「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。

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坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。

親近感

服部 剛

今日の心の糧イメージ

 ダウン症をもつ息子の周は現在、特別支援学校の5年生です。毎朝7時頃に目を覚ますと、我が家はばたばたと忙しくなります。

 周は身の回りのことを自分ではできません。私と妻は役割を分担して周のトイレと食事の介助をしてからスクールバスの停留所まで手をつないで徒歩で周を連れていきます。最近は食の好みが変わったのか、なかなか朝ごはんを食べ終わらない時があり、登校までの時間がぎりぎりになると周を抱っこしてバス停まで走り、「お待たせしてスミマセン!」と言いながら朗らかな笑顔で待っていてくれる運転手さんに、周を託します。

 バス停には同じ学校へ通う児童が数名いますが、日によってバスに乗るのを嫌がり、「イヤダイヤダ!」とぐずる男の子をパパが必死になって抱えてバスにようやく乗せる、ということがあります。ママが格闘する日には私もささやかながら協力し、バスに乗るのをためらう子に「大丈夫だよ」とゆっくりと語りかけると、バスのステップに足を進めることもあります。子どもたちを乗せて無事にバスが走り去った後、そのママはほっ...とひと息ついてから「ありがとうございました」と伝えてくれます。

 最近、印象に残った出来事はバスが発車して親が安堵している時に、私がそのパパへ「息子がだんだん大きくなり、妻の体力が追いつかず悩ましいです。現実と向き合い、子育ての工夫を考えたいです」と打ち明けると、パパはにこやかに私を見て、「そうですか、お互いにいろいろありますね」と応じてくれました。その時、多くを語り合わなくとも〈共に日々を歩みましょう〉という近しい思いを確認し合えた気持ちになり、そのパパに親しみが湧き、私の心はとても励まされたのでした。