学校のテストや人生大一番の入試、それに決断が損得に直結するビジネスシーンなど、勉強でも仕事でも、パッと頭で計算して道筋をつける力はそれだけで大きな武器になります。特に日々多くの数字が飛び交う情報社会の現代では、この「計算する力」は非常に重要な能力と言えるでしょう。
しかし、そんな能力、いったいどうやったら身につくのでしょうか。中には「自分の子供を計算で悩ませたくない。どうやって育てればいいの?」などと、悩まれている方もいるでしょう。
学習塾代表、大学講師として精力的に活動し、計算に関する様々な書籍も執筆している鍵本聡さんによると、速く計算を行うコツの一つは、難しい計算を簡単な式に変形する「計算視力」にあるということです。一体どういうことでしょうか。今回は日常生活で出てくると困ってしまう「平方」の計算を例に見てみましょう。
(本稿は、ブルーバックス『計算力を強くする 完全版』の内容を再構成してお送りします。)
難しい平方の計算を見つけたら…!
日常生活でも,ある数の平方を計算するシーンにしばしば出くわします。例えば,正方形の土地の面積を計算したり,別の計算をしていて式を変形したときに,ある数の平方を計算しないといけない,ということがよくあります。そんな時,次のような方法も知っていると便利です。まずは例題を見てみましょう。
こんな平方計算がスラッとできたらいいですね。
世の中の多くの計算本では,平方計算に関してこんな計算方法が載っています。それは中学校で習う展開公式を用いるものです。すなわち,
19×19=(20-1)×(20-1)
=20²-2×20×1+1²
= 400-40+1
=361
というやり方です。
この方式も決して悪いやり方ではなく,初めて聞いたときには感動モノです。しかし,実際に日常生活で平方計算をするときにこの方式を用いると,頭がこんがらがったり,場合によっては計算間違いが起こりやすくなります。
そこで,とっておきの「スライド方式」をみなさんに伝授しようと思います(これも筆者の造語ですが)。