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夏休みの宿題「読書感想文」今もなくならない真因 根底にある「読書を通じて善き価値観を」の思想

東洋経済オンライン / 2023年7月30日 7時0分

そう、読書とは本来、本というメディアを通して、そこにつづられている知識や物語といった情報を得る行為。しかし読書感想文コンクールは頑なに「読書に伴う感動は(単に情報を得るだけでなく)豊かな人間性を育むためにある」という思想を抱き続けています。

読書は「価値観」を身につけるためのものという思想

実は、この「読書は豊かな人間性を育むためのもの」という思想は、文部科学省の読書教育方針にも合致しているところです。

たとえば文部科学省のWEBサイトを見てみましょう。ここで掲載された「国語力を身に付けるための読書活動の在り方」もまた、この「読書=豊かな人間性を育むためのもの」という思想をあらわにしているのです。

国語力との関係でも、既に述べたように、読書は、国語力を構成している「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」「国語の知識等」のいずれにもかかわり、これらの力を育てる上で中核となるものである。特に、すべての活動の基盤ともなる「教養・価値観・感性等」を生涯を通じて身に付けていくために極めて重要なものである。

(文部科学省WEBサイト「第2 国語力を身に付けるための読書活動の在り方」ページより引用)

そう、読書は「教養、価値観、感性」を身につけるためのもの。教養=知識と感性=感受性はともかくとして、問題は「価値観」です。

読書は価値観を身につけるためのもの──それはつまり、読書を通して、自分はどんな価値観の人間であるのか、どういう価値観をもった人間になりたいのか、を考えられるということです。

もちろん、私は読書にそのような側面があることを否定しません。たしかに私も読書を通して、自分の好きな作家の価値観が、そのまま自分の価値観になっている、というような経験をしてきました。とくに10代のうちの読書は、そのまま自分の価値観に影響を与えやすい。好きな作家の言っていることを、そのまままねして語りたくなる、というような側面もあるでしょう。

現在の日本の国語教育は「道徳」を教える科目

しかし一方で、ここで示されている「価値観」は明らかに「善き価値観」のことであるのも、たしかでしょう。善き価値観とは、社会的倫理規範をちゃんと理解していて、他人を思いやれる道徳的な人間になるということ。つまり読書によって、道徳的な、この社会で善とされる価値観を学んでほしい。そして道徳的な価値観をもった人間になってほしい。──そんな思想が透けて見えることも確かなのです。

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