにはどうすればいいのか、ランカスター大学で経済学を教えるEyal Winter教授はScienceAlertへの寄稿の中で、行動経済学の観点から次のように分析しています。

Fear of Regret May Be Holding You Back More Than You Think. Here's How to Overcome It
https://www.sciencealert.com/fear-of-regret-may-be-holding-you-back-more-than-you-think-here-s-how-to-overcome-it

◆後悔への恐怖にとらわれると正常な判断ができなくなる
後悔への恐怖に特に影響を受けやすいのが投資と人間関係です。後悔がまねく誤った判断として最も有名なのが、投資家が下落した投資対象を処分することに消極的になる心理効果「ディスポジション効果」です。例えば、自分が保有している株式の銘柄が下落をはじめたとき、統計的にはその後も下落し続けることが多いにもかかわらず、投資家はすぐ値上がりするだろうと考えて手放したがりません。なぜなら、下落した株を売却して損失を出すと、その投資が失敗だったということと向き合わなければならなくなるからです。


人間関係では、「埋没費用バイアス」がはたらくことが知られています。「コンコルド効果」としても有名なこの心理効果により、人々は多大な労力を費やしたプロジェクトが失敗に終わることに気がついたとしても、そのことから目をそらしてプロジェクトを続行してしまいがちになります。この傾向はしばしば恋愛関係にも見られ、ふたりの関係から情熱や愛が失われて悩みの種になってしまった後も、その関係を清算した時の後悔や不便さから逃れるために、関係を断ち切れないということがよくあります。このように、後悔への恐怖に支配されると、たとえそれが非合理的な判断であったとしても、現状維持を選択するようになってしまうのです。

◆後悔の科学
脳に関する最近の研究により、人が後悔を覚えるプロセスには、脳の中で記憶をつかさどるとされる海馬が関与していることが分かりました。失敗した時に脳が感じる「痛み」が後悔という感情を引き起こし、同じ失敗を繰り返さないように学習させるのです。しかし、この感情はしばしば積極的に現状を変えるという判断を妨げて、事態をより深刻にしてしまいます。また、研究者たちは神経症の傾向が強い人ほど、後悔を強く感じることも突き止めました。このことは、怒り・恐れ・孤独といった精神状態と後悔の念との結びつきが深いことを示しています。さらに、後悔は利益よりも損失を過大に評価してしまう心理効果である「損失回避」とも密接な関係にあります。


◆後悔への恐怖を乗り越えるためには
後悔への恐怖を乗り越える最初のステップは、実際に後悔がわたしたちの判断に影響を与えていることを実感することです。脳がわたしたちに非合理的な判断をさせることを知っていれば、だまされずに済むかも知れません。もし人生の目標に向けて足を踏み出せずにいることに気がついたら、自分が後悔への恐怖を感じているのか自問してみてください。そして、実際に恐怖を感じているのであれば、「変化にはリスクが伴うが、何もしないこともまたリスクである」ということを思い起こしてください。

また、誰かのアドバイスを受けるのも大切です。新しい人間関係の構築に踏み出したり人間関係を断ち切ったりする際に、家族や親しい友達のアドバイスがもらえれば、第三者的な意見が得られるだけでなく後悔も誰かと分かち合うことができます。決断を誰かと共有できれば、もしそれが間違っていても一人で抱え込まずに済むので、後悔への恐怖はずっと軽くなります。重要なのは、一時的な苦しみでしかない後悔にとらわれないことです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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