What's Ingress ?

Ingressの影の主役が表舞台に--村井社長のナイアンティック日本法人戦略 - (page 2)

別井貴志 (編集部) 井指啓吾 (編集部)2015年12月09日 08時00分

村井氏:GoogleにいながらIngressを客観的に見ていた時に、うまくいったところは、コミュニティとの連携だと思いました。“人が見えるサービス”は、ゲームをはじめ他のアプリケーションでも、なかなか無いんですよね。

 その中で、まだムーブメントとして小さな時から、川島(優志氏)や須賀(健人氏)が、Ingressのエージェントの皆さんと一緒にゲームを作っていけたというのが、このムーブメントを長いあいだ維持できている重要な要素の一つだと思います。

 ユーザーはこれからますます増えていくと思いますし、さらにはPokémon GOなども出てきますので、次の新しい使い方、新しい世代の人たちの利用方法が見つかるのではないかと考えています。

ナイアンティックの代表取締役社長に就任した村井説人氏

--ユーザー数は公開されていませんが、率直に言って、まだ世間での認知度は微妙なところだと思います。今後の取り組みの中での一番最初の目標、ブレークスルーポイントは何でしょうか。

村井氏:認知度を上げるというよりも、ユーザー数を増やしていくことが大切だと思っています。

 特定のターゲット層の方に使っていただきたい、という考えはありません。すでにIngressは、多くの人たちがこの世界観に共感して使っていただけるプラットフォームになっていると考えています。これは川島とも話したのですが、学生やビジネスマンだけでなく、ご年配の方たちにも、ぜひ使っていただきたいです。

 ジョンの思いである「歩いて冒険をすること(アドベンチャーズオンフット)」――冒険に出るのは、老若男女のすべての方にできることです。歩き始めた結果、健康になったり、楽しい気持ちになったりします。Ingressはご年配の方たちでも使えるツールです。1歩でも2歩でも前に歩き始めるきっかけがIngressだととてもうれしいです。

 Ingressのユーザーを飽きさせない仕組みとして、「公式小説」などを発表しています。発売1週間で増刷が決まるくらいの人気ぶりです。

 IngressにはきっちりとしたSFのストーリーがあります。それを知ることによって、Ingressの世界観が明確にわかり、Ingressをプレイするのがさらに楽しくなると思います。

 おそらく日本の多くのユーザーは、まだIngressのバックストーリーをよく知りません。なぜかというと、それが英語だからと言う声をよく聞きます。言葉の壁はとても大きいと思っています。今後は、日本の皆さまにより適した形で情報を提供し、ストーリーをしっかり伝えられるようにしていきたいと思っています。公式小説はその始まりだと思ってください。今後、こういった取り組みを強めていきます。

--10月にはアプリ内課金を始めましたね。

村井氏:これから課金でどんどんお金を稼いでいきたいわけではありません。Ingressは(サーバやネットワークの維持や投資などで)ものすごくコストのかかるサービスです。Ingressを継続して提供しようとしても、続ければ続けるほど赤字だと、事業として健康的だとは言えません。

 Ingressを健全に、そして永久的に提供できるような仕掛けを、我々は考え続けなければいけません。そこに対する何かしらの解を出そうとした時に、皆さまがIngressをより楽しんだり、より面白いコミュニケーションができたりするような観点でお使いできるような内容であれば、我々はアプリ内課金を否定しません。もちろん、Ingressの世界観を壊さないことが前提ですが。

 アプリ内課金をすることには多くの議論がありましたが、そこに踏み込むことに対しては、それほどハードルは高くありませんでした。

--12月12日に沖縄で開くイベント「Abaddon」では、(基本的にイベント参加は無料だが)アフターパーティへの優先入場が含まれた有料グッズを販売します。これも同じ方針によるものですね。

村井氏:そうです。継続的にイベントを成功させていくためには、より健全な形に変えていく必要があります。単純にビジネスとしてお金を稼ぐというよりは、健全なスタイルをどう作っていくのかが、とても重要だと思っています。

 日本法人を作って、ビジネスの観点で全体を俯瞰して見るポジションを設けたのは、事業の健全なスタイルを作るためなのです。

--将来的な収益源としては、スポンサーフィーと、今後始めるであろうプラットフォーム課金が2大セグメントになるのでしょうか。

村井氏:いろいろあると思っていて、その可能性を常に模索しています。まずは一歩一歩、目の前のものをクリアしていくのが、我々がすべきことです。

 我々は、使い捨て感のあるアプリはできるだけ出さずに、継続して使っていただけるものを提供していきます。

--レベル16のエージェントから、レベルの上限を引き上げてほしいとの声を聞きます。川島さんからは、レベルを引き上げるのではなく、ポータルの審査を任せる案などを検討しているとお聞きしました。

村井氏:仮にレベルの上限を引き上げたとしても、あっという間にレベル30くらいに到達する人がいると思います。すると、またさらに上限を引き上げることになる。それを繰り返すよりも、ジョンが作った世界観の中で「健康になる」「知らない場所に行ってみる」「海外に行っていろいろなポータルキーを取ってくる」など、いろいろな使い方を見つけていただくことを期待しています。

村井氏、アジア統括マーケティングマネージャーの須賀健人氏
村井氏、アジア統括マーケティングマネージャーの須賀健人氏

--アジア統括マーケティングマネージャーの須賀さんは、社長である村井さんをどうやって支えていきますか。

村井氏:やっぱり筋肉じゃないですか(笑)。

須賀氏:(笑)とりあえず、しっかりとしたブランディングに注力したいと思っています。ナイアンティックのよいところは、会社としては謎かもしれませんが、メンバーそれぞれがユーザーと直接対話していることだと思います。

 おのおのがコミュニティに対して真摯(しんし)に向き合って、“人の見えるマーケティング”でユーザーと近い距離で動いていきたいです。

--Ingressに続くタイトル「Endgame:Proving Ground」の開発状況は。

須賀氏:いろいろな事情がありまして、延期です。

--「Pokémon GO」の開発状況は。

村井氏:順調に進んでいます。2016年にローンチする予定ですので、それに向けて、鋭意努力しています。ご期待ください。

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