自分で思う自分……、誰にでも「自分はこんな人間だ」とイメージする自分がいるはずだ。それが他者の抱く印象と一致するかどうかは別として、自分は優しいだとか明るいだとか、あるいはイケメンだとか美人だとか、"思うこと"は自由である。かく言う俺にも自分で思う自分がいる。そうだな……、俺は優しくて正義感があって涙もろくて情に熱い、そんな人間のはず。あっ、いや……、勝手にそう思っているだけだけどさ。
だけど、ある日そんな自分のイメージが崩壊した。中身は変わらないのだが、鏡に映った自分が自分じゃない。
清掃員から障がい者の就労支援をおこなうNPO法人に転身してもうすぐ一年。ここ数ヵ月は事務仕事がメインになり、勤務時間の大半をデスクで過ごすことも少なくない。毎日、ホウキとチリトリを手にして駅を隅から隅まで歩き回り、合わせて何百段もの階段を上り下りしていた頃とはカロリー消費がまるで違う。いや、大きく変わったのは消費量よりも摂取量だろう。パソコンのキーボードを叩きながら飴ちゃんを舐める舐める、煎餅をかじるかじる。俺が俺ではなくなってしまうのは必然だった。
「こんなの俺じゃない……」
生き方であれ、考え方であれ、体型であれ、自分を変える最終決定を下せるのは自分でしかない。俺はカッコイイお父さんでいたいし、妻をときめかせることの出来る夫でありたい。だから、痩せようと決心した。とは言え、残業続きでジムへ通う時間などない。空腹に耐える根性もない。ならば、どうするか? 導き出した三つの方法は、お菓子を断つこと、通勤時に歩く距離を延ばすこと、夕食を置き換えること。どれも難しいことではない。お菓子は可能な限り視界から排除し、通勤時は一つ前の駅で乗り降りをするようにした。そして夕食は"一ヵ月間スイカ生活"。
俺はスイカを愛している。家族の次に好きなものは何かと尋ねられたら、迷わずにスイカだと答えられる。そんな"キミ"となら頑張れるはず。栄養がどうとかそういう小言はいらない。
かくして一ヵ月後、80㎏あった体重は71㎏まで減っていた。ありがとうスイカ!
文:清掃氏 絵:ekakie
次回は婆さん登場!
温かなタッチのイラストが心をほっこりとさせるekakieさんのブログはこちら。
毎日、体重計に乗っています。一喜一憂するのではなく、少し増えているなとか思いのほか減っているなとか、乗ることそのものが意識を高め、健康管理に繋がっていくのだと思っています。何ヵ月も乗らなかった結果が、自分で思う自分でなくなってしまった原因だと猛省……。