ジャニー氏の性加害報道、「ジャニオタの罪」とは? 「物語として考えてた」加害者意識に向き合う
ジャニーズ事務所が大きく揺れている。故ジャニー喜多川前社長の性加害報道だ。日本のみならず世界からその対応が注視され、事務所批判が矢のように降り注ぐ中、一方でジャニオタからの声が聞こえてこない。
熱心にジャニーズ事務所のアイドルを応援する人を指す「ジャニオタ」。大切なアイドルが所属するジャニーズ事務所、そして敬愛してきたジャニー前社長の報道を前に、ジャニオタはなぜ何も語らないのか。ネット上では、こうしたジャニオタについて「ジャニー氏と同罪」とする意見もある。そこで、サイゾーウーマン編集部員をはじめとしたジャニオタが、私たちジャニオタの罪について考えた。
【座談会メンバー】
A:ジャニーズファンのサイゾーウーマン編集部員、元嵐担。
B:ジャニーズファンのマスコミ関係者、元SMAP担
C:ジャニーズファンの芸能雑誌編集者、スノ担
D:元ジャニーズファンのマスコミ関係者。現在は他事務所のボーイズグループのファン
ジャニオタが抱える「加害者意識」
A 今回のテーマ「ジャニーさんの性加害報道をめぐるジャニオタの罪とは?」というのを聞いたとき、率直にどう思いましたか? 私個人は、そもそも「考えたくない」の思考停止状態なんです。報道内容もテレビで取り上げられることしか把握していない。週刊誌もSNSからも距離を取っています。でも、その姿勢を続けているのも苦しい。ちゃんと向き合って考えないといけないと思って、声をかけさせてもらいました。
B とりあえず、事務所を擁護する側と告発者側のどちらに立つかという点でいうと、私は擁護する気はあまりないというか。告発者もまるっきり信じているわけではないですけど、どちらかといえば彼らのほうに寄り添いたいタイプです。だから、事務所の擁護はできないかな、とテーマを聞いたときに思いました。タレント本人には罪はないというか、責めたくはないけども、あまりジャニーズのエンタメが楽しめなくなってきているなという状況もあります。
C 私もAさんと同じように、あまり考えないように避けていた部分はあります。今自分がジャニーズJr.も応援しているので、ちびっこJr.を見る機会も増えていて、私自身が性加害をしているわけではないですが、少年性をエンタメとして消費している自覚があるからか、ちょっとした加害者意識みたいなものを感じていて……。
今回に関してはシャットアウトしちゃっている部分がありますね。もちろんジャニーさんがやってきたことは間違いなくいけないことですが、ジャニーさんが育てたタレントたちに夢をもらったことも事実なので、複雑です。
D 元ジャニオタの立場から言うと、この問題で一番ショックだったのが、ファンの反応で。事務所を擁護する人がたくさんいるというのが、すごくショックだったんです。自分の担当がいる事務所のことを悪く言いたくないのはすごくわかるんですけど、告発されていることは明らかに犯罪じゃないですか。なのに、「ジャニーさんのつくってきたものは素晴らしいから」とか、そういう理由で擁護しちゃってる。この件について、ファンから批判の声が上がらない状況が、個人的には一番マズいと感じています。
A 私自身、Cさんと同じで加害者意識があるんです。それはジャニオタとして、あとメディアの人間としての2つの加害者意識。サイゾーウーマンは見てわかるとおり、ジャニーさんの暴露本を取り上げて、それでPVを稼いでもきた。ってことは、もう明らかにジャニーさんがそういうことやってたということは、私個人でもわかっていたわけで。でも、「V6から下の子たちはあるかな?」「嵐から下はそういうことはないだろう」みたいな、勝手に「自担はセーフ」って思ってた。
あと、アイドルの「光と影」って言葉を使いがちで。“アイドルという存在は光が強いほど影もまた濃い”みたいなフレーズ。その影というのが、ジャニーさんとの関係だけを意図して書いてたわけではないけれども、「そういうのも織り込み済みの世界だよね」って思ってはいた。やっぱり自分の中で、それとセットでジャニーズを捉えていたんですよね。なのに、何もしてこなかった。
ジャニオタの罪とは?
A 現在ネット上では、ジャニオタも同罪で加害者という声も上がっています。どう受け止めていますか?
C 私自身は、まあそうだよなって思っています。たとえば、ジャニーズにおける定番演出のひとつで、2019年の『ジャニーズJr.8・8祭り ~東京ドームから始まる~』でもあった“水着Jr.”の演出も、やんややんや言いながら微笑ましく見ていた人は多いはず。また、舞台『少年たち』でおなじみの“桶ダンス”シーンは、露骨な性的表現がある一方で、見せ場のひとつになっていた部分は大きく、ファンにとっても“双眼鏡の使いどころ”のようになっていましたよね。
このように、性的搾取をしているということに無自覚なのが、ジャニオタの一番良くない部分だなって、今回の問題であらためて気づかされました。それに、ジャニーさんの性加害について知りながらも、ジャニオタはこれまで見て見ぬふりをしてきたわけですから、同罪と見られても仕方がないと思います。
D 私もジャニーさんの“オキニ”という存在が、ただのお気に入りではないかもしれない、みたいなことは頭の片隅にずっとあって。だからやっぱり、今表沙汰になっている話は、全部知っていたんですよね。それなのに、さっきAさんも言っていたように、アイドルの「光と影」をアイドルの「物語」として考えちゃっていて。今までの自分のジャニーズへの接し方を振り返ると、人をモノ化していたし、本当に最悪なことをしたなと、反省しましたね。
B SMAPファンからすると、お金を払うことによってジャニーズ事務所を支えてきちゃっていたわけじゃないですか。わりともう、ジャニオタ卒業しているSMAPファンは多いんですけど、自分たちが払ってきたお金によってジャニーズが大きくなっていって、でもその裏では性加害が行われていたと明るみになり、責任を感じている人も多い印象があるんです。
自分も、中学校とかそれくらいの頃にはやっぱり暴露本という存在を知っていましたし、ジャニーさんにこういうウワサがあるけど、ウソであってほしい、と思いながらも、あまり目を向けないできたんで、今になってちょっと苦しいなと思います。自分ももちろん、小学生くらいの頃からグッズを買ったりお金を出していた。そしてそのお金で事務所が大きくなっていったわけだから……。自分も加害者と言われたらそうなのかもしれないしと思う。
ジャニオタは何ができた? 今後何ができる?
B でも、その被害に気付けなかったことについて「お前も責任がある」と言われても、ちょっと困っちゃうという気持ちもあります。タレント側がSOSといった類いのものを出してたわけじゃないから。いろいろな感情が渦巻いて、なかなか答えを出すのが難しいです。
A ここにいる全員が、ジャニーさんの行為は知識として持っていたんですよね。それを知っていたオタクが、こうなる前に何ができたんだろう? と考えたりもしたんです。「タレントからSOSがなかった」からしょうがなかった、とも思うけど、ジャニーさんにグルーミングされていたからSOSを出せるわけもない、という意見も目に入る。
でも、ジャニオタが見てきたタレントの姿には、たしかにジャニーさんを慕っている姿もあったわけで、それを「グルーミング」のひとことで加害者/被害者の構図に片付けられちゃうと、もう混乱してしまう。どつよ(堂本剛)さんとジャニーさんとの距離感とかも、どう捉えていいのかわからなくなってきちゃう。
B そうですよね。擁護するジャニオタはそこを言ってますよね。本当にそんなことが、ジャニーさんが本当にそういうひどいことをしてたんだとしたら、KinKi Kidsがジャニーさんの歌(KANZAI BOYA)を作ったりとか、そんなことするはずない! みたいな。ジャニーさんが亡くなったときに、どつよさんがほっぺにキスしたというエピソードがありますけど、性的虐待を受けていたんだとしたら、そんなことするはずないとか。そうした話を盾に性的虐待はなかったと主張している。
その主張は理解できるんです。たしかにタレントがジャニーさんを愛すべき人みたいな感じで、ほっこりエピソードとかを言っていたのは事実だし。そこを信じたい自分もまだいるんですけど。信じたいけど、でも、どう考えても虐待はあったよねって。
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