ニジェール、クーデター主導の将軍が国家元首を宣言
兵士らがクーデターを宣言した西アフリカのニジェールで28日、アブドゥラフマン・チアニ将軍が新たな指導者になったと発表した。
オマル・チアニの名でも知られるチアニ将軍は、26日にこのクーデターを起こした。チアニ将軍の率いる大統領警護隊がモハメド・バズム大統領を拘束した。
バズム氏は、ニジェールが1960年にフランスから独立して以来、初めて選挙で選ばれた大統領だった。
現在も健康状態は良好とみられているが、なお警護隊に拘束されている様子。
バズム氏は、西アフリカにおけるイスラム武装勢力との戦いで、欧米の重要な協力者となっている。
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62歳のチアニ将軍は、2011年から大統領警護隊を率いている。2018年に、マハマドゥ・イスフ前大統領によって将軍に任ぜられた。
2015年にも、前大統領に対するクーデター未遂に関わっていたとされるが、その後の法廷では否定している。
チアニ将軍はテレビ演説で、治安悪化や経済低迷、汚職といった国内問題を背景にクーデターを起こし、軍事政権を作ったと説明した。
また、ニジェールの国際的な同盟関係にも言及し、自分の政権は国際的な協約や人権を尊重すると述べた。
一方で、反対勢力については厳しく非難し、追放された政府関係者が逃げ込んだ諸外国の大使館で、新政権に対する陰謀を企てていると糾弾(きゅうだん)した。
新政権を打倒しようとすれば流血の事態につながるとチアニ将軍側はくぎを刺しているものの、現時点では流血沙汰は避けられている。
首都ニアメーでは、市場や店舗も営業しており、生活はほぼ元通りになっている。一方で、公務員らは自宅に戻るよう指示された。
ニジェール国民は、クーデターに対して複雑な感情を抱いている。国内の治安はクーデターを正当化するほど深刻ではないと言う人もいるが、クーデターを支持する人もいる。
西アフリカと西側諸国、ロシアの関係
ニジェールの元宗主国フランスは、クーデターの指導者は誰だろうと承認せず、ニジェールの国家元首と認めるのはバズム氏のみだと述べた。
フランス外務省は声明で、「国際社会は、憲法秩序と民主的に選出された文民政権の即時復権を求めており、我々も同様に最も強い言葉でその要求を繰り返す」とした。
アフリカ連合(AU)や西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、欧州連合(EU)、国連も、クーデターを非難している。
一方、ロシアの雇い兵組織「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏はクーデターを称賛し、勝利だと述べたと伝えられている。
メッセージアプリ「テレグラム」のワグネル関連チャンネルは、プリゴジン氏が「ニジェールで起きたことは、ニジェール国民の植民地支配者との闘いにほかならない」と述べたと報じた。
BBCは、このコメントの内容を検証・確認できていない。
ワグネルは、アフリカの中央アフリカ共和国やマリに数千人の戦闘員を送り込んでいるとされている。現地での事業で利益を得ているほか、ロシアの外交的・経済的関係の強化にも一役買っているとみられる。
ワグネル戦闘員は複数のアフリカ諸国で、さまざまな人権侵害を起こしていると非難されている。
西アフリカでは近年、マリやギニア、ブルキナファソなどで軍事クーデターが相次いでいる。
今回のニジェールでのクーデターはまた、ECOWASにとっても大きな打撃だ。ちょうど2週間前には、ECOQASの議長を務めるナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領が、西アフリカにおけるテロと新たなクーデターのパターンが、憂慮すべきレベルに達していると警告。緊急かつ協調的な行動が必要だと述べた。
西側諸国にとっては、この国の新しい指導者がどの国に協調するのかが、懸念材料になっている。ブルキナファソとマリはクーデター以来、ロシアに接近している。
ニジェールはサハラ砂漠の端に位置し、乾燥地帯が広がる。世界最貧国の1つで、1960年にフランスからの独立して以来、クーデターが4度起きている。クーデター未遂も相次いでいる。